第7話
「ひとまず、潜水艦の中に侵入して領海侵犯の罪で搭乗員を拘束したのだけど。制圧自体は終わっているのですかな?」
宙に浮いたままの潜水艦を見ながらマグラス大佐にそんな質問をされた。権能を使って潜水艦内の時間を止めてるから制圧が完了してると言えばそうなんだけど。
流石に時間が止まっている所を見せるのはまずいよな。
ひとまず、感知できた人間だけ凍らせておく。時間停止も解除しておくことも忘れない。
「取り敢えず。俺が確認できた人間は生け捕りにしてあります。氷漬けになってますので、話を聞きたい時は俺に言ってくれれば氷を溶かして喋れるようにします。それと俺が感知出来なかった人間がいた場合もありますので注意はした方がいいと思います。取り敢えず乗り込めるように水面に下ろしますね」
「待ってください。せっかくなら陸に上げてしまった方が逃走対策にもなりますので、島まで運んで貰えないでしょうか。潜水艦は事前に航路を設定しておけば、自動で航行することも可能なので、動ける人間がいなかったとしても、海上に戻すと逃げられる可能性があるんです」
自動航行機能もついてるんだ。
それだと確かに陸に上げた方がいいだろうな。
「分かりました。でも、驚かれませんか?」
もう今更かもしれないけど。いや、島からだって魚雷を防いだ時の水柱がバッチリ見えてるだろうし。宙に浮いてる潜水艦だって見えてるだろうから。もうじゅうぶん島の人はパニックになってるか。
「そこは私がどうにかします」
マグラス大佐がこの場所で1番階級が高いだろうし。マグラス大佐に任せるしかないか。
「分かりました。それではマグラス大佐、先導をお願いします」
島にいる人たちからしても、先頭がマグラス大佐の方が安心できるだろう。
潜水艦を島に移動せさせるのは当然、島にいる人たちを最大限に警戒させてしまったけど。マグラス大佐がどうにかしてくれた。
「本当に調査に同行しなくてよろしいんですか?」
「そうですね。俺が行っても特に役に立たないでしょうし。外でゆっくりしていますよ」
潜水艦の中に入ったところで何をすればいいのか分からないし。部外者の俺がいるとやりにくいことだってあるだろうきっと。
「分かりました。それでしたら1名兵士をおいていきますので、なにかあればその兵士にお伝えください」
アイ〇ンマンの強化外骨格アーマー様なものを来た兵士たちが鹵獲した潜水艦の中に突入して行った。
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sideマグラス
「自分が氷漬けにされたと気づくまもなく、一瞬で氷漬けにされたんだろうな」
鹵獲した潜水艦を進みながら氷漬けになった船員を見てそう呟いた。
「氷漬けになってると言うのに、驚いた顔をしていたり恐怖したりしてないですもんね」
船員達は自分たちが氷漬けになっていると言うのにいつも通り普通の顔をしている。
意識がある状態で徐々に氷漬けにされた場合はもっとパニックになってそれが表情に出るはずだ。
その事から、認識するまもなく一瞬で氷漬けにされたと判断した。
「一体何者何でしょうねあの人達。海の民なのは間違い無いんでしょうけど。こんな規格外の海の民なんて会ったことないですよ」
「私もあれ程魔法を使いこなす海の民は初めてだ」
自分たち陸上で生活する人間と違って、魔力を消費して魔法と言う奇跡を起こせる海で暮らす人間である海の民。
海の民には大きく分けると陸と一切関わらない勢力と陸と積極的に関わる勢力のふたつになる。当然、陸と関わらないと言う勢力の海の民には出会ったことは無いが。
今まで会ってきた海の民にはあれ程の魔法を使う人物は存在しなかった。
「そう言えば、同じ海の民とさえ交流を持たないけど。自由自在に魔法を操る海の民がいるって酒場に来ていた海の民が言っていましたよ。詳しいことは聞けませんでしたけど」
部下が酒場で聞いた話がホントならそうかもしれない。
「結局、あの2人が何者なのか分かったところで、何かが変わる訳でもない。重要なのは2人を絶対に怒らせては行けないという事だ。この潜水艦の船員と同じ末路を辿りたくなければ」
直接魔法を使うところを見たのはまだ1人だけだが、2人とも戦えると思っていた方がいいだろう。
全員潜水艦に侵入してから1番真剣な表情をしながら顔を縦に振った。
「少し話した感じ理不尽な要求をしてくるような人ではない。普通に接していれば怒らせることは無いだろう」
普通に話しているだけなら、陸に興味がある若い海の民と言った感じだった。
「それにしてもなんで帝国の奴らこんな場所に最新鋭の潜水艦で来たんでしょうね?」
「もしかしたら、この周辺は旧ライン帝国の領土だと目星をつけたのかもしれない」
今から5000年も昔に水面の異常上昇によって滅びた優れた技術を持った太古の帝国。
資料諸共全て海のそこに沈んでしまった為、何処にライン帝国が存在したのかはっきりとした位置は特定されていなかった。
だが今回、この場所の近海で魔導車が見つかり。他にもまだ海底に沈んでいると彼が言っていた。
旧ライン帝国はこの辺りに存在したのかも知れず。その情報を何処からか真・ライン帝国が入手した。
真・ライン帝国はその調査のためにこの海域まで侵入してきたのではないか。
もし、この予想が当たっているとしたら。
厄介なことに巻き込まれてしまったなと心の中でため息をついた。
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