第11話
一日で最上位レベルの魔物に何体も遭遇するという滅多に無いことを経験した次の日。
午前中はゆっくりして、午後からはセラスが完成したというサブダンジョンにテスターとしてメルと2人で訪れていた。
「ダンジョンの入口が2つ並んでるって光景。ここ以外じゃ見れないだろうね」
新しく作られたサブダンジョンの入口は元々ある鉱石系の魔物が出るダンジョンの真横に作られていたので、ダンジョンの入口が2つ綺麗に並んでいるというちょっと異質なことになっている。
キュアノス島にダンジョンを作る場合あんまり色んな場所に作られると、人の活動範囲を広げる必要が出てきちゃうから、こっちの方が助かるのは助かるんだけど。
俺がダンジョン関係者と知り合いですよって言ってるようなもんじゃない?この配置は。
それで何か言ってきたとしても、不満が有るなら来なければいいで終わりだけど
ダンジョンを研究してる学者とかは合わせて欲しいってしつこそう。
「まぁ、驚かれるとは思いますけど、精霊王だしって勝手に納得してくれるんじゃ無いですか」
そうやって勝手に納得してくれるのが確かに1番だけど…。
寧ろ、俺って精霊王だしって自分から発言していくのもありか?
「ちょっといつまでも入口で突っ立ってないで、早く中に入ってきなさいよ!」
いつまでも入口で話をしていた俺たちに痺れを切らして、ダンジョンマスターのセラスがダンジョンから出てきた。
「ダンジョンの入口が2個固まってあるなんて初めてだったから」
「重要なのは中身よ中身。ほら、特別に私が案内してあげるんだから、早く中に行くわよ」
自分の作ったものを他人にみせて自慢したいんだなって感じがひしひしと伝わってくる。
入口に突っ立ってたって何も起きないのは確かだし。セラスがどんなダンジョンを作ったのかじっくり拝見させてもらいますか。
「今のところは普通の平原だね」
セラスの先導でダンジョンの中を歩くコウとメル。
フィールド的にはなんの変哲も無いただの平原。
多少土を踏み固められた道が存在するので、そこを歩いている。
「なんか芸が細かいね。わざわ馬車の通った後が再現されてたり」
道には綺麗な直線が二本で来ていて、それはおそらく馬車が通ったことで出来る轍だろうと推測できる。
「しかも中々立派な馬が馬車を引いていそうですね」
地面には轍だけでなく馬の足跡もしっかり残っていて、足跡のサイズからばんえい馬のようながっしりしたガタイの馬だと予想出来る。
「コウさん。どうやらただの雰囲気作りでは無く。このダンジョン実際に馬車が走っているみたいですよ」
メルが猫耳をピコピコさせながらそう言った。俺にはまだ聞こえないけど馬車の走る音がメルには聞こえたという事だろう。
「ダンジョンのギミックとして馬車が走ってる?」
「まぁ、そう言う事よ。ランダムで荷馬車が走ってて。護衛と馬を倒せば荷馬車の荷物をゲットて言うギミックよ。確率は低めに設定してるから、出会ったら結構ラッキーって感じなんだけど。今回は感想を聞きたいから特別に私が出現させたわ」
なるほど。ほかのダンジョンにはない新しいギミックだとは思うけど。なんかこっちが盗賊をしている気分。
「ギミックだからですか。馬車の速度がもの凄く早いです。もちろん馬車にしてはですけど」
普通だったら積荷がぐちゃぐちゃになってるだろう速度でこちらに向かってきているらしい。
ダンジョンのギミックだと割り切って倒すか。
少しすると、でかくてムキムキで蹴られたら重症じゃすまなそうな馬とその馬が引く荷馬車が見えてきた。荷馬車は四輪で低い囲いがあるだけの単純なものだ。
荷馬車には弓を持ったゴブリンが4体乗っている。当然御者も居るので全部で五体のゴブリンがいることになる。
「どう考えても馬の方が強そう」
確かに馬車から外して馬が戦った方がゴブリンが戦うより強そう。
「さっきから荷馬車ががったんがったん飛び跳ねてるけど。荷物大丈夫なのあれ?」
あんなにがったんがったんなってたら荷物はぐちゃぐちゃになってそうだし、いくらか途中で落としてきてるんじゃないの?
後、地味にあんな酷使させてるのに壊れない荷馬車もすごいと思う。
収納魔法で荷馬車ごと持って帰ろうかな。
「そこら辺も考えてあるわ。ゴブリンと馬を倒すと、報酬として荷馬車に荷物が現れるから、ちゃんと綺麗な荷物が手に入るようになってるわよ」
じゃあ、今のところあの荷馬車は荷物を何ひとつ積んでないって事か。
じゃああのゴブリン達はただの走り屋?
「それと、荷馬車の破損具合で報酬として手に入る荷物の量は増減するから気をつけて」
そう言う設定になってるのか。
今更、ゴブリンとちょっとガタイがいい程度の馬に苦戦なんてするはずないので、サックり倒してどんな報酬なのか荷馬車に注目する。
「あっ。このダンジョンは倒すと消えて素材に一部がドロップするタイプなのか」
荷馬車の報酬を見てから馬とゴブリンの処理をしようと思っていたら、光粒子になって消えてしまった。その場所に馬肉とゴブリンの腰蓑や牙が落ちている。
馬肉は貰うとしてゴブリンのドロップは要らないな。
ササッと馬肉だけ収納魔法にしまって荷馬車の中身を確認しに向かった。
読んでいただきありがとうございます。
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