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体を離そうとすると、崩れるように私に雪崩なだれかかって来た佐藤氷という私の彼氏は、どうやらあのまま安心したように眠りに付いてしまったようで、私は身動きが取れなくなる。




「……重い」




そうね、さっき欠伸してたもんねアンタ。


それにしても腕キツく締めすぎなんだけど、本当に寝てるの?


すやすやと眠るその瞼は開きそうもない。




しばらくそのまま彼が寝返りをうつまで、私は彼の下敷きだか抱き枕にだかなっていた。






寝返りにより解放された私は、すぐさま布団を引っ張り彼にかけるけれど、それだと床が寒いんじゃないかやら、私の布団がないやらの問題が発生する。


この季節にもふもふの羽毛布団でこの男を簀巻すまきに……さすがに怒られるだろうか?


夏の手前といっても、最近夜も寝苦しくなってきた程に気温が高くなってきている。


そろそろエアコンの出番かもしれない。




この時、私は氷を簀巻きにしたい欲がむくむくと湧いてきて、羽毛布団にくるめてなにかヒモになるもので縛ってしまおうかと本気で一瞬考えたけれど。


残念ながらヒモらしきものが電気コードくらいしか見当たらなかったので諦めたのだった。




氷に羽毛布団をかけ、エアコンを付け、私は夏布団をかけていつものようにベッドで寝る。


暑かったらテキトーに調節してほしい、床で寝たのは氷なんだから私はしらん。






おやすみくらい、してから寝なさいよ。




「ばぁか」




小さな声が部屋に虚しく、こだました。

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