3



暑い暑いと喚く私をようやく解放してくれた氷は、布団を剥いで座らせた私を足で挟み込むようにして抱きしめる。


さっきよりは暑くないけど……それでも氷自身が熱い。




「おーはーよ」


「……おはよ。ちょっと首嗅がないで」


「起きたら和香がいるなんてちょー幸せ」


「……そうだ、いつベッドに上がって来たの?床に寝てたでしょ?」




そもそも、床にいるまま疲れてスヤスヤと寝てしまった氷を、私は布団だけ被せて放置していたはずだ。


ベッドに上がって来たのなんて気付きもしなかった。


床に放置されている羽毛布団を眺めてから、顔だけ氷に向ける。




「何時だったか……なんかすげー暑くて目が覚めて、俺羽毛布団にくるまってて」


「うん、床冷たいかと思って」


「体痛くて」


「床だしね」


「起き上がったらおいしそうな和香がいて」


「ちょっと待て?」




おいしそうってなんだ?


おいしくないぞ?


私は肘で氷の横腹に肘鉄砲を食わせると、『ヴッ……』とうめき声が返って来た。




「いや、可愛く寝てる和香さんがいたから、俺もそっち行きたいなぁ、と」


「抱き枕しに?」


「いや……ただ横で寝るつもりが、ちょっとくっつきたくなって、和香が起きないからちょっとギュッてしたりして……それでも起きないけど俺がちょっと危なくなってきたから布団でワンクッション入れたら…………抱き枕にちょうど良くなっちゃって」




結局抱き枕要員か私は。



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