第5話 美音(みおん)のひとりごと
美音です。
ごめんね、今日はちょっと重たい話です。聞きたくなかったら無理しないで。
ハッピーが逝なくなってから今年で3年になる。
3年前、ハッピーのお葬式を終えた後、世界が終わったような気がして、何をしていいのかわからずに外に飛び出した。
あてもなく町をさまよい、どこまでも歩き続けた。
それでも、いつしか歩き疲れてカフェに入り、サンドイッチとコーヒーを食べた。こんな時でもお腹が空くんだ、と思った。
そうしてなんとかまた、家に戻ってきたことを、昨日のことのように覚えている。
それから最初の一年間は生きている心地がしなかった。
心をパンパンに張り詰めさせ、無理やり忙しくした。
仕事や講義をたくさん入れて、なるべく暇な時間をつくらないようにした。
人に会うときも平静を装ってた。笑顔をつくって。
でもそれがいけなかった。無理がたたって翌年の7月、ついに倒れた。
食欲も無くなり、体重も7キロ減った。
それからはずっと、リハビリしながら自宅で療養している。
一時はめまいやふらつきが酷くて歩くこともできなくなった。
母や友だちにお世話になりながら、何とか今日まで生きてきた。
三年たった今はだいぶ良くなり、日常のことはひとりで出来るようになった。
今年の1月からは毎日少しずつだけど散歩もしている。
体がつらい時は家の周りを少しだけでも歩くようにしている。
ハッピーという存在。あたしにとってこんなにも大きかったんだ。
存在の耐えられない重さ。
そのことに驚いてる。最初は気持ちを紛らわせればいなくなったかなしみを忘れられると思ってた。そうじゃなかった。
心も体もある日バーンアウトしてしまうんだね。
この体験を通して痛いほど骨身に染みた。これほどなんだと。
おかげでコロナ禍もあまり気にならずあたしは、自分のリハビリだけに集中できた。
世の中の人たちも自由に外出できないんだな、あたしと同じだ、と思ったらなんだかとても心強かった。一緒に頑張りましょう、という気持ちだった。
ハッピーはあたしの心の中で今も生きている。あたしはそう思ってる。
姿は見えないけれど、不思議と気配は感じる。
ハッピーが寝床にしていた場所に今も居てくれて、あたしの話にじっと耳を傾けてくれているような気がする。それがなんだか嬉しいし、温かい気持ちになれる。今はもう悲しみに沈んではいない。
ハッピー、いつもホントにありがとう。
あたしの重たいお話はこれくらいにします。
聞いてくれてありがとう。とっても嬉しい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます