第40話
「その面倒事って?」
ロボブレインを全滅させて、異世界から魔力を引っ張って来れるエンジンを破壊すれば、この世界でやることは終わりだと思ってたけど。
どうやらそれだけじゃ終わらなそうな感じの情報をグラちゃんが発見したらしい。
「どうやら、ロボブレイン達は生身の肉体を培養して1から作り出すのでは無く。死体に魂を定着させる計画だったようです」
だから、俺の身体を傷つけ無いように俺を殺したかったのか。ロボブレインからしたら自分の体になる訳だから。
ホムンクルスの場合、他の人間で実験はしなかったらしいけど。魔物の細胞を使って作った素体は全部上手く行かなかったから人間の細胞でも同じ可能性があるってカナデさんは言ってたけど。
身体をそのまま使うなら上手くいくの?
「ここからが問題なのですが。既に実験は行われていて。権力者は勿論、一般人の死体を用意して入れ替わっている者がいるようです」
既に実験済みで、しかも成功してるっぽい。
それに、グラちゃんが厄介なことになったと言っていた理由を理解出来た。
既にロボブレインは人を殺して、その人物に成り代わるかたちで外に解き放たれている。
そいつらを探し出さないと、5000年前の技術を持った存在が生き残ってしまう。
でも、見た目で判断できないし。ロボブレインが入れ替わる前は善良な人間で、入れ替わったあとも善良な人間を演じていた場合…。
俺の方が確実に悪役だな。周りから見たら。
そう考えると、放置するか?悪役になってまでこの世界のためになにかする必要は無いし。
一瞬そう考えたけど。直ぐに殲滅しなきゃダメだなと思い直した。
異世界から魔力を引っ張って来れるエンジンは素材が特殊だから、新しく作られることは無いとカナデさんが言っていたけど。
ロボブレイン達に向けて俺が『ありえないなんてことはありえない』って言ったように
これから新たに製造される可能性は0じゃ無いだろう。
実際、ロボブレイン達は作り方自体は知っているんだから。
そのせいで、俺達が住んでいる世界が被害受けるのは嫌だ。
そのために少なくとも、そのエンジンの作り方を知っている人とエンジンの設計図等の情報は全て消し去る必要がある。
たとえこの世界の人間から敵認定されようとも。
この件が片付けば、どうせこの世界に来ることはないし。
それに今回みたいに世界の時間を止めて作業するつもりだし、犯人が俺だとバレることはない。
「それでグラちゃん。入れ替わり先の人間の情報リストとか無いの?」
手術とは少し違うだろうけど。何かしらそんな感のことをする必要はあるだろうし。
入れ替わった人物のリストが存在すると俺は思ってるんだけど。
「…それが、敵の人工知能が負けを悟ったと同時に、最後の嫌がらせとしてそのリストを消去してしまったのです。現在復元作業を進めているのですが、70%まで復元するのが限界かと思われます」
敵の人工知能も最後にエラいことしてくれたな…。
俺らが困ることをしてやるって信念からの行動だろうけど。
ほんと最悪。
となると、どうやって中身がロボブレインに変わってるか判別するかだけど…。
カナデさんに相談するか。俺より、魂って概念について詳しいだろうし。
魂の判別も、もしかしたらできるかもしれない。
「グラちゃんにはリストの復旧作業を頑張って貰うとして。例のエンジンを破壊してからこの施設も壊しちゃおう。その後カナデさんのメインラボに戻って今後の作戦会議だね」
施設を壊すなら、あえてエンジンを壊しに行かなくても一緒じゃない?って思うだろうけど。エンジンが壊れたのをしっかり確認しておきたい。
その為にあえて施設を破壊する前にエンジンをわざわざ破壊しに行く。
「承知しました。エンジンまでの道案内をさせて頂きます」
ロボブレインからしたら最重要設備だからだろうが。道が凄い入り組んでいて、案内無しに辿り着くのは相当大変だっただろう。
「これがそのエンジンか…」
パッと見エンジンには見えない謎の装置が部屋で起動している。
部屋の中心で空間が裂けていてそこから魔力が溢れ出している。
この装置はエンジンではなく、実際は世界を繋ぐゲートと言うことだろう。
中途半端にゲートが生成された結果。
魔力だけが溢れて来ているようだ。
こっちの世界の人は魔力を無尽蔵に吐き出すから、エンジンと勘違いしているみたいだけど。
無理に壊そうとすると中途半端に生成されたゲートが暴走して知らない世界に転移してしまう可能性もある。
なので壊すのでは無く、この装置の時間を権能で巻き戻して。この装置が存在しなかったことにした。
「ふぅこれで大丈夫。というか想像以上にヤバい品物だったな」
知らない世界に転移するぐらいなら良いけど。最悪の場合次元の歪みが巨大化してこの世界が消滅していた可能性もあった。
と言うか。施設ごと破壊するんだからって何も考えずに施設ごと破壊してたらそうなってたと思う。
それを狙ったわけでは無かったけど。運が良かったな。
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