第8話

波斗が起こした騒動から一週間がたった。

朝いつも通り登校する波斗の顔は暗かった、あれから瑠子は波斗をさける様になっていた。理由を聞こうにも校内ですれ違っても瑠子はそそくさとその場を去るので波斗は声すらもかけられなかった。

(やっぱりキスなんてするなんてまずかったんだろうか…)

でもあの時すごく落ち込んでる彼女をはげます言葉なんて思いつかなかった。

俺の精一杯感謝の気持ちをありきたりな言葉じゃなく態度で示したかった

けど結果がこれだ。他にもっといい方法があったんだろうか?

憂鬱な気持ちのまま朝のHRが始まった、一週間何も変化がない一日が始まると思ってた矢先、担任の先生と一緒に瑠子が後ろから同行していた。

驚いた波斗はふいに瑠子と目があったが瑠子は目を背けてしまった。

「今日はHRを始める前に紫先生からお別れのご挨拶があります。」

「はい」

え?お別れてどうゆう事だ?

波斗だけじゃなく周りの生徒たちも驚いていた。

「みなさん落ち着いて下さい。」

「私は本校に調査の為にやってきましたがこの度予定より早く調査が終わりましたので本日を持って学校を去りたいと思います。」

それでも瑠子はいつも通り淡々と答えた。

HRが終わり波斗はたまらずに席を立ち上がり教室を後にした、瑠子を追いかけた。

「ちょっと待ってっ!!」

思わず波斗は瑠子のの手をつかんでいた

「キャッ!?痛い!」

「ご、ごめん…」

強引すぎた行動に波斗は手を引っ込めて

「あの…色々突然すぎて言いたい事がまとまらないんですけど…」

瑠子は黙って波斗の顔を見ていた。

「あれから何も無い?」

へ?と発言された言葉に意味がわからなかった

「あれからって…あ。」

波斗は思わず黙って見つめる瑠子の視線に顔を赤くしながら視線をそらした

「あの件は…すみません、調子乗りすぎました。」

いつも通りの学生らしい素振りを見せる波斗に瑠子は胸をなでおろした。

「どうやら何も無いみたいだね…良かった」

「ど、どう言う事すか、説明してくださいよ」

瑠子の発した言葉一つ一つが訳がわからず波斗は瑠子に向き直った、さっきの動揺は落ち着いている。

「うん、それは普通の子にはとてもうまくは伝えられないの…だって私は…」

と言いかけておとずれは始まった。

ドサッっと瑠子の目の前で波斗が崩れ落ちた。

驚くあまり言葉を失った瑠子だがはっと息を整え今の波斗の状態がどうなってるか

シャツの胸元を明けヒューヒューと苦しそうに息をする波斗の胸元を調べた

目で見ても明らかに分かる、波斗の胸元には身体の表面に黒い染みが浮かんでいた。


HRの終わった以降のの瑠子の対面以降何も覚えていない、頭の中がふらふらと意識がさまよい上手く現実に戻ってくれない

(どうなってんだよ…俺…)

苦しさが胸に拡がり思わず胸ぐらをかきむしった

(落ち着いて!落ち着いて!ごめんね…ごめんね…だから安静にして!)

わずかに聞こえてくる言葉は後悔と懺悔の言葉であふれ返っていた。

でももがく苦しみの中でのその声は深く安心感を身体に満たしささやいてくる。

瑠子の声だ、何だよ…何でそんなに謝るんだよ…謝るのはむしろ俺…

次第に聴力だけは安定してきて瑠子の声以外に見知らぬ物音が聞こえた

(救急車到着しました!ただちに緊急搬送致します!)

そして誰かに担ぎ込まれタンカーに運ばれ車の中へと運ばれる物音がする

(ごめんなさいっ、ごめんなさいっ、ごめんなさい…!!)

後は響くサイレン音とひたすら謝ってくる瑠子の声、何だか泣きじゃくる様に聞こえる。

(先生もう泣くなよ…むしろ泣かせてしまったのは…)

そこで波斗の意識は途絶えた。

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