第12話
必要なもの用意したからと言って瑠子はそのまままた祭壇のほうへと消えていった。
用意された部屋には麻で出来た上下の衣装と温かいお茶が椅子と机に置かれていた。
身支度を整え終え、瑠子が戻らぬ間波斗はずっと一つの事を考えていた
_拒色症_身体に出来た黒い染み_毒を猛毒で治す_
数々と提示されたキーワードが頭に浮かんで整理したかった。
波斗は瑠子との深い逢瀬を思い出し半ば自分自身の心を傷付ける
「おまたせ」と扉が開き水色のワンピースを着た瑠子がいた。
そして瑠子はテーブルの向かいに座りお茶を注いだ。
「一口も飲んでないの?」
考え事していた波斗は「あ、ああ…」とお茶を一口飲んだ。
頭を切り替えようとして瑠子の服装を見た。
「別に着替えなくてもさっきの白い衣装のままでも良かったのに。」
少しからかいと残念な思いで波斗は言葉を吐いた。
「自分は恥ずかしいと言って何それ…」
「ごめん、ごめん」
少し瑠子の眉間にしわがよったのでまずいと誤魔化した。
だけど心の中はさっきの考えで頭がいっぱいだったのでたまらずに瑠子に問いかけた
「あのさもし今後俺みたいな症状の人間が現れたら、君は_」
ふいに言葉が途切れ言いたくても言えない焦燥感にかられた
「させない」
瑠子の吐いた言葉は強く室内に響いた。
「こんな実験くだらない…させちゃいけないんだ」
それは瑠子自身がまるで自分の胸に言い聞かせる様に聞こえた。
瑠子は何かを知っている、でも全部は話してくれない。
それでも波斗はさっきまで己自身を傷付けていた心に静かな安心感が芽生えた。
お茶を入れたガラス口を持った瑠子の手はぷるぷると震えていてその手を波斗はそっと包んだ。
「俺以外のの誰かにあなたを奪われて欲しくない」
それは嫉妬心から芽生えた感情だとしても小さな決意があった。
何も言わなくていい、知らなくてもいい。
「どうかあなたの手がもう二度と汚れないように一緒に行動したい。」
包み込んでいた手を今度は強く握りしめた。
瑠子はハッとしてただ手先からあふれる感情を伝いそれが暖かな一筋の光に感じた。
部屋の外では春雷をつげる雨が降り注いでいた_。
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