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ふう、と長く息を吐いた佐藤が、氷枕を除け顔を上げて三人を見る。


だいぶ顔色は戻って来たようで、震えも小さくなっていた。




「みんな、ありがと。気遣わせちゃってごめん」


「こういう時は迷惑とか考えないでただ甘えとけ。ね、和香」


「うん、珍しい佐藤が見れて、なんか可愛かった。黙ってると可愛いね佐藤」


「それ喜んでいいのかちょっとわからないや」




ゆっくりと起き上がると、ぐっと首を後ろに反らして伸びる佐藤は、腕の付け根もぐるぐると回して「固まってんわー」なんて呟いている。


あんなにガチガチに筋肉が固まっていたんだから、凝りもしそうだ。




「で、話せそう?」


「うん、まぁ」




ぽきぽきと音を鳴らしながら首を左右に曲げている佐藤……まって、音鳴りすぎじゃない?折れてない大丈夫?


そのまま天井を見上げたまま、佐藤はポツリポツリと話し始めた。




「妹の目が覚めた……って言ったでしょう?意識も記憶もはっきりしてたみたいで、それは……よかったんだけど」


「けど?」


「事故の記憶も覚えてて、ちょっとパニックになっちゃってるらしくて。叔父さんが妹の所に向かってくれてるみたいなんだけど」




――そうか、蜜ちゃんはその事故の後にどうなったのか知らないから……。


目が覚めたら三年程経っていて、自分は機械に繋がれていて、事故当時一緒に車に乗っていた家族が――亡くなっていたなんて。


それを一気に知ることになったら?


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