第5話

「海水から気水を挟まず淡水に変化してる。流石ダンジョン。そして淡水が茶色っぽくなってるのはブラックウォーターかな?」


ブラックウォーターとは水中に沈んだ倒木とか落ち葉から染み出した、タンニンや腐植酸によって茶色く色づいた水のこと。

決して汚れているから水が茶色くなっているわけじゃない。


洞窟を抜けて3階に到達すると水深2mぐらい幅5mぐらいの川の中と言った場所にでる。

さっきまでの階と違って、狭いし戦ったりとかが凄いしづらそう。

それに、途中で分岐とかがあったりして迷路にもなってると予想がつくし。

迷路に関してはシャルがいるから問題無いし。アマゾン川に生息しているような熱帯魚系の魔物まだ遭遇してないから、ちょっと楽しみだったりする。


「この階想像以上に入り組んでるよ。エコロケーションが使えないなら1回迷子になったら帰って来れなくなると思う」


思ったより入り組んでるんだな。シャルとはぐれたら絶対に迷子になるな。

と言ってもはぐれることは無いだろう。


「それじゃあ、案内頼むね」


今まで通りシャルの案内でダンジョンを進んで行った。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「しまったな。こういう事も有るかもって考えておくべきだった」


シャルの案内で順調に先に進んでいたのだが。相手を3階のどこかにランダムで転移させることだけに特化した魔物が現れたせいで

シャルと分断されてしまった。

魔物がそれしか出来ない代わりに、転移魔法が発動するまでの時間が一瞬で逃げきれなかった。


下手に動くと、迷っちゃうし。シャルなら俺が何処に飛ばされたか把握しているはず。

俺でもシャルの魔力自体は感知出来てるし。

ただ、人ひとり通り抜けるのがやっとな流木の隙間がルートだったり。

通路自体もすごくうねうねしていて方向感覚を麻痺させてくる。

シャルの魔力に向かって進んでも俺から合流するのは難しいと思う。


転移魔法を自分で使ってシャルのところに戻れば良いだけじゃんと最初は思ったんだけど。この階はダンジョン側以外の存在は転移が使えない制限がかかっているみたいで使えなかった。


権能を使えば転移を使えるようにする事も可能だけど、ダンジョン内では権能は使わないってことになってるからダメだし。

フェムトが作ったチョーカーは俺の意思で自由に外せるから、もしもの時は躊躇なく権能を使うけど。

ダンジョンに潜れなくなるとかは避けたいから、本当に最終手段だけど。


「大人しくシャルが来るのを待つべきだな」


幸い3階は入り組んでて狭いから大型の魔物も出てこないし。暇つぶしでもして大人しくしていよう。


それにしても水中で暇を潰すって意外と選択肢がないな。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ーシャルー


「もう!コウが居なくなった途端、魔物の襲撃頻度が増えて面倒!」


コウが転移で何処かに飛ばされた途端流木の隙間に潜んでいた小魚系の魔物が一斉に襲いかかって来る。


「数が多くてキリがないよ。落ち着いてエコロケーションを使えないからコウのことを探すことも出来ないし。と言うか何でコウは帰って来ないの?転移で帰って来れるでしょ?」


シャルの超音波攻撃は広範囲攻撃が無いので、強力だけど。殲滅力は低め。

なので、数で攻めれるのは苦手。


今もシャルが魔物を倒す速度より新たな魔物が増える方が早く、若干押され気味だ。


それだけではなく、コウが自分で帰ってこないと言うのもおかしい。

転移で飛ばされようと、私の魔力を目印に自分の転移で帰ってくれば良いだけなはずだ。

なのに帰って来ないという事は、コウが同じ階でも私の魔力を感知できないほど遠くに飛ばされたのか、それともほかの階に飛ばされてしまったのか…。

とりあえず、広範囲にエコロケーションを使ってコウを探すには今襲われている魔物を倒して邪魔されない様にする必要がある。


「うわ、破裂させたら。増殖した!」



コウがその魔物を見たらプラナリアじゃんと言ったであろう魔物は、超音波によって破裂させられると。肉片一つ一つがプラナリアの姿に再生して増殖した。

その光景に目を奪われてしまって他の魔物が魔法で攻撃しようとしているのに気づくのが遅れてしまい、電撃をくらってしまう。


「バチッとした!防具がなかったそれどころじゃすまなかった…」


やっぱり私って戦闘向いてないな〜と体に異常が無いことを確認していると自分の周囲1m以外の空間が全て凍りついた。


「何!?」


凍りついた瞬間は何が起きたの!?と少し取り乱したけど。

氷からコウの魔力を感じた。どこからか援護をしてくれたと言う事だろう。



「近くにいるのかな?氷で埋め尽くされちゃってるから、エコロケーションで探せないし」


エコロケーションは超音波の反響などを利用して地形とかを確認する技術なので、氷に埋め尽くされていると使えない。


氷解除してくれないかな?と思っていると氷が一瞬で水に戻る。


これでコウのことを探せるとエコロケーションを使うと正解ルートから外れだいぶ離れたところにいるのを発見する。


「助けてくれた以上、私の場所自体はコウも分かってる筈なんだけど…。もしかして転移が使えない?」


コウに動く様子が無いので、合流するためコウのいる場所に向かって泳ぎだした。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


読んでいただきありがとうございます。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る