第24話

「どうやらこの状態は、新しい肉体を作り出して魂をその肉体に定着させることで寿命を延ばす実験の途中みたいです」


実験内容的にはおおよそ予想通りのものだったけど。実験の途中?


「実験の途中ってどういう事?」


グラちゃんに詳しい説明をお願いする。


「この肉体にはまだ博士の魂の定着作業が行われていません。というのも魂を定着させる作業に必要な魔力をどう頑張っても用意する事が出来なかったから、ここで中断させた様です。この状態なら魂も作った肉体も7000年ぐらい持つ計算らしく。その間に私が魔力を確保することにかけたようです」


そのままだと寿命で死ぬし。ダメだったらダメだったでグラちゃんに賭けてみようって事なのかな?それにしてはグラちゃんこの実験について何も知らなかったし。

俺たちがグラちゃんが居た研究所に行かなかったら、そのまま死ぬことになってたと思うんだけど。


魔力問題も俺がいるから解決出来たと思うし、結果的には賭けに勝ったと言えなくもないと思うけど。


「それでマスターには申し訳無いのですが、実験を完了させるために必要な魔力を頂きたいのですが…」


「もちろん協力するよ。その博士役にたちそうだし」


ニチアサの女の子ヒーローの変身道具の再現をしていたり、変人臭もプンプンするけど。


「有難うございます。そうしましたら、こちらのミスリルケーブルに魔力を流してください」


電化製品のケーブルにそっくりなケーブルが天井から垂れてきた。


ケーブルを握って魔力を流し始める。


「ご協力頂いているのにケチをつけるようで大変申し訳無いのですが、もう少し一度に流す魔力の量を抑えて頂けると…。機械が一度に受け止められる魔力量を越えてしまっているため、このままでは機械が壊れてしまいます」


多分100V用の機械に200Vの電流を流しているような感じか。

機械を壊しちゃうのはまずいので1度の流す魔力を少しづつ抑える。


「グラちゃん。丁度いい魔力量になったらストップって言って」


どのぐらいの量が限界なのか俺には分からないので、グラちゃんにちょうどいいところで止めてもらうようにお願いする。


思ったより、ストップって言われないなと思いながら1度に流す魔力の量を少なくしていくと、最初に比べて3分の1ぐらいのところでストップと言われた。


「一度に流せる魔力量がこれっぽっちって必要な魔力量を流し終えるのに相当時間がかかるんじゃない?」


「マスターからしたらこれっぽっちかもしれないですが。人からしたら国1番の魔法使いでも数分で魔力が空になる量の魔力を流してますからね?」


そうは言っても俺からしたら魔力の自動回復量の方が多いぐらいだし。


「それで、どのぐらい時間かかるの?」


「大体12時間ぐらいかと」


長い!でも、今常時流している魔力の量が国1番の魔法使いでも数分で魔力が空になっちゃう量らしいけど。逆に言えば1000人ぐらい人が協力すれば、魔力の確保も出来たんじゃない?


「ねぇグラちゃん。俺に頼らなくても割と簡単に魔力を集められたんじゃない?」


「どうやら、この魔力は1人から集めるのがベストと言う事らしいです。魔力は指紋のように1人1人微妙に違いが有ります。それこそ普通の実験なら全く気にならないレベルです。しかし、今回の実験の場合その微妙な違いが有るだけで失敗する可能性が上がると博士は予想しています」


なあるほど、だから最低でも1人で1000人分の魔力を保持している人物を探す必要があった訳だ。


「それにこの実験に1000人も協力者を用意するのは現実的ではありません。寿命を延ばし。不老不死すら目指せる実験です。協力者は出来ればゼロ、多くても数人が限度かと」


グラちゃんの言うとうりだな。それこそこの技術の為に世界中で戦争が起きるレベルだ。

協力者は少なければ少ない方がいい。


「それにしてもこのまま魔力を流し続けるのめっちゃひまなんだけど。グラちゃんこのコードもっと伸ばせたりしないの?」


そうすればコードを握ったまま他の場所に行けるから時間を潰せるのに。


「あまりコードが長いと魔力の減衰が起きてしまいます。マスターはだとしてもゴリ押しできると思いますが。普通、そんな非効率なことはしないので、これ以上そのコードは伸びません」


ダメかー。

仕方がないので椅子に座って大人しくしておく事にした。

ポータブルデスプレイとレコーダーを取り出して、アニメを見ることで何とか12時間耐えた。


「おつかれさまでしたマスター」


「12時間ずっとコードを握ったままってのが地味に辛かった。後、同じ魔力量をずっと流し続けるのも」


ここまで手伝ったんだから、もし実験が失敗だったら俺キレるかもしれない。


「これから実験の最終段階を開始します」


培養槽の底からブクブクと気泡が現れ始め、すぐに気泡によって培養槽内の様子が確認出来なくなった。

実験が上手くいってるのか判断がつかない。

そこから1時間ぐらい培養槽はブクブクしてたけど。段々気泡が少なくなってきて中の女性がまた見えるようになる。

パッと見何も変わってないけど。これは成功失敗どっちなんだ?


「実験の終了を確認培養槽から養液を抜いて人間の取り出しを開始します。すみませんイスカ様、博士の移動をお願いしてもよろしいですか?」


イスカが博士の事をお姫様抱っこで医療設備があると言う部屋に移動する。

グラちゃんが医療設備を操作して体に異常が起きてないか確認をするためだ。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




読んでいただきありがとうございます。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る