第11話
「なんというか嵐が私目掛けて突っ込んできて通り過ぎていったような気分です」
突然来て自分の言いたいことだけ言って帰って行った感じだからまさに天災って感じだったな。
「まぁ、ダンジョンのある場所がちょっと特殊で比較的安全に外に出られるってことでちょっと舞い上がってるんだよね。少しすれば落ち着くと思うから。今度来る時はマシになってると思うよ?」
一瞬また来るんですか?って顔をされてしまったけど。セラスのことだから、精霊門が設置されたら確実にフラフラ遊びに来るようになると思う。
ちなみにセラス以外のダンジョンマスターも割と自由に外の世界を歩き回っているらしい。
ダンジョンにはたまに帰って来て気まぐれで階層を追加したり魔物を増やしたりするぐらいで、ダンジョンより外の世界にいる時間の方が長いと言っていた。
普通逆じゃないの?って思うんだけど…。
冒険者として自分のダンジョンに潜って遊ぶ為のお金稼いだりするダンジョンマスターもいるって聞いてどう反応すればいいのか分からなくなった。
と言ってもダンジョンマスターだとバレないように気を使ったり魔道具で誤魔化したり、結構神経を使うらしい。
バレた場合記憶を消去する魔道具を使う場合もあるとか無いとか…。
それを聞いてダンジョンマスターってほんとに天災なんだなって再確認した。
そんな話をしながら歩いていると恐らく実験農場なんだろうなという場所が見えてくる。
「えっなにあれ?ウツボカズラ?いやでも縮尺おかしくない?」
まだ500メートルぐらい距離がある筈なのにはっきりとウツボカズラの消化液が入っている場所がはっきり見える。
視覚強化をしていないのに。
「どうしたんですか?」
突然顔を引き攣らせて立ち止まったのでレムさんに不思議がられてしまった。
よく良く考えればただデカいだけのウツボカズラなんて大したことないじゃん。
デカいゴキブリとか毛虫とか普通にいる世界だし。
「見るからに異質な植物?が見えたのでちょっとびっくりして」
「あぁ、初めて見たら確かに驚きますよね。あれもれっきとした植物なんですよ。しかも虫や魔物を引き寄せて、ここからでも見える袋みたいな部分に閉じ込めて溶かして吸収してしまうんです。その特徴から虫から農作物を守るのに使ったり、村の防衛装置として使えないかと言われているのですが…魔物創造で作り出して使役している魔物にも効果があって、実用は見送られて実験農場の端に植えられています」
虫だけじゃ無くて魔物の食べるのかよ。食虫植物のレベルを超えてた。
しかも、普通の植物なんだよな?ウツボカズラの姿をした魔物じゃなくて。
「ちなみにあの袋のような部分には消化液が入ってるのですが、熱するとシロップになって大変美味しいです」
ウツボカズラの消化液も飲めるって話を聞いたこと有るけど。魔物も消化できる消化液をよく食用にしようって思ったな。
「でっかいウツボカズラにばっかり目がいってたけど、他の植物も中々に個性的だね」
遠くからでも見えていたウツボカズラばっかりに目がいってたけど、到着すると真っ青なピーマンとかピンクのバナナが実ってたり凄い個性的な植物が沢山あった。
ちなみに真っ青なピーマンは甘くて、ピンクのバナナは鷹の爪を直接食べたみたいに辛かった。
このバナナ皮を向いちゃえば普通のバナナと全く見分けがつかないし、ロシアンルーレットみたいな使い方されそう。
「という感じで、魔界で見つけた面白植物を集めているのがこの農場です」
恐らく魔界にしかないものだろうし、面白いとは思うんだけどね。なんか思ってたのと違う。
「私のイチオシはこれですね」
そう言ってレムさんはこの場所では珍しく普通のレモンを木からもいで渡してきた。
レモンってそのまま食べるものじゃないと思うんだけど…。
これは食べろってことだよね?
酸っぱいのって得意じゃないんだよなって思いながらレモンに齧り付くと体に電流が走った。比喩とかでなくリアルに。
「レモン食べたらビリッとしたんだけど!」
なんだろう。持ったら電気が流れるドッキリビリビリグッツ的な食べ物ってこと?
「このレモンは体験して頂いた通り食べると体に電気が流れるのですが、その時に体の凝りをほぐしたり血流を良くしてくれる効果があります」
後はどんなに眠くても一瞬で目が覚めます。
って言ってるけど、そりゃ体に電気が流れたら誰だって目が覚めるだろう。
でも確かに体が軽くなった感じがする。
寝る前とかに食べちゃったら悲惨だけど。
それさえ気をつければ中々良いものなんじゃないか?
「最初はびっくりしたけど。凄いレモンだね。調理してもこの効果は出るの?」
効果が凄いと言ってもレモンなのでそのまま食べると酸っぱい。せめて蜂蜜漬けぐらいは許して欲しい。
「メインがこのレモンのものなら問題なかったです。ですが脇役程度だと効果が無くなり普通のレモンでした」
ならはちみつレモンだったら行けるかな?
そんなことを考えていると村に魔物と人の集団が近づいてくるのを感知した。
村を出てあたりの探索をしている魔族達が帰ってきたみたいだ。
恐らくエリーゼも帰ってきてるだろう。
そろそろ帰ろうかなって思ってたけど、流石に挨拶ぐらいはしておくか。
読んでいただきありがとうございます。
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