第57話


「これ、Dランクぐらいまでの魔物だったら倒せそうな威力が有るけど…」


無事に訓練場に到着して早速消防車の放水機能を使って見たんだけど、厚さ30cmはある鉄の板を容易に貫通するだけの勢いで水が放水された。

グラトニーには専用の薬剤をかけるだけで良いんだからこの威力は過剰なんじゃないか?


「遠くまで飛ばしたいんなら、それだけ威力が必要になるのは当たり前でしょ。それに量産するのに、グラトニー以外には使い道がないんじゃ勿体ないでしょ?せっかくだから魔物にも有効な物に仕上げたよ」


カナデの言うことも分かるけど。もうちょっと威力を落とさないとグラトニーを倒した後に確実に戦争の道具として使われる。

グラトニーがどこから侵攻してくるか分からない以上、俺と親交が無い国にも消防車を売らなきゃ行けないことを考えると。

そう言うことを考える国だって絶対あるはずだ。

親交が無いどころか敵対的な国にも渡す必要が有るから尚更そう思う。

わざわざ武器を融通しないでその国が滅びた後にグラトニーを倒しに行けば良いんじゃないのと言う意見もあったけど。

グラトニーはものを吸収して増殖、進化する生命体なので国を滅ぼした分、増殖、進化したグラトニーと戦うことになるので、親交の有るなしや敵対しているかで振り分けることができない。


グラトニーが片付いてもしばらくは争いが色んなところで発生するだろうな。

リンファス王国による傭兵国の紛争介入も1度白紙になっちゃったし。

流石にグラトニーが襲って来ている現状内紛は治まっているけど。当然、傭兵国にもこの消防車を融通する必要がある訳で…


「なるほどね。それならいっそもっと火力を上げようか」


「待ってください!どうしてそんな考えに?」


もうちょっと威力を下げて欲しいとその理由と一緒に説明すると。

カナデさんは逆にもっと性能をあげるかと言い出した。


「消防車にこっちから自由に停止できる機構を付けておけば良いだけだよ。これの性能があればこれだけで勝てると思って、ろくな準備もせず戦争を始めた瞬間、機能を停止してあげれば面白いことになるだろうね」


カナデさんが考えていることは分かった。

もっと性能を上げるかはともかく強制停止機構は全台つけておくべきだろう。


「それにただ威力のない水を撒くだけの物より、攻撃力があった方が意地になって受け取らないって国が減るだろう?多少のリスクは付き物だよ」


仲良くもない人物から物を受け取るのはどんな緊急事態だったとしても警戒されるし受け取らないか。

そう思いつつも、受け取らせるには相手側が警戒以上に魅力に思って貰えるスペックが必要か…。


「強制停止機構について事前に話しておくのか、黙っておくのかとかその辺の話も1度しておく必要が有りそうですね」


いくら無駄な争いが起こらないようにするからと言って自分たちの知らない機能がつけられていて。勝手にそれを起動されたらいい思いはしないだろう。

それに、他にも知らない機能が隠されているのでは?と勘ぐらせてしまう。


なので強制停止機構がありますと最初から教えておいて、そのうえでこう言うことに使うと強制停止させますよと言う条件を決めておくのが良いと俺は思う。

もっといい考えがあるかも知れないし、この後しっかり話し合う必要があるな。


「後々反感をかわないように事前の説明は必要か…強制停止機構を無効化しようとしたってそう簡単に出来るものじゃないし。もし出来たとしても、解除されたって分かるから問題ないか」


この世界でカナデさんの技術に対抗出来る人は片手で数えられるぐらいしかいないだろう。

人以外ならそれなりにいるだろうけど。


「そう言えば、今更気になったんですけど。鉄の板を貫通する威力で放水しているのに反動が全然無いですね?」


普通だったら下手しなくても反動でホースを持ってる人は吹き飛ぶだろう。


「ほんとに今更だね。結論から言うと魔法バンザイってことだね。コウダイくんだって自分で今の放水以上の威力の攻撃をしたって反動は無いでしょ?」


確かに…。真面目に考えたこと無かったけど、消防車以上の放水を魔法で手のひらからだしても反動は一切無いな。

今までは全然疑問に思わなかったけど、普通だったら反動で吹き飛ぶよね。

たしかに魔法バンザイだな。


「確かに日頃魔法を使ってるのに今更って疑問でしたね」


「まぁ、こう言う疑問を持つことは重要だよ?ここから反動は本当に発生していないのか、それとも反動を打ち消す力が知らないうちに発生しているのかと言う疑問にたどり着くことができる。ちなみにコウダイくんはどっちだと思う?」


突然の質問だけど、確かに気になる。

カナデさんがああ言う聞き方をしたという事はどちらかが正解だと調べて分かってるんだろう。


どっちが正解だ?


「後者の反動を打ち消す力が自動で発生しているですかね?」


「どうしてそう思ったんだい?」


「そうじゃなきゃ。アイが作った水をジェット噴射させて進むクルーザーが動かないことになるから」


反動がないなら、船の後ろから魔法で水をジェット噴射させても前に進まない。


「そう言う事だね。実際、魔法は反動を打ち消さないなら。半分の魔力消費で使えるよ。勿論、反動が発生する魔法限定だけど」


さらっと言ってるけど。凄いこと言ってるよね?



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読んでいただきありがとうございます。






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