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それを想像すると、ゾワリと背筋が凍る。
どれだけ怖いことだろうか、自分の命も一歩間違えれば消えていたかもしれないなんて状況で、もう家族は兄しかいない……なんて。
「それを聞いてさとちんもパニックになったってこと?」
「いや、蜜が起きてくれた事は、すごく安心した。でも……」
でも?
「蜜と会って話す――となると、急に怖く感じて来て……気付いたら和香に縋ってた」
――――そうだ、佐藤は自分のせいじゃないかと自分を責めて責めて、それでギャルをしていた。
蜜ちゃんが眠っている間ですらあれだけ自分を責めていたというのに。
その本人が、目が覚ましたとしたら……どれだけの恐怖が襲い掛かってくるかなんて、私には計り知れない。
けれど、ねぇ、私は言ったよ佐藤。
『助かる気のない人に手を貸すほど私は優しくない。佐藤の方から這い上がって来てよ』
私はいつでも、両手を広げて待っている。
あれは一時的な慰めの言葉なんかじゃないよ。
佐藤はさっき縋りついてくれたけど、そんな一時的なものなんかで足りるなんて思ってないから。
だから私は、佐藤の方を向いて両手を広げる。
理事長室での時のように、佐藤が飛び込んで来れるように。
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