after story 2
1
その体は、とても震えていた。
いつも堂々と人を振り回してきて、笑顔で人を引っ張っていくような、妹の為に女装でギャルをやっちゃうような、そんな私の彼氏が。
涙をこらえ、口に手を当てて、呼吸を乱して私の膝の上で
────彼の中で、一体何が起きているのか。
事情はわかっている、つもりだった。
妹の話は、理事長からも、佐藤自身からも聞いていた。
それなのに、私の想定を超えた反応を示す佐藤に、私は未だ、現実を受け止められていなかった。
「和香」
「…………え、あ……」
そんな私の意識を確認するようにじっと見て、緑は口を開く。
「とりあえず、佐藤のことさすってあげてて、話が聴けそうなら聴いて。必要なものがあるなら私と鞠で揃える」
「……うん」
「佐藤……とりあえず話は落ち着いてから聞くから。一旦そっちのソファーまで動ける?」
こくり、頷く佐藤。
緑の言葉に対して反応を示した佐藤に、私は酷く安心したようだった。
無意識のうちに凄く力んでいて、手に汗が滲んで、爪の先が肌に跡を残していた。
──怖い。
初めて見る佐藤の状態に、肝が冷えていた。
この場に緑と鞠がいてくれてよかったと思う。
これが、佐藤一人の時だったら……?
親はいない、唯一の家族である妹は病院で、理事長も家にいるかもわからない。
そもそも佐藤が誰かと暮らしているのかすら、わからない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます