第5話

ダンジョンの中ボスにとって、真に心休まる時間は存在しない。


ダンジョンの入口には冒険者の襲来をダンジョン内に知らせる係である連絡部隊が設置されており、ダンジョンに冒険者が来たことを確認すると、ダンジョン奥にいる我々に知らせが入るようになっている。


何時なんどき、この連絡部隊から冒険者襲来の連絡が入るやもしれぬと考えながら過ごす時間は、ダンジョンの外でノンストレスの中でノビノビと休めるようなものとは大きく異なる。


しかも、ダンジョンという性質上、オレたちに出来ることは『待つ』ことだけなのだ。


やって来た冒険者を倒すことがオレたちダンジョン勤務のモンスターの仕事。

自分たちから冒険者を襲うという仕事はまた別の部署のモンスターたちの仕事であって、オレたちがそれをすることは許されていない。


極端な話、どんなにダンジョンの近くを冒険者がうろついていたとしても、ダンジョンの中に一歩足を踏み入れない限りは絶対に手出しをしてはいけないのだ…。


このじれったさたるや。



――しかし冒険者が一歩でも足を踏み入れたのならば、全力で奴らのダンジョン攻略を阻止せねばならない。


「冒険者が来ました!!」


勢いよくオレの部屋に入ってきた連絡部隊のモンスターであるダークホークに対して、オレはゆっくりと立ち上がり、そして落ち着いた声で応じる。


「そうか、わかった。 では引き続き、奥まで行ってボスにまでしっかりと伝えて来るのだ」


「はい!!バチュリアスさま!」


――――――――――――――――――――

【ダークホーク】

手足に加えて自由に飛べる羽を持っている鳥系モンスター。

飛行能力はそこまで高くないが機動力はそこそこある。

ザコモンスター。

――――――――――――――――――――


いい返事とともに連絡部隊のソイツはドアを開けまた部屋の外へと飛び出して行った。




さて、こうなると中ボスであるオレもこうして自室にいるわけにはいかない。

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