精霊界散歩

第1話

「ハイドロエンジンでしたっけ?凄いですねこれ」


披露宴まで残り2ヶ月、準備もほぼ終わってるし何をしようか?と思っていたらダンジョンマスターのセラスと出会いなんだかんだやっているうちに2ヶ月が経過して披露宴は無事に開催された。これを境にみんな家名をフェムトに言われて決めたアスールを名乗るようになった。ステータス画面で表示される家名は既にアスールになってたけど。

わざわざ家名を名乗る場面ってほぼ無いし。


披露宴自体も最低限しか招待してないのでそれほど挨拶で疲れるということもなかった。

王族も沢山来てたけどみんな身内だし。

ただ、ほぼ身内で固めたせいで既婚者も多いし、貴族の人は婚約者がいたりでブーケトスは次に結婚する云々と言うよりかは取った人は精霊から幸運のお裾分けが貰える的な感じに変化していた。

確かに精霊王が始めたことだし。間違ってはないと思うけどね。リースさんを筆頭に風の精霊たちも張り切ってたし。

まぁ、今回に関してはほんとに効果があるはず。俺も数ヶ月で消える程度の弱い祝福を掛けておいたし。


ブーケを取った人がその後どうなったか聞いたりしてないから詳しくは知らないけど。


今は披露宴から半年がたっている。披露宴が終わった後はフランとコハクのめんどうを見たり、魔力玉を正式にドロップ品とするために細かい性能調整をテスターとして手伝ったりをしていた。

フランとコハクのお世話はディアーネさんやお節介焼き神獣達がしてくれるのでほとんどすることなかったけど。


そろそろデートを再開しようと言う話になったので精霊界にあるマングローブ林に来ている。


アイが暇つぶしに作った水流を生み出して推力を発生させるエンジンを積んだ小型の船で移動している。


「障害物がなければ80km/hぐらいは出せるからねこの船。それでもこれ以上この船で進むのは難しそうだし。ここからは水面を歩いて行くか手漕ぎのボートで進むかどっちかだね」


出来るだけ小さい船にしたんだけど、これ以上この船で進むとマングローブにぶつけそうだし。水深的にもそろそろ底を擦っちゃいそうなのでカヌー的なボートを使って移動するか。普通に水面を歩いて移動するか。移動方法を変える必要がある。


「オールを使って進むのは大変そうだし歩いて進みましょう」


メルの手をとり、水面を歩けるように魔法を付与する。


「細かい砂の上を歩いているような感じですね。体術より、こっちの方が戦いやすそうですね」


そう言ってメルはソードビットを取り出して自分の周りに浮遊させた。

結局、ソードビットを1番上手く使いこなしたのはメルだった。攻撃に使ったり、防御に使ったり、足場にしたりほんとに自由自在に使いこなしてた。それだけ動かして自分自身の動きも全然悪くなってなかったし。


今回かけた魔法は水の上を歩くことはできるけど、あんまり強く踏み込むと砂の上みたいに足が沈んじゃうから、確かに体術だけじゃなくて近接戦は避けた方が良いだろう。

水面を凍らせてその上を歩けばその心配は無いんだけど、それだとなんか景色を壊してる気がするので今回は使わなかった。


「それにしても透明度が高いですね。下までくっきり見えます」


海底まで1mも無いけど下までくっきり見える。水中に潜っても30m先までくっきり見えるぐらいの透明度はありそう。

小魚がマングローブの間に沢山いるのがよく見える。


「あれはジュゴン?…いや、マナティだな」


魔力を気にせず垂れ流してたおかげで、特に向かってくる魔物もいなく、安全だったので途中、水中を泳いだりして楽しみながらマングローブ林を進んでいると、マナティが群れで泳いでこちらに向かってくる。確か幻獣種でキュアノス島にも何度か来ていて直接話したこともあったはず。

当然、あったのは陸上でということになるので人化した状態でしか会ったことないから、マナティの状態を見るのは初めてだけど。

どうやら、俺に挨拶をしに来たということだった。

あれだな。アポなしで突然社長が来たから慌てて挨拶に来た的な感じ。

しかも今回は魔物を寄せ付けない為に魔力垂れ流しで歩いてたし、もしかしたら相当びっくりさせてしまったかもしれない。

デートだし。魔物を気にせずゆっくり移動する時間も欲しいなと思ってやったんだけど、ちょっと悪いことしたな。


少し話を聞くとマナティ達はマングローブ林のような汽水域でのんびり暮らしているらしい。

マナティ達は空気を読んで、俺がマナティ達になにかすることはないと分かるとすぐに帰って行った。


そろそろメルが戦闘したいってうずうずしだしたので魔力の放出を抑えて先に進む。

するとマングローブの根の間に隠れていた小魚達が徐々に出てきて水中が騒がしくなる。

この状態も綺麗だけど。このままだと小魚だけじゃなくて魔物もよってきちゃうのが残念なところだ。

精霊界だから油断していると痛い目見ることになるし。

ランクEX。人間種による討伐は基本不可能って言われている魔物が普通にいたりする場所だし。







読んでいただきありがとうございます。






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