第2話

「なるほど。精霊王様の結婚を祝福しに来てくれた方たちへのお礼の品として私たちが作ったタオルセットを送りたいと言う事ですね?」


俺は宙ぶらりんのままここに来た理由を話す。


「その通りなんだけど。そろそろ下ろして?」


「その気になればご自身で抜けられるはずです」


まぁ、そうだけど。遊びとは言え負けた訳だし、ネルルが解放するまでこのままの方が良いかな?って思ってたんだけど。

ネルルがそう言うなら、そろそろ脱出しよう。体を完全に液体に変化させて足に絡まっている糸から抜け出す。

そのまま地面に着地して液体から元の体に戻る。



「よいしょっと。タオルセットは作って貰えるってことでいいかな?」


「勿論です。最高の物をご用意させて頂きます」


「ありがとう。それじゃ報酬の話なんだけど何が良い?」


普通だったらお金を払うんだけど、ここに住んでるアラクネ達にお金をあげても使い道無いし。基本魔物の皮とか糸を渡すことになっている。


「いつも通りでお願いします」


何を渡すか以外に難しいんだよな。脳死でクジャタの牛革とか渡すと断られちゃう。

作ったとして買ってくれる人がいません。と言う話だ。

革ジャン1着買うのに国家予算1年分ぐらいのお金は流石に出せないか。

革ジャンという名の伝説レベルの防具になる訳だから、わからなくは無いけど。

ハジメくんも領地経営が軌道にのれば披露宴を挙げるって言ってたし、ハジメくんへのお祝いの品はクジャタの牛革で作った革ジャンにしよう。

コレはまた今度頼むとして、収納魔法の中から報酬として渡す素材見繕っておこう。


その後はアラクネ達の村まで行って少し世間話をした後、お土産に森でとれたキノコをいっぱいもらって住居のお城に帰ってきた。


「正直、今から準備することって無いよね」


「前々からしっかり準備してるからね。寧ろ2ヶ月前でバタバタしてる方が嫌じゃない?」


フェムトの言う通りなんだけど。やること無くて暇なんだよね。

フィア達は割と自由に幻獣種達と交流したりちょくちょく遊びに来る神獣たちに鍛えて貰ったりしている。


「魔族のところにリーフソルトがどうなってるのか確認しに行くか、この島のダンジョンの拡張作業が終わったみたいで出入口が開いてたし、ダンジョンの調査に行くか。今、やることと言えばそのどっちかじゃない?」


「ダンジョン入れるようになってるの!」


最初の方は毎日確認しに言ってたけど、全然拡張が終わる気配が無かったから確認しに行くのやめたんだけどようやくか。

リーフソルトの方はそんなにすぐ成果がでる訳じゃないだろうし、ダンジョンに潜ろう。


と言ううわけで、フェムトと2人でダンジョンに向かった。城にダンジョンに行ってきますって書き置きもちゃんと残したし、準備はバッチリ。


「まずは30階まで降りないと新しいフロアを確認出来ないってのは少し面倒だよね。1階ごとがあんまり広くないからといって30階まで行くのに1日かかるし」


拡張なので今まであった階層は何も変わらず、新しい階層が追加されるという感じなので新しい階層を確認するには大した旨みもないのにやたら長い既存の階層をまた踏破しなくてはいけない。


「確かに階層は多いけど高難易度ダンジョンに比べたら広さ的には大したことないんだから気にしちゃダメだよ」


確かにその通りだけど問題なのがゴーレムとドールしか出てこないからさらにやる気が出ないんだよね。


「まぁまぁ、新しい階層にはコウが見たことない金属とか見つかるかもしれないじゃん」


金属よりは食べれるものの方が嬉しいんだけど。このダンジョンじゃ期待できないよな。



「調査は必要だし。気合い入れてダンジョン攻略しますか」


フェムトがいるし、罠があったとしても警戒する必要は無いだろう。


一度攻略した部分は走って通過する。途中で遭遇するゴーレムも1発殴って道を開けさせて、後はそのまま通過する。

そのおかげで本来1日かかるところを何とか半日で元最奥である。

ミスリルゴーレムが居るボスフロアまでたどりついた。


文字通りワンパンで倒すと、床に魔法陣が浮かび上がった。状況的に新しい階層に進むための転移魔法陣だろう。

念の為フェムトに確認もとって転移するだけで危ないものじゃないのも分かってるので。

魔法陣にのって移動する。


「なんだろう…秘密結社の地下研究所的な雰囲気」


新しい階層は何らかの研究施設のような見た目だった。

ただの坑道からえらい変わりようだ。

でもなんの変哲もない坑道を進むと秘密結社の研究施設が…って言うのはゲームとかでは有りそうな展開だな。


「よく分からない機械がいっぱい有るけど。これ全部魔道具?」


研究施設のような感じなので、用途が不明だけど機械っぽい物が沢山設置されている。


「ただの置物だよ。雰囲気を演出する為の」


そりゃそうだよね。もし、実際に使える魔道具だったりしたら、迷宮産の魔道具取り放題になっちゃうもんね。


「でも、偶に本物の魔道具が混じってるみたい。コレとか、持ってるだけで回復魔法の効果を高めてくれるんだって。ただし、デメリットとして攻撃魔法は威力が下がるみたいだけど」


お宝探し的な要素も有るのか。





読んでいただきありがとうございます。

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