第17話

「グラちゃん?これはグラちゃんの入れ物に使える?」


精霊石を作り出してグラちゃんに見せる。

見せると言ってもスピーカーから聞こえるグラちゃんの声が聞こえてきてる感じだから。

本人が目の前にいる訳じゃないけど。そこら辺についているカメラから確認してるだろう。

今回は精霊石にお引越ししてもらった後マグラス大佐達にバレないようにしなきゃ行けないから、ひとまずポッケに入って気にならないサイズの精霊石だ。


「素晴らしい水晶です。前マスターが存命の時代でもこれ程のものは見た事ありません。今から私がが居る場所までご案内致しますので、お越しいただけますか?」


だいじょぶだったみたい。これならグラちゃんも一緒に来れるし。もう寂しい思いをすることもないだろう。俺的にもグラちゃんは絶対役に立つと思うのでついてきてくれて万々歳だ。

この世界での情報収集はグラちゃんがいればもう完璧だろう。

グラちゃんの案内で研究所内を進んでいく。

途中通り過ぎた部屋に海水で満たされた大きな水槽があって水槽の中では果物が育っていた。


「グラちゃんここってどんな研究をしてたの?」


「海水で育つ作物の研究ですね。現在ほどの水深は無かったですが。どんどん水面が上昇して海抜の低い場所は水没し始めていた時期に建てられた研究所だったので」


そう言えば、グラちゃんはこの世界の陸地が水没する前から生きている存在だから。研究所のことだけじゃなくて、どうして海面が上昇したのかも知ってるだろうし。この世界の歴史研究家がグラちゃんのこと知ったらどんなことをしても手に入れようとしそうだな。

歴史研究家だけじゃなくて、色んな人がグラちゃんを欲しがるだろう。

それこそグラちゃんを巡って戦争が起きるぐらいには。

やっぱりグラちゃんのことはバレない方が良いだろう。


「デカい。この水晶の中にグラちゃんが居るの?」


グラちゃんに導かれて研究所を進んで行くと

なんの意味が有るのか、よく分からない配線が沢山着いている機械の上に巨大な水晶玉が鎮座している部屋に辿りついた。


「はい。私はこの水晶の中にいます。これは当時の最新技術を使って作り出された人工水晶になります」


へえー人工水晶ね。精霊石も人工水晶みたいなもんだけど。


「マスターの持ってきた水晶に乗り移りますのでもっと水晶どうしを近づけて貰って良いですか?」


精霊石を人工水晶に近づけると精霊石がチカチカ点滅し始めた。


「乗り換え完了です。核のサイズは100分の1ぐらいになってるのに、処理能力は1.4倍アップしています。マスターこの後はどう致しますか?」


どうやらグラちゃんのお引越しは無事に完了したらしい。ついでに処理能力も上がった見たいだ。

この後は予定通りマグラス大佐達を呼ぶ訳だけど。転移させると面倒なことになるかな?


「グラちゃん。この研究所、転移じゃなくて普通の出入口って存在する?転移で研究所に来ちゃって出口探してたから、直ぐに帰って来れなかったって言い訳にもなるし」


なんで直ぐに帰ってこなかったのか理由は必要だから、丁度いい理由なんじゃないかなと思う。


「勿論、有りますよ。研究所に水が入らないような機構もついています」


グラちゃんに出入口まで案内してもらう。


「ねぇドア開けた瞬間海水だけじゃなくて土も入ってこない?」


「土砂も入ってこないようになってますから大丈夫です」


なら心配無いな。躊躇なくドアを開けた。


「さて、まずは潜水艦に戻るか」


潜水艦に転移で帰還する。


「すいません。戻りました。転移で研究所に連れてかれちゃったんで、出入口を探すのに手間取ってしまって帰って来るのが遅くなりました。因みに転移が発動した事から予想はついてると思いますけど。研究所は稼働状態でした。施設内は水没してなく作物が海水の入った水槽の中に植えられていて。農作物の研究をしていたのかな?と言う印象でした」


操舵室に転移して、帰ってくる前に考えておいた言い訳をさもホントのように話す。

ただ船員たちはそれよりも研究所が未だに稼働しているというところに大興奮。

これは歴史的大発見だぞ!と騒いでいる。

言い訳とか考える必要無かったかな?


「全員一旦落ち着け!」


マグラス大佐が興奮状態の船員を落ち着かせる。


「まずはコウ殿が無事で安心しました」


「ご心配おかけしました」


「それでコウ殿は出入口を見つけて帰ってきたという事は我々も研究所内に入れるのですね?」


「勿論、ちゃんと外からも開けられること確認したし。ちゃんと出入り出来ますよ。外からの開閉にはこのカードが必要見たいですけど。これはマグラス大佐にお渡ししますね」


マグラス大佐に渡したのは職員カード的なもの。グラちゃんいわく職員カードの種類によっては開けられない扉も有るみたいだけど。

渡したカードは何処でも開けることが出来るカードだ。勿論、グラちゃんに用意してもらったものである。


「ありがとうございます。それと研究所には防衛設備のようなものはございましたか?」


防衛設備か…。最初っからグラちゃんが友好的だったから気にしなかったな。

俺は攻撃されることは無かったけど。だからと言って無いとは断言出来ないよな。



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読んでいただきありがとうございます。


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