第29話

「シェイちゃんとは後で遊ぶとして。

ようこそ魔族の村へ。発展途中だからあんまり見るものは無いけど。楽しんでいってね」


エリーゼがここまでの行動を無かったことにして、村のリーダーっぽい挨拶をしてくる。

まぁ挨拶も無しに抱きついてきて、その後はシェイプシフターの変身能力で色々遊んでたから。軽い挨拶しかしてなかったし。

ちょっとはしゃぎすぎたかなと今になって思ったのかな。


「ありがとうエリーゼ。と言っても今日はエリーゼに会いにいた感じだから。もし、エリーゼが忙しいなら帰ろうかなって」


「仕事なんてあったとしても、ほっぽとけば良いし。コウが満足するまで相手出来るよ?」


「ここ最近、コウ様が会いに来てくれない…って不貞腐れて仕事を全くなさらないので。溜まりに溜まってるんですが…」


レムさんがそう言った瞬間、余計な事を言うなとエリーゼがレムさんのことを睨みつける。

レムさんがわざわざ、このタイミングで言うって事は相当仕事が溜まってるんだと思う。


レムさんは空気が読めない人じゃないし。


「ちなみにどのぐらい溜まってるの?レムさん」


「約2週間分です。エリーゼ様が判断しなきゃいけない物以外は私が片付けていますが、結構な量が残っています」


そりゃ凄い量溜め込んでるな。


「付き合ってあげるから仕事しようか」


「はい…」


シュンとしたエリーゼを連れてエリーゼの仕事部屋に向かった。


「では私は飲み物をお持ち致します」


エリーゼの仕事部屋にたどり着くと、飲み物を用意するためにレムさんが離脱する。


「はぁ…。仕事を貯めた私が悪いんだけどね」


まぁ発展中の村だし2週間分の仕事って言っても今日1日頑張れば何とか終わるだろう。


「まぁ、話し相手にはなってあげるから」


「折角コウが来てるのに話すのに集中出来ないなんて…。仕事溜めなきゃ良かった」


後悔しつつ次々と机に積まれた書類に目を通して幾つかのグループに分けている。

仕事をすれば普通に出来るみたいだ。

と言うか俺よりもこういう仕事に慣れてそう。

俺はこういう仕事は基本しないし。

あったとしても誰かに丸投げだし。

そんな事より真剣に仕事をしている女性って魅力的だよね。

仕事と言うよりか真剣な顔をしている女性が魅力的なのかも?



「コウ?そんなジーッと顔を見られると流石に恥ずかしい…」


流石に女性の顔を凝視するのは失礼だったな。


「ごめんね。真剣な顔をしているエリーゼも魅力的だなって思ってつい」


エリーゼの顔が湯だった様に真っ赤になる。

数秒悶絶した後、何かを決心したように真面目な顔をして質問される。


「その…コウは私の事どう思ってる?」


どう、プロポーズの流れに持ってけばいいか分からなかったけど。コレは行けるか?

雰囲気とか欠片も無いけど…。俺にそんなのを演出することなど出来ないのでこの流れに無理にでも乗ってしまおう。


「好きだよ?今日だって、プロポーズするつもりで来たんだし」


「ふぇ?」


エリーゼが可愛い声をあげて、手に持っていた書類を地面に落とす。


そんなに驚くことだったかな?


ちなみにこの世界は藁半紙が存在しているので、紙は結構普及している。

書類が地面に散らかりっぱなしなのは問題だろうから。固まってしまったエリーゼの代わりに書類を集める。


「大丈夫エリーゼ?」


「はっ!」


声をかけるとビクッとはねて再起動したけど。突然ほっぺたを引っ張り出して。

痛い!夢じゃない!?とか言ってる。


少し落ち着くのを待った方が良いかな?

と言うかそれしかないか…。


「失礼します。飲み物をお持ち致しました。コウ様に教えて頂いたレモネードで……。何があったんですか?」


飲み物を持って帰ってきたレムさんがエリーゼがテンパっておかしくなってるのを見て、不思議そうな顔をしているとフェムト達が状況の説明をしに行った。


それにしてもレモネード完成したのか。

食べるとちょっとした電流がビリッとするレモンが栽培されていたから。

それでレモネードを作ったら面白いかも?って思ってレムさんに簡単なレシピを教えといたんだ。



「おー体に電流が流れた。でも、そのまま食べるよりか弱いかな?」


炭酸じゃないけど、電流が流れるから飲み物にしては刺激が強い。

炭酸が好きな人からしたら問題ない程度の刺激だけどね。


「体に電流が流れたおかげが体の凝りが取れて軽くなった気がする」


血行とかも良くなったりするかも?

味も美味しいし。素晴らしい飲み物が出来たな。ハーブソルトだけじゃなくて、コレも売ってもらう様にしよう。


「中々の完成度だと思うのですが。コウ様どうでしょうか?」


「素晴らしい完成度だと思うよ。今度からコレも交易品に入れて欲しいぐらいに」


「ありがとうございます。あまり農場の規模が大きくないので量に限りは有りますが、交易用のレモネードを用意させて頂きます」


当分はたまに楽しむ程度の量しか手に入らないか。

まぁ嗜好品の類だし。無理に生産してもらう訳にはいかないし仕方ないな。


「ふぅ、ようやく落ち着いて来た」


エリーゼが正気に戻ったようだ。



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読んでいただきありがとうございます。






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