第58話

「何気ない疑問でも結構すごい発見になったりってほんとにするものなんですね」


「むしろそう言う場合の方が多いと思うけどね。当たり前すぎて気にならなかった事って実は重要なことが多いんだよ」


「なるほど。それで実際に反動を消さないで魔法を使うにはどうしたら良いんですか?」


「魔法を使う時に反動を消さないように意識するだけだよ」


思ったよりお手軽だった。これ、反動だけじゃなくて魔法を使う本人を保護する効果って他にも色々有るんだろうな。

魔物が丸焦げになるレベルの火球を手のひらの上に作り出しても火傷ひとつ負わないって言うのは、自動で術者の保護機能が発動しているからなんだろう。

ただ、反動と違ってこっちを解除するのは危ないよな。

保護機能切っちゃたら魔物と同じく丸焦げになっちゃう訳だし。


反動の方だって加減を間違えると後ろに吹っ飛んで大惨事だろうけど。

下手したらミンチになるかも。


とりあえず家庭用ホースから勢い良く水を出すぐらいの勢いで指先から水を放水してみる。

勿論、反動除去は切っている。


「ほんとだ。今まで全く感じなかった反動が有る」


大した反動ではないけど。今まで全くなかった反動が確かに発生している。

魔力消費に関しては反動除去を切っても切らなくても、俺の魔力量からしたら少な過ぎて、本当に半分になっているのかわからなかったけど。


次に右手の手のひらを前に向けて、そこに氷の槍を作り出して的に向かって飛ばす。

結果は的から大きく外れる場所に槍は飛んでいってしまった。

そのままだと他の建物や人に当たってしまいそうだったので慌てて氷の槍を消した。


「危ない危ない。反動で手がブレたせいで狙いもブレた」


身体能力が上がっているからブレた程度で済んでるけど。

下手したら反動で右腕吹き飛んでたかも、別に魔力を節約する必要ないしいつも通り反動除去を切らないで使った方が良いかも。


ただあれだな。今までは出来なかった背中から勢い良く水を放出して、その反動で高速移動とか、地面から浮いたりとかそんな事もできるようになるわけだ。

今までは反動が発生しないから出来なかったけど。

…必要があるかと言われたら全くない。

わざわざ水属性魔法でやらなくてもほかの魔法で出来るから。


俺は有効活用できそうにないけど、有効活用する人も出てくるだろう。

実際、この事を知っているから水のジェット噴射の反動で進むクルーザーが完成した訳だし。


「最後は話がそれちゃったけど。消防車の性能実験は終わりで良いですよね」


この後はさっき話していた強制停止機構について相手に教えるか。教えるとして、その時に同時に伝える、強制停止機構を作動させる行動についてまとめたりと時間がかかりそうなことが残ってる。


「まだ、消防車の魔力障壁とか、備え付けの消化器とか実験しなきゃ行けないものは沢山あるよ」


まだまだ試す物がいっぱいあるみたい。

俺からお願いしたものも有るし最後まで実験に付き合おう。


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流石にそこまで時間掛からないだろうと実験に付き合ったらディアーネさんが「夕食の時間ですよ」と呼びに来るまで終わらなかった。


消化器タイプもスプレータイプに比べると確実に使いやすくなっていたし。

その上位互換のケル〇ャーみたいな散水器も開発されていた。

ケル〇ャーは消防車と消化器の中間みたいな性能をしている。

あとは事前に設置しておいてトラップのように使う予定のスプリンクラーも見せてもらった。

グラトニーがどこから来るか分からないけど、事前に罠として設置できるなら確かに効果的かも知れない。

空を飛ぶタイプもいるからそれだけで完封することは出来ないけど。

それでも、人間が対抗するための装備が着実に増えてきて、だいぶ被害を抑えられる算段がついてきた。


「で、こんなものまで作ってしまったと?」


「作れそうだったからついね…世の中に流通させるつもりは無いよ」


「当たり前です。こんな物流通させたらグラトニーを作らだしているのは俺たちなんじゃないか?って言う人間が一気に増えますよ?ただでさえ自作自演なんじゃないかって噂が流れているんですから」


カナデさんが作り出したのはグラトニーの特徴を再現した粉だ。

この粉を振りかけられた物は金属になってしまう。

ある意味夢のような粉だ。


ただ、こんな物を流通させたら世界は大混乱に陥るだろうし、金儲けの為に俺たちがグラトニーを作って襲わせていると風潮している人間が水を得た魚のように嬉々として騒ぎ出すだろう。

こちらとしてはそんな事しなくても金なんていくらでも稼げるし。グラトニーの対策装備だってすごい安値で売ってるんだけどね。

その証拠に、これまで販売したグラトニーの対策装備の合計金額より、高難易度ダンジョンのボスの素材の売却額の方が何十倍も高い。


そう言ってその場で黙らせたけど。

俺の揚げ足を取ろうと必死みたいだしわざわざきっかけを与えたくない。


グラトニーを倒したら風の精霊にお願いして不正の証拠集めして失脚させてやるつもりだ。

王様たちにはさらに仕事を増やしちゃうことになるけど、風通しを良くするためと割り切って頑張ってもらおう。


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読んでいただきありがとうございます。



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