精霊王のお仕事

第1話

「精霊界の海で見たことない食材を確保するって言うのも悪くはないんだけど。なんか違うんだよな〜」


麦チョコの試食が終わったあと、メルと一緒にメルの実の兄でもある獣王にコハクの顔を見せに行ったり。そのついでにウイスキーボンボンの作り方(中のお酒はブランデーにすることになったので実際にはブランデーボンボン)を教えたり。獣王国で数日過ごした。


そして、次のデートはイスカの番ということでどこで何をしようかと話し合っているんだけど。それが中々決まらない。場所が海と言うのはすぐに決まったんだけど、何をするかが決まらない。

色々案は出したけれどどれもしっくり来ない。


「デートの計画を立ててるところ申し訳ないんだけど。ちょっとお仕事のお願いしてもいい?」


イスカと2人であーでもないこーでもないと話し合っているとフェムトが申し訳なさそうにしながら現れた。


それにしても仕事って珍しいね。

一応、精霊神であるフェムトの直属の部下の1人だからね。フェムトから仕事のおねがいされる事なんてあんまりないけど。


「ちなみにどんな仕事?」


「なんか最近、コウが拉致られたところとはまた別の異世界が、この世界に干渉しようとして来てるんだよね。今はまだ何も被害が出てないけど。このまま放置しておくと、コウみたいに拉致られる人が出てくるかもしれない。それどころかこっちの世界に侵略してくる可能性もゼロじゃないし。だから先にコウを干渉してきてる異世界に送り込んで、干渉してきている集団を確認してもらって、ヤバそうだったら殲滅して来て貰おうかなと」


思ったより重要な仕事だった。

そもそも異世界からの干渉なんてこんな頻繁にある事なの?


「本来はそんな事ないんだけどね。異世界に神が強引にこの世界に侵入してきたせいで世界を保護している結界が弱くなっているから外からの干渉を受けやすくなっちゃってるの」


そりゃあまた厄介な。放置して知り合いが拉致られたりしたら嫌だし。イスカには悪いけど、ちょっと異世界に行ってきますか。


「あっそうだ!異世界に行くのはいいんだけど。前回みたいに数日しか経ってないのにこっちでは半年経ってたとかそんな事、起きたりしない?」


「今回は逆だから心配しなくていいよ。コウが異世界で1年暮らしても、こっちでは1日しか経たないから」


それは朗報なのか?1年も皆と会えないの俺嫌だよ?


「ちなみにどんな感じの異世界なの?」


まぁ、俺がすぐに解決すればいいだけだしと気を持ち直して、フェムトに行くことになる異世界について説明を受ける。


「僕は勝手にアクアってその異世界のことを読んでるんだけど。9割が海の異世界。昔はそんな事無かったっぽいんだけど。何かが原因で海面が上昇、地上のほとんどが水没。少ない陸地で人間種が暮らしているってところかな?因みに植物が育つ場所は更に少なくて、基本海産物が主食。そんな世界だから当然だけど、船の技術が凄く発展してる」


俺が勇者召喚で拉致られた異世界はこの世界と細かい違いは沢山あったけど。大きな違いはあまりなかったけど。今から行くアクアは何から何まで違った感じがしてちょっとワクワクしてきた。


「フェムト様そのアクアに私も同行することは可能ですか?そんなに海が広いなら私も役にたちそうですし。案外デートをするのにもいいかもしれないですし」


確かに1人だと寂しいし。リバイアサンのイスカが一緒なら心強いけど。


「あまり人数を送り込んじゃうとアクアからの干渉を強めてしまう可能性も有るけど。2人なら問題ないか。じゃあ、コウとイスカ2人で行ってもらう事にしよう」


こうして異世界アクアに調査に行くことが決まって、行くなら早い方がいいとさっさと準備を済ませて、フェムトの転移で異世界アクアへと旅だった。


(もしもーし、聞こえてますかー)


(ちゃんと聞こえてるよ)


アクアに着いてからすぐにフェムトから念話が届いたので念話に返事をする。


(バッチリ念話も繋がるみたいだね。なにか気になることがあったら念話してね)


ちゃんと念話が繋がることを確認し終わったので念話は終了して、今度は周りの景色を確認する。


「無人島に転移させるとは言われてたけど。土と砂、岩以外見事に何もないね」


植物が育つ場所はほんとにひと握りしかなくそのせいで地上に魔物を含め生き物はほとんど居ない。人間種を除いてとは聞いてたけど。ほんとに地上には生き物の反応が全くない。水中は賑やかみたいだけど。


「今のところ警戒する必要が無さそうなのは良いですけど、殺風景でなんだか寂しいですね。水中はそれなりに魚、それと魔物らしき生き物がいました。沖に向かって100mも進むと一気に水深が深くなってる感じですね。潜って調査はしなかったので正確な水深は分かりません」


海に偵察に出ていたイスカが帰ってきた。

島から100m程はなだらかな砂地で、そこを超えると崖のようになっていて一気に水深が深くなるらしい。


海も気になるけど。まずは最低限の生活基盤を整えちゃいますか。




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読んでいただきありがとうございます。





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