12.新たな仲間

「おい、馬鹿!こっちに来いってんだ!こっちに逃げろ!」


「え?何?どういうこと?」


「ゴフアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!」


「どわあああ!?」


俺は疲れのあまり、ファンタの言葉さえ理解できなかった。

水色の液体……水色のホイールは、容赦なく暴れ回っている。

やばい。

空気を読め!この液体が!


「おい!テッド!こっちへ来い!」


「こっちって……ど、何処?」


「ゴフアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!」


「うわあああああああ!いったああぁ!」


「こっちだよ、テッドォォ!」


「ゴフアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!」


うるせぇえええ!ファンタの声聞こえねーじゃねーか!


「ファンタ!もうちょっと大きな声で頼む!」


「ゴフアアアアアアアアアアアア!!!」


「あ?何だって?」


「だから……」


「ゴフアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」


だーっ!うるせーっつってんだろ、このどろどろスライムが!


「もうちょっと大きな声で頼むって--!!!」


「これが限界なんだよ---!!!」


はあ、はあ……。

だ、駄目だ。やられる---!



---



魔法使いの青年、ケトルは森の中を歩いていた。


髪は青色。メガネの片方だけの様な物を目にかけていて、何やら赤い玉を挟み込んでいる木の棒を持っている。おそらく杖だろう。

白色の服と赤いマントを着ていて、灰色のマジシャンがよく鳥とか出すやつの帽子をかぶっている。見るからに紳士の格好をしていた。


「暑いですね…」


日傘を首を上げて見ながら、ケトルはつぶやく。

いくら木の下が涼しいと言えど、この暑さじゃそうは思えない。

ケトルはため息をつき、チラッと横を見た。


「おや。アレは…」


ケトルが見た先には、ファンタとテッドの姿があった。

まぁさっきも言った通り、二人とも滅茶苦茶大変そうな顔をしていた。

二人の叫び声がはっきり聞こえる程、二人の声が大きかった。


「ただのアホですか」


ケトルはまたため息をつき、日傘を近くに置く。


「身体魔法・視力強化」


ケトルは杖を前にやり、そっと言った。


すると杖から光が出て、ケトルを包み込んだ。


「…なるほど。ウォーターファンタホイールですか」


敵を察知し、新しい呪文を唱える。


「攻撃魔法・幻乱天断翼破紳」


すると、杖から闇に包まれた紫の液体の様な物が出て来て、水色のホイール……ウォーターファンタホイールに直撃して消滅した。

一方ウォーターファンタホイールは。


「ギャゴアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」


世界一かもしれない大きな声をあげ、灰になって散った。


テッドは呆然と見つめるしかなかった。


……すごっ!誰?誰かさん強っ!

ってかこのホイール、やられ方違ったんだけど?普通はどろどろ溶けて消えるだろ?まあ、いいか!


「だ、誰だ?お前」


え?

いつの間にか、ファンタともう一人の人物がいる。

ファンタは慌てていた。

俺はその人物の所へ行き、聞いた。


「俺達を助けてくれたのはお前か?」


「はい。でも助けるとかではなくて、ただ暇だから倒しにいっただけですが」


…す、ずけえこの人紳士だな…。

とにかくッ!


「まあ、いいぜ。ありがとうな」


「いえいえ」


「お、お、お前の名前はなんだよ」


どうやらファンタはまだ警戒している様だ。


「ああ、そうそう。言うの忘れてました。ケトルといいます」


「そ、そうか……」


「ファンタ、大丈夫だって。そんな警戒しなくても…」


俺がファンタの背中をポンポン叩くと、ファンタはキッと睨みつけて来た。


「……まあいい。俺はファンタ。こっちはテッドだ。よろしくな」


「そうですか。二人は何故この森に?」


「森のボスを倒したんだよ」


「そうなんですか?強いんですね」


ケトルはうんうん頷いて、カチャッとメガネの片方だけの様なものを指で挟み、上へあげた。


「しかし、まだまだ森にはボスはいますよ」


「ああ。知ってr」


「ええぇぇぇ!?」


俺は目が飛び出しそうな程驚いた。


ま、まじかよおおお!?森のボスってまだいるの!?また戦わなくちゃいけないの!?嘘!?嘘だろ!?


「テ……テッド?」


「な、なんでもない!」


「そ、そうか?」


俺は慌てて落ち着いた。

するとケトルが言った。


「中々手強かった様ですね。よければ旅を手伝いますか?」


「えっ!?いいのか!?」


「はい。どうせ暇ですから」


「サ、サンキューな!」


俺は興奮した。

って事は新しい「仲間」が出来たって事!?よっしゃあ!

これでまだまだ頑張れるぜ!


「ファンタもいいよな!?」


「おう。いいぞ」


よし!では行こうではないか!


……ちなみに森のボスって何人いるの?


「でさ、ケトル。森のボスって何人いるの?」


「一人倒したなら、あと5人ですね」



……嘘だろ!??!そんなにかよ!?






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別世界転生したなんて知らなくて、気付いた時にはもう遅かった〜別世界で別の「俺」になってしまった青年の話〜 月影 @ayagoma

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