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「アンタ……疲れてんじゃないの」
妹との再会で心身共に疲労がすごいだろうに、なぜわざわざ私の部屋にまで来たのか、この男?
佐藤にそう聞くけれど、「てへぺろ☆」なんて言って流された。
なんだその顔は、男の姿なのになぜ違和感が仕事しない?
私が眉間をひそめた所で彼の態度は一切変わらなかった。
慣れたように部屋に入っていく佐藤からは、シャボンの香りが漂う。
一度家に帰って入浴してきたのか……なぜその後家に来ようと思ったのかは謎。
いつもより少しだけ大きなバッグを抱える佐藤が机の前に座り込んで欠伸をする。
そんな彼に、部屋の入り口の壁に背を預けて私は問う。
「そのデカい鞄は何?」
「とーめーて?」
「は?」
私はもう一度聞き返す。
「とーめーて」
「……泊めろ?」
「そー、お泊まり、だめ?」
きゅるんとした瞳を向けてくる佐藤、しかし残念ながらその姿は今や男なのだ。
そんなにかわいくおねだりされたところで、私が揺らぐとでも……。
揺らぐ、とでも…………。
その瞼の下は微かに赤く、目も少し充血していた。
化粧は落としたままですっぴんなのに、それでも微かに揺らぐ瞳のせいか、血色のいい頬のせいか、色気をだだ漏らせている、私の彼氏。
潤んでいる瞳に……私は頭を抱える。
泣いたんだろう。
たくさんたくさん、きっと泣いて、目も擦って赤くなって。
予想通りパンダになっていたのかもしれない。
それで綺麗にメイクも落としてきたのかもしれない。
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