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それでもまだ、泣いたのだろうか。


こんなに明るく振舞っているのに……心の中はどれだけ乱れているのかなんて、私には想像も出来なくて。




……はぁ、とひとつため息をつく。


元より、この部屋へ通したのは私だし、彼氏を拒絶するような女でもないつもりだ。




こんなでもきっと、佐藤は私のことを頼ってくれてるのだ。


ぐちゃぐちゃに掻き乱された心のままこの夜をどう過ごそうとした時、私が選択肢の中に、きっといたのだ。




「……何があったか、教えてくれるんでしょうね?」


「もっちー、和香にはぜぇんぶ話すよ?」


「アンタ今ギャルじゃないってこと忘れてない?」


「こぉじゃないとぉ……崩れちゃいそうなの」




口の端をキュッと一瞬結び、それからまたニカッと笑う佐藤に、胸がギュッと締め付けられ、目が潤んでくる。


もう我慢しなくても、いいのに。


私しかここにはいないんだから、いいのに……。




それでも強がりな佐藤はきっと、私が甘やかさないとその姿勢を崩せないんだろう。


佐藤の座る隣に膝をついて、佐藤の髪をわしゃわしゃと撫でた。




「わっ、ごーかいなんだけどぉ和香、ぐちゃぐちゃになっちゃぁう」


「ひょう」


「……っ」




『佐藤』のままだと、いつまでも私の心はギャルの『佐藤』への態度になってしまう。


その言い慣れた彼女と、『佐藤氷』は別もの……別のキャラになり切っているのだから。




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