第5話

「これは…」


メルと2人で遊覧飛行をしながら変わった場所を探していた訳だが、なんの前触れもなく景色が一変した。


「薔薇の生垣迷路ですか?」


メルの言う通り地上には薔薇が沢山生えていて、壁になっている。迷路の様に道が生えているので確かに薔薇でできた生垣迷路みたいだ。


「まさか、フェムトの言う通り薔薇の女王の亜空間に迷い込むとは…。ひとまず飛んだままだと薔薇の女王に敵対されるから地面に降りよう。フェムトの話じゃルールを守れば薔薇の女王と敵対する事は無いらしいから」


メルに説明するのも重要だけど。先ずは薔薇の女王の機嫌を損ねない事が重要だ。

フェムトからも薔薇の女王は魔物だけど倒しちゃだめって言われてるし、そう言った理由もあって敵対すると面倒だ。


「コウさんは今こうなってる原因が知ってるんですね?」


「フェムトから聞いた事があっただけで、遭遇するのは初めてだけど。この場所は薔薇の女王と呼ばれる薔薇のドライアドが生み出して生活している亜空間。いくつか決まり事がこの亜空間にはあってそれを破らなければ、薔薇の女王とその眷族と敵対することはない。ただ、1度亜空間に入り込んでしまうとさっき見えた薔薇の生垣迷路を攻略しないと外に出られないんだよね」


ドライアドと言うと木の精霊というイメージが強いけど。この世界では、人型で木や草などの自然を操る魔物のことをドライアドと言うらしい。幻獣種のドライアドは存在しないけど、薔薇の女王が幻獣種に1番近い存在だとフェムトが言っていた。


薔薇の女王の亜空間へ入る入口は1箇所に留まる事無く、短いスパンで場所を変える。

なので、遭遇しようと思って遭遇するのはすごく難しい。出会えたらラッキーぐらいの存在。


そして、薔薇の生垣迷路を不正をせずに突破すれば最後に薔薇の女王が直々に賞品をくれるらしい。


薔薇の生垣迷路もルールを破らなければ致死性のあるようなトラップは存在せず。

また、薔薇の女王自体。自分から襲いかかるという事もしないので、もしあったとしても倒しちゃダメだよとフェムトから教えられていた。


「とにかく、薔薇の女王の暇つぶしに付き合ってあげて、正攻法で薔薇の生垣迷路を突破すればこの空間から出られるし。何かお土産も貰えると?」


簡単に言うとメルの言う通りだけど、それだけ聞くと薔薇の女王が暇つぶしに人を拉致って自分の作った迷路を攻略するさまを観察して楽しんでる。ちょっとヤバいやつに見えてくる。

あれ?でも実際そうなのか?


「それで、守らなきゃ行けないって言うルールってどんなのなんですか?」


「火を使わない。飛ばない。生垣を壊そうとしない。ちなみに俺の転移でこの空間から出ることは出来るけど。この空間に転移を使って戻ってくることは出来ないし。もし、次来ることがあったら最初から敵対されることになる。まぁフェムトいわく薔薇の女王からしたら、迷路というより薔薇の庭園らしくて、その庭園の出来を見てもらいたいから、知性のある存在を自分の亜空間に招き入れてるらしくて迷路も2、3時間も歩いてれば突破出来る簡単なものらしいよ?」


簡単に言うと薔薇の女王は自分に庭を自慢したいだけの貴婦人。


「つまり薔薇の女王は自分の趣味を他人に見せびらかしたいだけの魔物?」


「まぁ、そうなるね。でも、最後に貰えるお土産は結構人気が有るみたいよ」


フェムトいわく蜂蜜が貰えるらしい。

薔薇の蜂蜜って地球でも高かったイメージあるし、ちょっと気になっていはいたんだよね。


特に物騒な事にはならない筈だし。薔薇でできたアーチ状のゲートを潜り薔薇の生垣改め薔薇の庭園に足を踏み入れた。


「ところどころ普通の薔薇じゃなくて魔物も混じってますけど。今まで見てきた庭園の中で1番綺麗な庭園です」


よく見てると偶に蔦が動いてたりするけど。襲ってくることはない。今も褒められて照れてるみたいにクネクネしてる薔薇が目の前にいる。

それと、少し前から身長50cmぐらいの蔦が纏まってできたゴーレムが道案内をしてくれているので迷うことはなさそうだ。


おそらく薔薇の女王が眷族を道案内につけてくれたという事だろう。


蔦のゴーレムに案内されながら何百という種類の薔薇を楽しみながら1時間半ぐらいで、出口が見えてくる。


「あっという間でしたね。何度もきたくなるような素晴らしい庭園でした」


正直、半分を経過したあたりで庭園自体には俺は飽き始めてたけど。女の子のメルは最後までしっかり楽しめたらしい。


入口にあったアーチと同じようなものをくぐると、湖が広がっていて壁のない八角形の建物が建っていた。確かガゼボとか言うんだっけ?


ちなみに建物の中には赤い長髪で紅いドレスを身にまとった女性が待っている。

間違いなく彼女が薔薇の女王と呼ばれるドライアドだろう。


「彼女が薔薇の女王…中々のオーラですね」


これだけの亜空間を創造して維持できる実力者だから、それなりのオーラを発している。

それこそさっきであったベヒーモス(カバ)なんて比べるのも可哀想になるぐらいの存在感だ。






読んでいただきありがとうございます。

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