第6話
その後もカラオケで米国の歌ってくれだの街中のゲームセンターに連れまわされたりと美里馬音のありあまる元気さに付き合わされた。
「ふー、楽しかった!今日は付き合ってくれてありがとー」美里馬音は俺と無理やり握手してぶんぶんと腕を上下を振り回した。
「あぁ…アンタが楽しかったらそれで良かったよ。」
お礼にこれあげる」
握った手を開くと小さな紙切れが一つ入っていた。
開くと中間テストの各項目のポイント部分が手書きでずらっと書かれていた。しかもやや手こずりぎみの日本語(古文だとか歴史だとか)が書いていた。
「それ参考にしてくれたら嬉しいよ。」
「すげぇな、あんた。何者だよ一体・・・」
「普通の女子高生だよ~、じゃ帰り気を付けてね~」
そう言って俺に背を向け街中に消えていった、今日一日ただのはしゃぎまくる女子だと思ったが紙を見る限り結構しっかりしていた箇所を押さえてそうだった。
(うわ、すげぇ…特に古文と日本の歴史は本気助かるわ…)美里馬音という女子がどんな人物だったのかは後日わかる事になり腰を抜かす事になるとはその時思いもしなかった。
鮎真波斗とのやりとりの後瑠子は激しく後悔した。
「今の高校の問題て何を出してるんだろ…」
コンコン、一つため息をつき職員室の扉をたたいた。
「失礼します。」
室内には一人教頭先生が机に向かっていた。
「おぉ、これは紫先生、どうしたのですかこんな遅くに」
確かに教頭先生の机のまわりを見ると帰る身支度の様子をしていたので早めに用件を伝えよう。
「…あの私…生徒たちともっと接して見たくて、その今度の中間テスト私も受けられますか?」
教頭は口をポカンと開けていた。
こうして全生徒にまぎれて波斗と瑠子は中間テストに向けて準備をすすめていた。そして中間テストが始まりやがて結果発表の時がきた。
『あーぁ夢の500点は難しいな…』
『うわーあいつ今回もトップかよ』
『ダメだ、あそこの問題を間違えてしまったか…』
廊下の掲示板に張り出された中間テストの順位を見て生徒たちが色々と感想を述べていた。
「…あんた、見た目と違って凄いんだな。」
波斗の横にいた馬音と張り出された成績を見て珍種でも発見したかのような顔で馬音を見ていた。
「そんなことないよ、だってちゃんと上位に立派な成績残してる人いるし…」と謙遜しながらも馬音は一つため息をついた。
馬音のテストの総合点数は371点で学年20位以内に収まっていた。
しかし馬音自身は波斗の素直な感想と結果に腑に落ちないのかどこかその場所にいるのが嫌そうだった。
「結果わかったしもう行こうよ」そそくさと馬音はその場を後にした。
「…う~ん、あんまり嬉しくないみたいだな。」
先方をそそくさと歩く馬音の後ろ姿を見て波斗は自身の試験の結果を振り返った。総合成績はそんなに良かったとは言えないが波斗自身は試験中苦手な科目に苦戦すれど馬音からもらったテストのヒントで何とか各科目50点以下を取ることは免れた。
波斗が馬音に関心したのは、本人の成績だけでなくそのヒントが本番で功をなした。
最初に声をかけられた印象は割と遊びに時間を割いてそうなイメージだと馬音に持っていたから、その意外性には驚いた。
(この子の周りの評判は分かんないけど要領がいい奴なのかもしれないな…)そうして波斗はふと自分の金色に染めた前髪が目にかかりくしゃっと手でかきあげた。
(人を見た目で判断するのは良くない…俺もよく誤解を受けやすいもんな)なんとなく目の前に写る少女と自分の共通点が重なってしまった。
(そういやあの人はちゃんと俺との約束守ってくれたんだろうか…)
休憩時間終了のチャイムが鳴り、次の授業の準備に入りながら波斗は瑠子の事を思いふけった。
一方その頃
瑠子は回りの身支度を終え職員室でテストの結果を受け取っていた。
「あぁどうも紫先生、これが例の先生のテストの用紙です。」
「・・・・」
受け取って内容をしばし凝視したまま瑠子は恥ずかしさのあまり顔を上げられずにいた。
(私何でこんな無謀な事簡単に引き受けたんだろう…)
結果はどの科目もさんざんであった、唯一まだ余裕があった理系も仕事で係わってる項目以外はほとんど正解はなかった。瑠子にとって初めての高校の授業というのは未知の世界でレベルが高いのを痛感された。
しばし用紙を受け取ったまま放心していたので教頭先生が心配そうな表情で瑠子を見つめていた。
「あ、はい。今回は大変勉強になりました。ありがとうございます。」
相手のしぐさに気付き、何事もなかったかのようにその場を立ち去りたかった。
「あーいや、こちらこそ。あっそれと折角ですから先生の結果も順位表に混ぜておきました。」
「・・・・え?」
さらなる仕打ちが瑠子を追い詰めた。
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