第3話

家に帰り、部屋の明かりをつけてパソコンを立ち上げると来てほしくないメールが届いていた、親父からだった。メールの内容は一言。

「これを見たなら電話を入れてこい」それだけ。

俺の親父は何の研究を分からないないが大学の助教授をしている。ろくに職にもつかず(調べる重要な事がある)と言って大学の実験室でこもりきりの無機質な父親だった。俺はそんな人間味のない親父が苦手に近い嫌悪感を抱いていた。まだ母が生存してた頃、そんな父親と相手して嬉しそうにしている母の顔を見た事がない。

しかしメールの内容に断る理由も無いしほっといたら毎日同じメールが来るので仕方なく米国にいる親父に電話を入れた、どうせ親父が聞きたいのは一つだけだ。

「俺、メール見た」ぶっきらぼうに答える俺

「待ってた、今帰った所か」

「ああ、めずらしく家にいるんだな」

「調べ物で本を取りに来ただけだ、すぐに大学に戻る。」

たまにはうちにいる妹にも気にかけて欲しいもんだ、そんな俺の気心も知らずに親父は淡々と続ける。

「日本で変わった事はないか?」

俺が日本の学校へ編入してから妙にこればっかり尋ねてくる。

「全然。普通に俺は未来の彼女を探しているよ」

「真剣に話せ」

他は無機質なくせにこうやって俺がちゃらけた時は怒りをあらわにして感情をみせる、子供か。

けど「彼女~」のくだりでふと思い出した、数週間前の出来事が脳内に浮かんだ。

「そういやこの前妙な体験をしたわ」

「どういう事だ?」

妙に食いつきがいい

「結構可愛い女の子に告白してフラれた後、帰ろうとして校門まで行ったら急に視界がぼやけてその場で倒れたわ、俺」

「・・・・」

どうやら話を聞いてるぽいのでそのまま続けてみた。

「んで、呼吸するのも苦しくなって、やべぇ、死ぬかもしれないと思った時に急に女の人がかけつけてきて、(俺の中に色を入れる~)とか言って助けてもらったんだ」

「女…か、その女性の名前はわかるか?」

「んー臨時講師としてやってきた先生で紫瑠子ていう名前だった。」

紫…色を入れる…拒色症・・・・」

「え?なに?」

聞きなれない単語が出てきたので思わず聞き返してみたがあっけない程無言だった

「そうか、でお前は助かったのか?」

「一応」

「体には気をつけろ」

そう言って一方的に親父からの電話は終わった。

ぶっきらぼうとはいえ初めて親父が気にかけた言葉らしきものを吐いた気がする。

携帯電話を机に置き、ドッと何かの疲れが取れた気がして椅子に座り込んだ。

今日は何だろな…親父といい、今日の彼女といい、ムスッとした奴ばっかでさ

もっと喜怒哀楽、怒と哀はいらないか、もっと喜びと楽しみに満ちた人間になれないもんなのかね。

親父はともかく、あの彼女の事のが頭に浮かんだ。

彼女は楽しいとか嬉しいとか、クシャクシャに笑う顔とかしたりするんだろうか…

「キョショクショウ・・・・」

さっきの親父の電話で本人が口に4もらした言葉、放課後に体験した透明なガラス越しから見た色味のない白黒の世界、一体どうつながってんだろう?

また放課後に足を運ぼう。

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