第10話

「音も大きかったし、魔物が集まって来るだろうから、ここから早く離れること自体には賛成だけど、崩れた壁から何か出てきてるぞ。もしかして岩塩じゃないか?」


フィアに言われて一部が崩れてヒビが入っている壁を見ると、ヒマラヤ岩塩とかでよく見るピンクの岩塩らしき物が顔を出していた。

岩塩って活火山にあるような物じゃないと思うんだけど。

ダンジョンだからなんでも有りなのか。


「しょっぱい。岩塩で間違い無いみたい」


岩塩っぽいものを壁から掘り出して周りについてる余計なものを洗い流して綺麗にした後。流水の短剣で少し削って食べてみたらちゃんと塩だったので岩塩で間違い無いみたい。

岩塩プレートできそうだな。

1番大きく所を板にすれば長さ80cm、厚さ10cmぐらいの板も作れそう。

実際そんなサイズの岩塩プレートを作ることは無いだろう。大きくて長さ30cm厚さ5cmもあればじゅうぶんだろう。


岩塩プレートって見た目かっこいいなぐらいの知識しか無いけど、岩塩プレートって他に効果有るのかな?


塩なんだし、いい感じに塩味がつくのは当然だろうけど、余計な油とか水分も吸収してくれるとかどっかで聞いた気がする。


ひとまず、簡単に採れる岩塩だけ採集してその場を後にした。

若干上り坂になっている道を魔物を倒したり、鉱石が採集出来ないかな?とピッケルで採掘しながら進んでいる。

新しい魔物と遭遇する事は無かったけど、何か判別出来ない鉱石は幾つか手に入った。

これは帰ってからフェムトに何か教えてもらう予定。

勿論、ミスリル等の見知った鉱石も手に入った。でも、どこにあるか、直接掘って見なきゃ分からないし、ゴーレム系を倒す方が気楽だなとは思った。


「溶岩じゃ無くてお湯がグツグツしてる場所も有るんだね?もしかして…フィアお願いしてる風属性の魔法を俺の方だけ止めて貰っていい?もし、倒れたら解毒ポーション宜しく」


解毒ポーションはそれひとつで何百種類もの毒を治療してしまうファンタジー解毒剤だ。

本来だったら、解毒剤って毒ごとに違うはずだと思うんだけど…。便利だから文句は無いけど。


「やっぱり硫黄の匂い。これは温泉ってことだね。でも、グツグツしてるから入ったら茹で人間になっちゃう」


良く、腐った卵みたいな匂いって表現される硫黄の匂い。正確には硫化水素の匂いだけど。


「一旦温度の話は置いておいて、綺麗な緑色をしてるけど。人間が入って大丈夫なの?」


綺麗なエメラルドグリーン色と言えばいいだろうか。

確かに毒々しい色かも知れない。硫黄温泉にはそんな感じの色もあるって聞いたことが有るし、問題無いはずと伝える。


「それでも結局温度の問題で入るのは無理だけどね」


魔法で氷を作って温度調整をすれば入れないことは無いだろうけど、ダンジョンの中だしそこまでして入るつもりは無い。


「ただ、あっちの泥は持って帰ろう。泥パックとか有るし。この泥も美肌効果があるかも知れない。実際使うのは使って大丈夫かフェムトに見てもらってからだけど」


女性へのお土産に美容品は最強だと思ってるしちょっと多めに採集していこう。


美容効果が有りそうな泥を採集した後、また移動を始めたけど、ふとそこら辺にいっぱい生えている葉っぱが1枚もついてない枯れ木が気になった。


「この木も魚みたいにめちゃくちゃ耐火性高かったりするのかな?」


もしそうならこの木も結構な需要が有るんじゃないか?

耐火性だけじゃ建材として使えるわけじゃ無いから、もしかしたら使い道が無いかも知れないけど、実験してみる価値は有りそう。


「耐火性が高くても加工に向かない可能性も有るのは確かだけど。耐火性高いなら何かしら使い道は有るだろうし。試してみたら良いんじゃないか?木はいっぱい生えてるし」


確かにいっぱい生えてるし、全部ダメになっても、また勝手に生えてくるし。

気が済むまで実験してみようか。


何度も試してみた結果。伐採する前も伐採した後もびっくりするレベルの耐火性を持っていた。火属性魔法で燃やしても焦げ目ひとつつかなかったし。溶岩に浮かべても何も変化が起きなかった。

耐久性に関しては普通の木と変わらない感じだった。

枯れ木だから最初から乾燥してて直ぐに加工する事も出来ることを考えるとそこそこ需要がでそうな感じだ。


「問題はコウの関係者以外でこの階層まで来れる人間がいないから、値段が凄いことになりそうと言うことだ」


「確かに。でも、あんまり高いと売れない気がするんだよね」


耐火性は凄いから需要は有るだろうけど。

耐久性的には普通の木なので馬鹿みたいに売れると言うことも無いだろう。

例えば、よっぽど木で家を建てたい訳じゃなければ石材で建てた方がある程度の耐火性も有るし耐久性もある。何よりお金がかからない。

そもそも、木に対して溶岩に浮かべても大丈夫な耐火性を求める人なんて殆どいないだろう。

トレントでもこの木ほどでは無くても、ある程度の耐火性は有るし、耐久性なら魔物だからそこら辺の石材より高い。



「あれ?高いと売れない所か、それトレントの方が良くない?ってなる気がする」


何かに使えるかも知れないという事で実験に使った1本だけ持ち帰ることにした。











読んでいただきありがとうございます。


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