第6話

「オーラと言っても水の精霊王様に比べれば私なんて赤ちゃんみたいなものです。

私が皆に薔薇の女王と呼ばれているドライアドです」


ガゼボに近づくと、薔薇の女王がこちらに出てきて優雅な挨拶で出迎えてくれた。


「水の精霊王のコウです」


「妻のメルです。素晴らしい庭園にお招きいただきありがとうございます」


あっやっぱり庭園について触れておいた方が良かった?

でも、そこら辺は下手に俺が触れるよりよりメルが触れた方が上手くやってくれるだろう。王族だし、俺より庭園を楽しんでたし。


「私が1から作り上げた庭園を楽しんでいただけたようで良かったです。

それにしても、久々にベヒーモスが現れたので糞を肥料替わりに貰おうと入口を移動させたら水の精霊王なんて大物が迷い込んできて驚きました。敵対なんてされたら勝ち目なんてないですし」


ベヒーモス(カバ)の糞は超強力な肥料だったな。ドライアドからしたら凄いご馳走ってことか。

だから、ベヒーモス(カバ)の糞を取りに行こうと思ってこの亜空間への入口を移動させたら偶然その近くに俺たちがいたわけだ。


「普通だったら。亜空間を創造して維持できる魔物なんて警戒するし。倒しておこうって思うけど。ここに関しては事前にフェムトから聞いてたから」


フェムトも前情報なしで薔薇の女王と遭遇したら無駄な戦闘が起きることになるってわかってるから、事前に教えてくれたんだろうし。


「なるほど、フェムト様が」


その後はガゼボでお茶を飲みながらどの薔薇が綺麗だったとかそんな感じの話でメルと薔薇の女王が盛り上がっていた。

その間、俺が薔薇の女王の庇護を受けている

30cmぐらいあるミツバチの魔物と戯れていた。

30センチもあると、普通の花から蜜を集めるの大変じゃ無いのかな?って思ったけど、

すごい器用に蜜を集めるところを実際に見せてもらった。


「お土産をこんなに沢山ありがとうございます」


薔薇の花びらやさっきのミツバチが薔薇だけから集めて作った蜂蜜。この空間には薔薇の女王以外にもドライアドがいるらしく。

果物も沢山貰った。ザクロとかビワとかまだ見たこと無かった果物も手に入って大満足。


「フェムト様に頼めばここもいつでも来られるはずなので、また来てください」


あの方は偶にふらっと来て果物を貰って何もなかったかのように帰っていきますから。


フェムトやりたい放題だな。


「今度はみんなを連れてまた来ます」


薔薇の女王が作り出した亜空間からの出口をくぐった。



ーーーーーー



「綺麗なところでした。疲れを癒すには最高の場所です」


確かに綺麗なところだったけど個人的には波の音を聞いてる方が癒される。

これは水の精霊だからとかではなく。日本にいた時から毎週釣りに行くぐらい釣りと海が好きだったからだろう。


「まぁ、綺麗なところだったけど。ここ何処?」


てっきり入った場所と同じところに出してくれると思ってたのに。出てきた場所は深い霧がかかっていて1m先ぐらいしか視認できない場所だった。

魔力も阻害されてるのか上手く感知出来ない。

なのでいつもみたいに魔物の感知が出来ないので、もしかしなくても結構危険な状況だったりする。


「転移は普通に出来るんですよね?」


「普段よりちょっと魔力を使う気がするけど問題ないよ」


基本、門を作り出してその門をくぐって転移する感じだから転移する前に転移先の確認も出来るし。

門無しの転移も出来るんだけど、しっかり転移先のことを思い浮かべなきゃ行けないし。

石の中にいるとか起きない訳じゃないので、門無しの転移は目視出来る距離でしか使ってない。


「なら、折角ですし少し歩いて見ませんか?ここでしか無いものもあるかもしれません」


確かに1m先しか見えてない状況だけど。霧がかかってジメジメしてるからか。やたらにキノコが生えているのが確認できる。

見たこともないキノコも沢山生えてるし気にはなる。

でも、毒の胞子を振りまくキノコとかありそうでちょっと不安。

歩いてるだけで状態異常になったシャレにならないし。


「アイさんお手製の人間に害のある物に反応する魔道具も持ってきてますし大丈夫です」


それなら大丈夫かな?問題は超即効性の毒とかで魔道具が反応した時点でもう手遅れとかも可能性ありそうなんだよな。

それでもメルは探索したそうにしてるし。

どうしようかな?と考えているとふと思い出した。


「これ食っておけば、状態異常は心配なくなるはず」


そう言ってチップに世界樹の枝を使った結果エリクサーになってしまった燻製を取り出した。

部位欠損を治したり、どんな状態異常でも治してくれる。最強の燻製だけど。それだけじゃなくて燻製された素材によって持続時間が変わる。

ただの豚肉のベーコンを燻製にした場合、食べた瞬間なら部位欠損も状態異常も回復できるけど。その後怪我したとしても当然それは治してくれない。

ただ、クジャタやシズと言ったレア度の高い物を使うと効果がある程度の時間持続する。

なので、予めエリクサー化したクジャタのベーコンの燻製を食べておけば、もし状態異常になってもすぐに治るはず。という作戦だ。


できた当初はやべぇもん作っちゃったなって思ったけど。やっぱり作っておいて正解だったな。







読んでいただきありがとうございます。




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