第12話
「コウが来るって分かってれば今日外に行かなかったのに」
途中で村に俺がいることに気づいたらしく、ボスの走る速度をあげて1人だけ先行して村に帰って来た。
「流石ボスだね。それにしてもほかの人達置いて来て良かったの?」
ボスはAランクのオオカミ系の魔物ガルムなので本気を出せばかなりの速度で走れる。
本気とまでは行かないけど、それなりにスピードを出して帰ってきたみたいなので、一緒に周辺の調査をしていた。魔族に人達と使役されている魔物達が置き去りになってしまっている。
「1番の戦力が勝手にいなくなったら不味いんじゃないの?当然狩りやら採集やらの成果も運んでるんでしょ?」
ボスがいなくなったからチャンスと思って襲ってくる魔物とかいるんじゃない?
「アルファたちは残して来たし、もうプロテクトツリーの効果範囲内に入ってるから、残ってる人員で問題無く対処できるよ」
それに、私以外にもしっかり指揮できる人が育ってくれないといつまでたっても調査の範囲を広げられなからねと言った。
魔物創造と言う魔物を創造して使役するスキルを持っているので魔族って大勢を指揮するのが得意な人多いのかなって思ってたんだけど。
そんなことはなく上手く人を動かせるのはエリーゼとレムさんぐらいだった。
自分の使役している魔物を見ながら他の人にも指示を出すってのは確かに大変かもしれない。
エリーゼとレムさん2人が同時に村から居なくなるのは問題だし。それだと安全を考えると1度に1組しか周辺の調査に行けないので調査にもの凄く時間がかかってしまう。
なのでCランクモンスター以上の魔物が嫌う匂いを出しているプロテクトツリーの範囲内で集団を指揮する練習をと言う意味も有るみたいだ。
Cランクより低いランクの魔物しかいない場所でBランクの魔物であるラプトルのアルファたちがいるので失敗しても大した被害は出ないだろう。襲ってきたとしても敵の強さ関係無く襲ってくるゴブリンぐらいだろうし。
「そこまで考えての事だったら俺は何も言わないよ。今日はちょっと色々あって、用事自体は終わったんだけど何をしてたのか説明しておくね」
そう言ってエリーゼに精霊門を近いうちに開通させる話とダンジョンマスターのセラスの話、セラスが作った魔力玉の話を伝えた。
話を聞いている途中エリーゼの頭の上にはてなマークが何個も浮かんでいたけど話が終わるとため息をつかれてしまった。
「ねぇ?コウ。いっぺんに色々起こしすぎ。今、外の調査が全然進まないって愚痴ったばっかなのになんで、また人数が減りそうなこと始めちゃう?しかも魔力玉もレムが貰ったやつなら魔族でもすぐに使えるけど。杖に加工しなきゃ使えなくなっちゃったら、今の魔族にそんな加工できる職人いないから使えないじゃん!」
あ〜そのこと全然考えてなかった。
「ほら、他の種族だって杖を作ったことのある人はいないはずだし。全員同じスタートラインだよ」
この世界に武器としての杖は存在しなかった物だし。
「応用できる技術だっていっぱいあるでしょう。同じスタートラインな訳ないよ」
流石に騙せなかったか。俺が余計なこと言ったせいで手間が増えたわけだから、ちょっと申し訳ない気もするけど。杖にした方が絶対使いやすいと思うんだよね。後は指輪型とかも有りか。
「まぁ確かに丸い魔力玉を持って戦うのは邪魔そうだし、コウの意見もわからなくもないけど。コレはそのままでも効果有るんだよね?」
「勿論、そのまま使えるよ。レムさんがそれを使って実際に火種程度ではあるけど火を魔法で作り出したし」
エリーゼが魔力玉を手に取って色んな角度から観察している。
「すぐに結果が出るぐらい高性能なんだね。見た目は色のついたガラス玉なのに」
確かに魔力玉ってセラスは言ってたけど、魔力玉自体に魔力は全く感じないんだよね。
ダンジョン産の道具は不思議なものばかっかりだ。
実際に試して見ないと効果が分からないよねと言ってエリーゼがレムさんの時と同じように試し始めたけど、どの属性の魔力玉も全く反応しなかった。
エリーゼは意外に負けず嫌いなのでその後30分程魔法を使おうと格闘していると地の魔力玉を使って地面を15cm程陥没させるのに成功した。
と言っても魔族からしたら今のところいちばん需要が無いのが地魔法なのでなんとも言えない表情をしていた。
土で頑丈な家を作れたり植物の生育を促進出来るぐらい使いこなせれば話は別だけど。
地面を15cm程陥没させるぐらいだと、畝を作る時に便利そう程度の使い道しかない。
なのに魔族なら農業は魔物に任せられるので必要ない。
敵の足元を陥没させてバランスを崩させるような使い方も出来るだろうけど、それをするなら闇魔法でデバフを叩き込んだ方が効果的だろう。
そんな感じで現時点では地魔法は要らない子扱いされてしまってる。
次にコウさんが来るまでには絶対他の属性も使えるようになってみせます!と意気込むエリーゼとレムさんにそろそろ帰りますねと言って魔族の村を後にした。
読んでいただきありがとうございます。
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