第8話
「結構凄い色をしていますけど。この木の樹液も使い道があるんですか?」
乳白色をしている樹液を見ながらメルが質問してくる。
「俺が考えているものと同じなら、天然樹脂塗料や接着剤になる」
「流石に食べ物では無いんですね」
メルは俺が採集しだしたから、食べれるのかと思ったらしい。確かに俺が採集するものは食べれるものが多いけど。それ以外もちゃんと採集してるよ?
こればっかりはイメージが定着してそうだし諦めて受け入れよう。
披露宴を開いた時のお祝いの品も食べ物が多かったし。
毒とかを嫌って貴族の贈り物は食べ物とか渡さないのかな?って勝手に思ってたけど。
そこまで殺伐としているわけじゃないし、毒を調べられる魔道具も数は少ないけど存在するらしく。そう言ったもので事前に調べてから贈るらしい。
まぁ、人間界で手に入る毒で俺がダメージを受けるレベルの物なんて早々ないので、そこまで気にしてないけど。
毒だけじゃなくて人間に害を与える物質全般に反応する完全上位互換な魔道具をアイが作り出しちゃってる訳だけど。売りに出した方がいいかな?これがあれば暗殺とか減りそうだし。
ただ、毒とかを感知するだけであって悪用も出来なさそうだし。
「どうしたんですか?またボーッとして。
もしかしてなにかの状態異常にかかってたりします?」
ただ考え事してただけなんだけど。この場所に来てから考え事して固まる回数が多かったからか、なにか状態異常に掛かってるんじゃないか?と心配されてしまった。
「ただ、この魔道具なら売ってもあんまり問題にならないかなって考えてただけ」
ただ、もしほんとに何かしらの状態異常を貰っていたら嫌なのでエリクサー化した燻製肉をモグモグしておく。
状態異常にならないように対策はしてるけど。それをすり抜けてくる可能性もゼロじゃないし、過剰ぐらいが丁度いいだろう。
「確かに喜ばれるでしょうし。この魔道具で被害を受けるのは暗殺者ぐらいでしょうから。大きな問題も起きないと思いますけど。毒を調べられる魔道具でさえダンジョン産しか存在せず。人の手では作れなかったんですよ?売ると言っても王族でも買えるかどうか…」
あ〜そっか。そりゃ無理だ。
「アイさんに頼んで普通の錬金術師でも作れるぐらいの性能の物を作って貰って、その設計図を錬金術師ギルドに売りつけるのが1番いいんと思います」
この世界にも著察権的なものが存在するらしい。特に錬金術に関しては。
新しい魔道具の設計図を錬金術師ギルドに売りつけると販売から30年間マージンが貰えるらしい。
「よく良く考えれば、錬金術の腕前以外にも素材によっては無理ゲーになっちゃうし。どんな素材を使ってるかもアイに確認しなきゃダメか」
うちの場合ランクEXの魔物の素材でも自由に使えちゃうし。
せめてAランクの魔物の素材ぐらいで作れないと素材集めるだけで莫大なお金が必要になっちゃう。
「それもそうですね。ところで、私たち真っ直ぐに進んでいたはずですよね?」
「俺の感覚では真っ直ぐ進んでたはずだけど…」
漆の採集が終わってから、一定間隔で氷像を設置しながら真っ直ぐ進んでいた筈なのに、最初に設置したはずの氷像が目の前にある。
「方向感覚を鈍らせる効果がこの霧か土地自体にあるとか?」
孔明の石兵八陣的な。
「困りましたね…。本格的に迷う前にコウさんの転移で帰りますか?」
探索始めるまえだったら、俺も帰ろうってなったと思うんだけど。途中で諦めるのはちょっと悔しいんだよね。また挑戦しに来れるならまだしも、今の状態だとまたここに来れるか微妙だし。
辺り一帯を水に沈めちゃえば場所の把握も出来るかな?
割と物騒な事を考えていると突然殺気を感じる。咄嗟に殺気を感じた方に氷の槍を飛ばすと一瞬氷の槍に貫かれて頭に大穴が開いたトカゲみたいな魔物が姿を現したが、すぐに霧になって消えてしまった。
「魔力を使った感知が出来ないからって。あんな近くに来るまで気付けなかったなんて…」
しかも、こちらを攻撃しようと殺気を出すまで気付けなかったからな。
中々に厄介な魔物に目を付けられてしまったようだ。
さっきのは恐らく分身みたいなもので魔物本体はまだ健在だろうし。
「この霧を発生させてるのもその魔物かもしれないし。倒せばここから歩いて出れるようになるかもしれないし」
「可能性的には有り得そうな話ですが。まともに進むのも難しい現状で魔物の本体を探すのは難しいんじゃ無いですか?」
真っ直ぐ進んでるつもりなのにスタート地点に戻ってきちゃうような状態だからな。
分身で攻撃も出来るし魔物の本体は近くにはいないだろうから探すとなったら確かに難しいだろう。
「俺もそう思う。だから探すのは諦めて。ゴリ押しで行こうと思う」
そう言って半径10kmの範囲を一瞬で水没させる。
水の中なら霧とか関係ないので魔力を使った探知でさっきの分身に似た魔物を探す。
「結構ほかの魔物も巻き込んじゃってるな。魔物だしすぐには死なないだろうけど。出来るだけ早く終わらせないと」
魔力を使った感知が出来るようになって思った以上に周りに魔物がいた事に驚きながらカメレオンを探していると。
魔物が密集しているところにちっちゃいけど分身のカメレオンにそっくりの魔物を見つけた。
見つけた瞬間、その魔物だけ凍らせてから水を消して戻りにする。
「やっぱり霧はこいつが原因だったみたいだね」
ジメッとして薄暗い雰囲気は変わらないけど。霧が晴れていた。
読んでいただきありがとうございます。
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