第10話
気付くと波斗は海を見ていた。海に来た記憶など一切ない景色だった。
満足すると波浮き立つ砂浜を裸足でゆっくりと歩いた。
素足で感じる砂の感触が一つ一つ気持ちが良い。
やがてしばらく歩くと洞窟がぽっかり大きな口を空いていた。
これから来る恐怖とひそかな期待感が胸にこみ上げ、波斗は洞窟を覗いた。
その奥は鮮やかな朱色を帯びた炎が・・・
ハッとして波斗は目を覚ました、相変わらず身体は動かない。
首だけは何とか動き周りを見渡すと灯台に帯びた炎がいくつか燃え黒い岩に囲まれた外観を赤々と照らしていた。
「気が付いたみたいだね。」
ふと声が聞こえたので声の先を見ようとすると瑠子がいた。
だけど身に着けてる衣装が全部違う、眼鏡は外しており華奢な体には胸と下腹部を隠した白いセパレートの様なモノを身に着け艶やかな藍色の衣を羽織っていた。
「その姿…それにここは?」
「私の隠れ家」
ポツリと瑠子は答えた。
「もしも私が初めて苦しんでる人を見つけ出会ったらここに連れてこいと用意された祭壇なんだ。」
「さい…だん…?」
そういえば身体の裏が妙に冷たく感じる、触感だけは戻ったようだ
手で触れると石のような感触を覚えた。
触感の意識を順番に辿ると両手両足は縛られていた。
「何で俺…縛られてるんですか…?」
「儀式中に暴れられない様にしてるんだ。でもまだ身体は動けないみたいだね。」
そういって瑠子は波斗の胸部に触れた、ヒヤリと指先で症状が出た黒い染みに指をそわせ波斗を覗き込んだ。
波斗は意識を失う前に瑠子が発した言葉を思い出した。
「俺…元に戻るんですか…?」
「うん」瑠子は頷き「戻してみせる」と再度言葉をつぶやいた。
「なら良かった…」と安心した波斗は意識が遠のきそうになった。
「まだ早いよ」
と少し冷静な瑠子の発言と頭をたたく感触に慌てて意識を戻す。
「どうやって元に戻すんですか?」
との波斗の問いに瑠子は答えた。
「毒を猛毒で治すの」
そうして瑠子は手元にある平らな石に置いてた道具を用意した。
「これから始める事は例え君自身がどんなに痛くても苦しくても私だけを意識して」
物騒な物言いをする瑠子と両手両足を縛られた状態の波斗は背中に冷たい物を感じた
だけど恐怖は己の忍耐力で何とか防いだ。
「わかったよ…何が来ても驚かないから」と波斗は目を閉じた。
「うん、ありがとう」
そう言って瑠子は用意していた道具から麻の布をふわりと波斗身体にかけ、その上に
月桂樹の葉を散りばめた。
(一体何が起きるんだ…)深く閉じたまなこから不安の色が見えた。
瑠子はそして手元にあったオリーブ油を波斗の身体にふりかけ
そっと灯台から一本の松明波斗の周りを囲む様に順番に松明に炎をともした。
それから・・・
「うっ!?ゔあ”あ”あ”あ”ーーーー!!」
突然起きた出来事に身体が驚愕した
瑠子が自分の身体を燃やしているのだ。
「あ”あ”あ”あ”ーーっ」
悲鳴は止まらない焼け狂う痛みに自信が燃えていくのがわかった。
「さまよわないで!!」
奥から瑠子の声が聞こえる「私だけを見て!!」
そんなこと言われても自分は焼き殺されようとされてるのだ。
こんな状態で何が出来る?
(やっぱり俺は死ぬのか?殺されるのか?)
身体中燃え上がるのを感じて波斗は錯乱していった。
でもそんな中で瑠子は火をも恐れず波斗の頬に手をあて
口に何かを含みそれを波斗の口に口移しで流した。
それから時がすぎた、波斗は痛い、苦しいという感覚から口移しに
うつされた液体が己の喉をつたい全身に染みていく感覚に意識が移っているのに驚いた、だけど炎は止まない。
そうして何かの液体を全て波斗の身体に流し終えた後も瑠子は何かにすがる思いで波斗の口を塞いでいた。
その奥は二人の舌をからませあい続け口づけは続いた。
やがて炎は止み焼死体として残る筈の波斗の身体は燃える事なく
黒い染みは消えまっさらな身体のまま残った
が、ショックのあまり再び気を失ってしまった。
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