第16話

「おはようございます。マグラス大佐」


潜水艦生活2日目の朝。幸い夜中に呼び出されるようなことも無く、朝食を食べてから。操舵室に顔をだして、今日の予定についてマグラス大佐から説明を受けていた。


「昨日の潜水艦を使っての周囲探索で発見した怪しいポイントは4箇所になります。まずはこの4箇所を回って、全てハズレだった場合。もう一度潜水艦を使った不審な場所の洗い出しに戻ることになります」


見つけるまではそれの繰り返しってことね。

多分ここに研究所あると思うからその心配はないと思う。

謎の言語で書かれた石碑が沈んでいるポイントの写真を手に取った。

て言うか少なくとも5000年前に日本人が転移か転生してたって証拠だよな。この石碑は

石碑には日本語で『開けゴマ』って書いてある。この石碑の前で日本語で開けゴマって言えば何らかのドアが開くんだと思う。

それが恐らく研究所の入口だろうと俺は予想する。


時間軸がめちゃくちゃな気がするけど。世界どうしで時間の流れが違うし。その差のせいで今から5000年も前に恐らく現代人であろう日本人が転移してしまったのだろう。


「コウ殿はそのポイントが気になるのですか?」


俺が写真を手に取ってジーッと見ていたので何か有るのかとマグラス大佐から質問をされる。


「いや、この謎の言語俺の母国語だったので。懐かしいなと。多分このポイントに入口があると思いますよ。その石碑に書かれているのは扉を開ける合言葉的なものでしたし」


別に隠すことじゃないので正直に話す。

ちょうど最初に向かうポイントだったし。

わざわざここが順番を変えるように説得とかする必要無かったからラッキー。


「ちなみになんと書かれているのですか?」


『開けゴマ』


日本語で開けゴマと発音する。

俺は世界新様とフェムトのおかげで、2人が知っている言語ならなんでも理解できるしかけるようになっている。この世界の言葉も事前にフェムトが調べて俺が喋れるようにしてくれていたので、こっちに来てからも全部現地の言葉で会話している。

なので普段は日本語を喋ってなかったのでなんか懐かしい気持ちになった。


「読めなかった言語なので当然ですが。なんて言っているかさっぱりですね。」


「多分、その石碑の前で今の言葉を喋れば入口が開くと思うんだ」


と言ってもさっきも言った通り。この石碑のある場所が最初に調べるポイントだったので、特に行動に変化がある訳じゃない。

俺も元から水中に出る予定だったし。


程なくして、そのポイントに到着する。

水中に出て石碑がある場所に移動する。


「これで何も起こらなかったらだいぶ恥ずかしいぞ?『開けゴマ』」


特にドアが開くような音はしない。じゃあなんで開けゴマなんてそれっぽい言葉を石碑に残したんだよと文句を言おうとした瞬間俺の下に魔法陣が現れる。

これは転移が発動する感じだな。

中断させることもできるけど、何処に転移するのか気になるし。そのまま連れてって貰おう。


魔法陣が発光しコウが見えなくなる。光がおさまるとコウと魔法陣は消えていた。



「初めましてマスター。私はこの施設のAIグラです。グラちゃんでもグラさんでも好きに呼んでください」


POR〇ALの人工知能が似たような名前だったな。何ここ?テストチャンバーだったの?


「えーと取り敢えず。俺はグラちゃんが管理する研究所に転移して来たんだよね?それになんでマスターになってるの俺?」


「前マスターと同じ日本人なので自動的にマスターとして登録されました」


間違いないとは思ってたけど、この世界にも日本人が来てたんだねやっぱり。


「近くに潜水艦有るでしょ?俺のお仲間なんだけど転移させることできる?」


「この研究所に潜水艦が入るスペースは無いので。潜水艦は無理ですけど。中の人間を転移させることは可能ですよ」


マスターの俺だけしか入れないとかは無くて良かった。


「因みになんだけど。俺この世界にずっと居る訳じゃ無いから。直ぐにお別れになると思うんだけど」


そう言って俺がここに来た理由を簡単に説明する。


「なんと…では私はまた1人になってしまうのですか…」


しっかりと感情がある見たいだなこのAI。


「グラちゃんはここから動けるようになったりしないの?ポテト発電機の中に移植したりして」


「ポテト発電機は無理ですけど。高純度の水晶があれば私の入れ物として活用出来ます。後は私は生命維持にそれなりの量の魔力が必要なんです。それこそ戦艦を動かすメインエンジンが生み出すくらいの魔力量が。そのためこの施設の半分は私が稼働するための魔導エンジンですが…。マスターの近くにいるだけで魔力の問題は解決しそうですね」


まぁ、精霊王だしね。魔力量には自信あるよ?

それに水晶も精霊石があれば問題ないだろう。これは水晶じゃないですって言われたら、暴食クジラの背中に生えてた水晶を渡せば良いや。


マグラス大佐を呼ぶ前にグラちゃんのお引越しだけ済ませてしまおう。人工知能なんてグリランド王国も欲しがりそうだし。先にお引越しさせて、居なかったことにした方が面倒が少なくて済みそうだし。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



読んでいただきありがとうございます。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る