第9話
まぶたがピクリと動いた、恐る恐る目を開けると天井が見えた。
横でピーピーと鳴る機械音にゆっくりと顔をよこに向ければ見た事ない機械の電線が自分の胸に取り付けられてる。
(生きてる…俺)
と意識が戻り身体を起こそうとしたが体は動かない
「まだ無理だよ」
と発せられた言葉にハッとすると瑠子が居た。
「先生…ここはあの世か…?」
「違うよ、現実だよ。」
と瑠子は胸を撫でおろし横に置いてあった水をコップに注いだ。よく見ると瑠子の瞼は赤い。
「これ水だよ、飲める?」
コクンとうなずいた波斗は瑠子のされるがままに水を喉に通した。
「意識は大丈夫みたいだね」
飲み終わって波斗の口からコップを離すと元にあった位置に置いた。
「先生…一体俺はどうなったんだ?何か病気か?」
普段体を動かす事が出来る波斗にはこれといった病弱な事は…あった。
「…拒色症」
瑠子はその言葉を聞いてピクリと震えた。
「どうなってんすか?俺の身体は…何か知ってるんですか?」
あの放課後での景色がよみがえる
しばらく病室に沈黙が響いた。
そして瑠子は言を決したかの様に波斗頭を撫でた
「今から言う事…信じられないかも知れないけど聞いてくれるかな?」
何故か頭を撫でられたのに感触を感じられない波斗は静かにうなずいた
「君は色にうえてるんだよ」
その指先は頭から胸部へとつたい渡った
「その証拠が黒い染み…」
「うえてる?黒い染み?一体どうゆう事なんですか?」
頭に疑問ばかりが浮かぶ、前に瑠子が話したのは色が見えなくなる言っていたが
「前は校門前で俺が倒れた時は色が見えなくなると話してましたよね?それとは違うんですか?」
そもそも何なんだ色がどうとかこうとか
「前のは症状が始まる第一段階みたいなもの、今の君は次の段階…」
出来るだけ分かりやすくしようと端折ってはいるが瑠子は説明した
「黒い染みが発生すると拒色症は悪化をたどる…医療では治せないんだ。」
胸部にあった指先が波斗の口元へとたどる、だけど感触感じられない
「これは全て真っ黒な悪い人のせいなんだ…」
それから瑠子の顔はくしゃくしゃと崩れた
「ごめんね…私に関わってなかったら君は普通に生きてこれたのに…」
ぐずぐずと泣き出す瑠子を見て今自分が何も出来ない悔しさが募った
「お願いです、泣かないで下さい…情けなくなるから…」
その言葉に自分が惨めな状態を受け瑠子は何とかまぶたをこすった。
波斗は続けた。
「俺もう元に戻らないんですか?」
瑠子は泣くのをやめ赤く腫れたまぶたで波斗を見つめた。
「戻るよ、戻してみせる。それが私の使命だから。」
ハッキリと瑠子は発言したそして波斗の手を握りしめた。
「その為には儀式が必要。だから私の座敷に来てほしい」
…使命…?それから波斗の意識は再び途絶えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます