第4話

臨時でお借りした実習室の窓から瑠子は青白い空を眺めていた。青白い空に雲がまばらに浮かんでは宇宙まで届きそうな高いビルにからみつきそうな光景だった。

すっと線を引いた様に空にそびえ立つビルは見知らぬ人が見たら美しいと感じるのだろうか、瑠子は醜く思った。

あまり上ばかり見ていても仕方ないので瑠子は眼鏡を外し一通の封筒を開けた

中には簡略化した文章と一枚の写真が同封されており写真には色とりどりの薔薇の園が写っていた。

(いいなぁ…綺麗だな…場所はどこにあるんだろう?)

しばらく写真に写る薔薇たちに見とれていて実習室に誰かが入ってきた事すら気付かなかった。

「あ、眼鏡外してる。」

「ひゃっ!?」

突然の出来事なのであわてて手紙と写真を後ろに隠した。

「わっ!!」

眼鏡を外してるのでよく見えないけど男子生徒が顔を近づけてそばで楽しそうにニヤニヤしている。

眼鏡を探してかけるとそこには昨日の男子生徒、鮎真波斗がいた。

元からなのか染めてるのかきれいな金髪が日差しに当たってキラキラ光り屈託のない無邪気に笑っていた。

「驚かせないでちょうだい!!」

瑠子はキツく言い返したが波斗は一瞬キョトンとして元の顔に戻った。

「いや、ごめんなさい、ごめんなさい。」

彼は頭を下げ深々とあやまった、一応形状は誤ってくれたので瑠子は一呼吸おいた。

出ないとあまり男の人と顔を近づける程接近するなんて無いので心臓がドキドキしていた。

「ここに来たって事はどんな用件なの?」

「うん?先生はずっとこの実習室に籠ってるんですか?」

「そりゃ夕方には帰るけど・・・・」

「そうじゃなくて他の生徒とさ、遊んだりしないんですか?せっかく歳も近いのに」

確かに瑠子はもうすぐ二十歳になるがまだ十九歳の身であるからこの学校含め過去に訪問してきた学校の生徒とは年齢が近かった。だけど中学で学生というものを経験してから最後、同年代の子たちとはふれあう機会は無かった。

「別に…あくまで私は仕事で来てるから必要最小限の会話が交わせればそれで充分よ。」

ふとお互いに目と目があったので波斗を見つめるとキョトンとして瑠子を見ていた。

それにしても目の前の波斗は数週間前の突発的な症状はなく元気そうだ。

「そうか、じゃぁその仕事に関わる事かも知れなくて聞きたい事があるんですけど。」珍しい。他の生徒にはこちらから簡単な質問をするくらいで返される事は無かった。

「昨日親父から連絡があってさ」

こくっと軽く相づちを打った

「この前の倒れた時の事話したら拒色症てつぶやいてたんだ。」

一瞬瑠子は動揺した。

それも相手もまじまじと私が私が目を見開いてるのを見られてしまった。

「何かこの言葉に心当たりある?」

「・・・今は言えない」

「え?昨日は説明しといた方がいいって俺に言ってくれたじゃん」

「でも…まだ何も情報が入ってこないの…」


拒色症。人間は他の動物と違い色彩が感じ取れる生き物。

それは言葉通り原因は分からないが人が色を拒んでしまって

色彩が感じ取れなくなる病気だった。

瑠子はそんな未知の病を調査する為にあの天空を遮る高いビルから瑠子は派遣されている。

なぜなら唯一瑠子がその色彩を失くした人に色彩を抽入する事が出来る人間だった。

でもこの病気はまだ世の中には知られていない

どうして彼が、いや彼の父親が知っているんだろう

‘‘彼と接していかなければならない‘‘

派遣されてる身の使命感から、単なる己の興味本位なのか瑠子は頭の中でそう考えていた。

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