第3話
「これただのマングローブ林じゃなくて偶にトレントが混じってるね」
個人用だったもうじゅうぶんな量の炭酸水を確保できたけど、キュアノス島に来る幻獣種たちも炭酸水を使った飲み物飲みたいだろうし、それなりの量を採集していると。
マングローブ林にちょくちょくトレントが混じっていることに気づく。
ただこちらに攻撃してくることは無いのでひとまず放置だ。
「と言ってもこんなに近づいても攻撃してこないですね。普通のトレントなら枝や根っこを使って攻撃してきてる距離ですが」
普通に手で触れる距離に立っても特に何もしてこない。俺たちがトレントって勘違いしてるだけなんじゃ?って疑いたくなるレベルだ。
さすがに触ったら敵対されそうなので直接触ったりはしてないけど。
「どうやら。水中の狩りに夢中だから私達に興味が無い見たいですね」
トレントを観察していたメルが水中を見ながらそう言うので水中を見てみると。
マングローブの姿をしているトレントの根が水中にいる魔物や生き物に突き刺し養分を吸収していた。
水上の部分ばっかり見てたから気づかなかったけど。水中は凄いことになっていたみたいだ。
見ている間にもワニに根が突き刺さり一瞬でしわしわになっていた。
「俺らまで餌認定されると面倒そうだし。早くここから離れよう」
炭酸水になるマングローブの樹液もじゅうぶんとったし。
トレントの興味がこちらに移る前にその場を離れて、マングローブ林の奥に向かって景色を楽しみながら進んでいく。
既に水深は10センチ有るか無いかぐらいで普通に歩くことも出来るけど、砂の中に魔物が隠れていそうなので念の為に水面の上を歩いている。
「砂に小さな穴がいくつも開いてるし、何かが砂の中にいるのは確定だな」
懸念通り何かしら砂の中に居るみたいだ。
魔物の反応は無いし普通の生き物みたいだけど、偶になんで魔物じゃないのって生き物もいるし油断は禁物。
普通にシジミとか貝類だとは思うけど。
貝類は食べれない事はないけど好きでも無いので、わざわざ掘り返して確認はしない。
「でも、これだけマングローブが生えてて水深もこれだけしかなかったら、大きな魔物と遭遇することはなさそうだね」
大きな魔物が通ってマングローブが倒れてるとかそんな場所も見当たらないし。
「コウさんは何でいちいち、そういう事言っちゃうんですか?」
コウさんが言うと出てきちゃうでしょ?とメルが言った瞬間バキバキと言う木の折れる音がマングローブ林に鳴り響く。
鳥や空を飛べる魔物は一斉に飛び立ちここから離れていく。
ほら〜って顔でこっちを見ないでください。
なんで毎回タイミングバッチリなんだろうね?自分でもびっくりだよ。
「しかもそれなりに大物なんだよね。この感じ多分ベヒーモスじゃないかな?」
こっちの世界ではないけど、異世界に拉致された時にそっちの世界のダンジョンで戦ったベヒーモスに魔力の感じが似ている。
「コウさんのお土産にありましたねベヒーモス。燻製肉にすると美味しかったですね。ほかのお肉に比べて量がなくて、もうお肉が無くなっちゃってますし。丁度良かったですね」
メルの中ではもう食材にしか見えてないらしい。
でも、ベヒーモスの肉がもう無いのは確かなので確かにあっちから来てくれたのは運がいい。フェムトいわくベヒーモスは生態系を大きく変化させてしまう暴食の魔物なので、魔力が集まって生まれる可能性も低いし、繁殖力も極端に低くなってるので、いつでもいる魔物じゃないって言われてたし。
都合よくこっちに向かってきてるしここで迎え撃つことにした。
「カバ?」
マングローブをなぎ倒してこちらに向かって来ていた魔物は立派な角が生えたイノシシのような魔物ベヒーモスでは無く、全長15mぐらいの大きなカバだった。
魔力が似ていただけで別の魔物だったようだ。
「それにしては似すぎてるんだけど…ベヒーモス亜種とか?亜種にしては姿が違いすぎる気がするし」
魔物の亜種って元々角がある種類なら角の本数が増えたり、体色が変わったり、使える属性が変わったりで見た目的には大幅に変わることは無かったはずだけど。
角の生えたイノシシからカバはちょっと変わりすぎてる気がする。
「そんな考え事している余裕は無いですよ?ベヒーモスじゃなかっとしても。ベヒーモスレベルの強さを持った魔物なのは確かなんですから」
メルの言う通りカバの魔物はこちらが考え事をしてるから待つと言うつもりは無いらしい。姿勢を低くして足に力を入れているのでそのまま突っ込んでくるつもりみたいだ。
「まじか?」
突っ込んでくる速度が想像以上に早かったのでメルと自分を短距離転移でカバの魔物の突進範囲から退避させる。
「あのカバの魔物の正面で戦うのはやめた方が良さそうだな」
カバの突進したあとがカップアイスをスプーンで掬った跡みたいに綺麗に削れていた。
「まさに口に入るものならなんでも食べる魔物ってわけだ」
こいつは早く倒さないとここら一帯何もない土地にされてしまう。
読んでいただきありがとうございます。
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