第25話
「新しい体はしっかり生命活動をしていますし、特に異常も見つかりません。あとは博士が実際に目を覚まして博士本人か確認をするぐらいですね」
グラちゃんの精密検査の結果、体自体は何一つ異常は見当たらず。後は本人が目を覚ますのを待つだけらしい。
「何時目を覚ますか検討がつきませんし、私が機械越しに観察は続けますから。研究所を回りませんか?」
起きたらグラちゃんがすぐに教えてくれるだろうし。研究所を見て回るのも重要だよね。
「じゃあ、その案で行こう」
医療施設を後にした。
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ー医療室ー
「博士。実はもう起きてますよね?」
コウとイスカが部屋を出たのを確認してから
グラちゃんは博士に話しかける。
「流石に分かり安かった?」
グラちゃんが話しかけると博士と呼ばれている女性が上半身を起こした。
「おはよう。グラちゃん実験は成功した様だけど。どのぐらい時代進んでる?私からしたら、普通に寝て起きたぐらいの感じなんだけど」
「博士が実験を開始してから5000年以上時間が経ってます」
「待って。想像以上に時間たってるんだけど!実験の待機状態なら7000年もつとは予想したけど。ホントによく待ったな……」
5000年経っていたのは予想外だったらしく、心底驚いていた。
「ホントに博士なんですね。正直、肉体を用意して魂を定着させた程度で上手くいくのか?って思っていたんですが……」
「簡単に定着って言っても、ものすごく複雑な工程を踏んでるからね?」
この博士は地球にいる時から、10代でノーベル化学賞を受賞したり。1人1台持っているのが当たり前の道具を発明したりと所謂天才と呼ばれている人種。
なんでも大した苦労をせずに再現、完成させてしまう彼女が複雑な工程と言うんだから、それこそ人工知能が全スペックを使用したとしても、相当骨の折れる作業なんだろうとグラちゃんは理解した。
「そうだグラちゃん。今の世界はどうなっているのか。教えて欲しい。5000年も経ってたら、流石に色々変わってるだろうし。人間の姿も進化してたりする?」
博士も5000年経過しているとなると、外がどう変化してるのか皆目見当もつかない。
自分みたいな姿をした人間は旧人類と呼ばれていて、グレイみたいな宇宙人みたいな見た目に進化しているかもしれない。
いや、グラちゃんと一緒に来ていた男女のペアは私の知る普通の人間の姿をしていたな。
なら少なくとも人間の姿は5000年たっても変わってないと言う事か。
そんな感じで少ない情報から予測を立てながらグラちゃんの話を聞いていく。
人間が性懲りも無く、神の怒りをかう事になった事を再度始めているらしいと聞いて、姿だけではなく中身も全く進化していないんだなと落胆した。
実際に去ってしまったこの世界の神では無いが、5000年前と同じく既に神から敵認定を受けている。今回は人類全員連帯責任と言った形では無く、首謀者達だけに神罰が下るみたいなので、その点は少し安心した。ただ、やらかしてくれた人のおかげで、私のホムンクルスの肉体に魂を定着させて若返ると言う実験が成功したと考えるとなんだかな〜と思ってしまう。
「ん?マスターがカナデさんササキコウダイって覚えてますか?だそうです」
「待って。なんでその名前が?娘の愛が惚れてた。中学校の先輩の名前なんだけど。それに私の名前も知ってるしっ、まさか…さっきの子コウダイくん本人!」
研究所内に博士改めカナデの悲鳴に近い大声が響き渡った。
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ー少し時間が巻戻り、コウsideー
「あの博士の顔どこかで見た事ある気がするんだよな〜」
研究所を歩き回りながらホムンクルスの博士の顔をどこかで見た事が有る気がする。
誰だっけなーと考えていた。
「博士が作った肉体なんだから、地球の有名人の顔に似せたとか…いやそれは無いか」
体を1から作り出したんだから顔も自由に作れる訳だし。芸能人の顔をコピーしたから、俺が見た事ある顔って思ったのか?と思ったけど、すぐに違うなと却下する。
だって、ホムンクルス博士の顔を見てグラちゃんが博士だって判断したって事は、ホムンクルスになる前から、あの顔だったってことだ。
「私は目の感じがアイに似ているなと思いました」
「あ〜!カナデさんだ!アイの母親の」
俺が会ったことが有るのは30代後半のカナデさんだから。気づかなかった。今、10代の見た目に若返ってるし。
俺が知ってるときはシングルマザーだったけど。アイの話によるとアイが大学生の時に再婚したって言ってたし。その後にこの世界に来ちゃったのか?
とりあえず。両者に確認を取らないと。
「グラちゃん。博士にカナデさんササキコウダイって覚えてますか?って聞いてくれる?」
「了解しましたマスター」
これで、博士の方は何とかなるだろう。
次はアイに母親が見つかったっけど。どうするか話を聞いてみよう。フェムトに念話をすれば、アイに話が伝わるはずだ。
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