第9話
「霧は治まったけど、これで迷わず進めるようになったかな?」
霧がかかっている時には出来なかった魔力を使った感知が出来るようになっているから恐らく問題はないと思うけど。
「実際に歩いてみるのが早いでしょね。まずは設置して行った氷像に沿って歩いてみましょう。そうすれば私たちが霧の中をどう歩いていたのか分かりますし」
確かに霧の中でどう移動してたのかは気になるな。
「反時計回りに綺麗に1周してたな。こんな歩き方してたのに真っ直ぐ進んでるつもりだったって、あの霧の効果えげつないな」
設置した氷像に沿って歩いてみると反時計回りに綺麗に1周してスタート地点に戻ってきた。それなのに真っ直ぐ進んでるつもりだったんだから本当に恐ろしい能力だ。
今まで戦った魔物で1番厄介な能力だったんじゃないか?
カメレオン本体も30cmぐらいしかなくて更に探すのを困難にしてたし。
襲いかかってきた分身は普通に3mぐらいあったから本体もそれぐらいあるのかな?って勝手に思ってたから、まさかあんなに小さいとは思ってなかった。
「ですが霧が晴れてから、その事実に気づけたという事は、原因はやっぱり霧だったということでしょう。なら、もう歩いて元の場所に帰ってきてしまうという事も無いはずです」
ちゃんと真っ直ぐ進んでるつもりだったのに実際は反時計回りに1周していたって認識出来てるんだしそうだろうね。
「もう迷わないだろうって言うのは俺も同意見なんだけど。今度はまた別の問題が起きてそうなんだよね。ほら、あれとか」
そう言って、身体中からキノコを生やしている魔物の集団に指を指す。
ただ、身体中からキノコを生やしている魔物で終わるなら良いんだけど。明らかに色々な魔物がいるのに戦闘が起きるどころか仲間として一緒に行動しているんだから明らかに異常事態だろう。
魔物はテイムや使役をされていない限り同種同士ならまだしも何種類も魔物が集まって群れを作ることは無いはずだ。
それに霧が晴れて湿度が少し下がったからか胞子を撒き散らし始めているキノコがいくつかあるのが非常に気になる。
あのキノコの胞子を吸い込むと、あのキノコが生えている魔物みたいになってしまうのだろうか?
「異質なのは明らかですよね。コウさんの言う通り胞子を出し始めたキノコが関係してる可能性は高そうです。対策としてエリクサー化した燻製肉を定期的に食べるのは勿論。
コウさんに私達の周りだけでも湿度をあげる事でも防げるかもしれないですね。霧が胞子の放出を防いでいたっぽいですし」
燻製肉を食べてれば大丈夫だろうけど念には念をいれてってことだな。
霧を作り出してさっきみたいに視界が悪くなりすぎるのも問題なので、そこら辺を調整しながら霧で辺りを包み込んでいく。
「目に見える胞子の放出は止まったみたいだな」
霧が広がると、霧が晴れてからはモアモアと白い煙のように胞子を放出していたキノコから胞子の放出が止まった。
目に見えないサイズのものが放出されている可能性もあるから、油断は出来ないけど。
「これで対策は良いとして、コウさんどうしますか?あのキノコの生えた魔物にちょっかい出して見ます?」
キノコに寄生された状態なのか。種類もバラバラなのに1箇所に集まり。まるで護衛するかのようにキノコを囲んでいる。
ちなみにキノコは赤色に白い水玉模様で食べたら大きくなりそうな見た目をしている。
「地球には地中にいる昆虫に寄生するタイプのキノコが薬に使えた、とか聞いた事あるし、魔物から生えてるキノコも薬に使えるかも?とか思うけど。一体に手を出せば全員襲ってくるよね多分」
冬虫夏草と呼ばれるキノコの仲間が薬膳に使われたり、薬として使われることがある。
生き物に寄生するという部分しか同じところはないけど、もしかしたらと思った。
ただ、ちょっと気になるからと1度手を出せばキノコに寄生されてしまった魔物全部と戦っことになりそうなので少し迷う。
「別にいっぺんに相手をしても苦戦なんてしないんですから、気になるなら倒しちゃえば良いと思いますよ?」
倒して使い道が何も無かったらゴミになっちゃうしって思ってたけど。何かしら使い道もあるだろうきっと。
考えてる時間が勿体ないなとサックりキノコに寄生された魔物を倒して収納魔法にしまった。
元凶であるキノコはどうしようかな?と地面から生えてるキノコに視線を向けるが。
カメレオンの魔物が霧を作り出している時に何本か採集してたのを思い出して、今回はそのまま放置した。
「地面がだんだん泥っぽくなってきてるね」
ジメジメしている森を抜けるために真っ直ぐ歩いているとだんだん木が少なくなっていき地面もぬかるみ始めた。
「そうですね。あんなに沢山生えていたキノコも全く見なくなりましたし、また新しいものが見つかりそうですね」
この先が沼地や沼になってるなら蓮根とか取れるかも。蓮根のはさみ揚げとか食べたくなってきたなと思いつつ、先に進んだ。
読んでいただきありがとうございます。
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