第8話


「勿論、魚は確保しなきゃだよね。不味かったり毒だったりしたら嫌だし取り敢えず1匹だけ捕まえよう」


流水の短剣の刀身の先端を反しのついた銛に変形させる。魔力を流すと蛇腹剣のように使えるだけじゃなくて、ある程度刀身の形を変えることもできる。その機能を使って泳いでる魚を1匹捕まえる。

水に入れて血抜きしようと思ったんだけど、この魚、水じゃなくて溶岩の中を泳いでたんだよね。溶岩の中に入れれば良いのかな?

でも冷気を纏った状態の俺が溶岩に近づくと溶岩固まっちゃうし。

じゃあ、冷気を切って近づくか?と言われたら、暑そうだし絶対に嫌だ。

溶岩の近くに何も対策無しなんて暑いじゃすまないかもしれないし。


グダグダ考えてると血抜きする前に死んじゃうなと思い、ひとまず流水の短剣に刺したま

溶岩の中に戻す事にした。

溶岩に戻した後、数分はあばれていたけど大人しくなったので溶岩の中から取り出して手に取ろうとしたら、ジュウ〜と言う音がし始めた。


「さっきまで溶岩の中泳いでたんだし魚自体がめちゃめちゃ熱かったのか」


熱々の魚が自分達が纏っている冷気で急激に温度が下がった為みたいだ。


「そのまま素手で触ってたら危なかったな」


この階層のものを触る時は気をつけた方が良さそう。

マグマを泳いでいた魚を収納魔法にしまった。今日の昼ごはんにしよう。ダンジョンの中だと時間がわかりづらいから曜日感覚がおかしくなるけど、ダンジョンに潜って既に3日たっているはずだ。昼ごはんにして美味しかったら沢山とって帰ろう。見た目が鯵っぽいから色んな料理に使えるから美味しかったら嬉しいな。


「そうだ、フィア念の為、風属性の魔法を使って常に綺麗な空気が俺たちの周りを循環するようにしてもらっていい?」


火山だし毒ガスが充満している場所があってもおかしくない。今回、事前に察知する魔道具とかを持ってきてないから、しっかり警戒しておいた方がいい。


「わかった。私もこんなところで死にたくないし」


毒系とかは気づいた時にはもう手遅れってことが殆どだし、早めに対策しておかないとね。


「さっき採った魚は食べないのか?美味しくて乱獲する場合、この溶岩湖にしかいなかったらここまで戻ってくる必要があるし面倒じゃないか?」


確かに溶岩湖なんていっぱいあるし別のところでも採れるだろうって思ってたけど採れない可能性も考えておいた方が良いか。


「確かにその通りだ。1匹捌くだけなら時間もかからないし食べてみるか」

しまった魚を収納魔法から取り出して三枚におろした。


「見た目は鯵なのに白身魚だったんだね君」


まぁ異世界だしこういう事も有るかと納得させて、白身魚なら塩とバターを使って焼き魚にしようとしたけど。


「この魚火が通らない。マグマの中を泳いでる魚なんだからただの火で焼けないのは当たり前かも知れないけど。高温のブレスを吐くドラゴンの舌とかは普通に焼けるってのを考えると、納得がいかない」


ドラゴンのタンは味噌に漬けて食べると美味しいので1週間に一回は食べてる。

最初は舌を食べるの?って人達も多かったけど、俺が美味しそうに食べてるのを見て興味を持って食べた人は大体、堕ちてる。

動物のモツを使った料理があるにはあったんだけど、下処理がしっかりしてなかったから、美味しくないどころか不味いものばっかりだったのも敬遠した理由だと思う。

ディアーネさんは自分でモツを美味しく食べる方法を編み出してたからか舌も最初から気にせず食べてたな


納得出来ないと言ったところで魚に火が通るわけが無いので、この魚は生食専用と考えた方が良いだろう。

刺身にして何もつけずに食べてみる。


「ねっとりしてて噛むと少し甘みを感じる。美味しい白身のお刺身。昆布締めとかにしたら更に美味しそう。溶岩の中を泳いでいた魚だし寄生虫とかもいないだろうから、心配せずに刺身を食べれる」


この世界にもアニサキスのような寄生虫は存在しているので海にいる魚を食べる場合、当たる可能性は考慮しなきゃいけない。

でも溶岩の中じゃ寄生虫は生きれないだろうし、心配せずに食べれるかなと思った訳だ。


「これは乱獲決定だな」


サイズが30cm程度と普通の鯵サイズなので、大量に採集しておかないと家じゃ1食分にもならない。

幸いダンジョン内だから取り尽くしたって絶滅しないしそこら辺を考慮する必要も無い。


血抜きだけが大変かな?と思ったけど、普通の淡水でも問題なく泳ぐし血抜きも出来たので楽だった。今度、神経じめ用のワイヤーを作ってもらって用意しておこう。


「階段近くなのにだいぶ時間を使っちゃたな」


8階層スタート地点の近くにある溶岩湖を泳いでいた魚を全部捕まえたのでそれなりの時間がたっていた。


「コウ。面白いものが手に入ったぞ」


フィアは俺が魚をとっている間やること無くて暇だったので、周りに面白いものが無いか探しに行ってたんだけど、なにか見つけたらしく帰ってきた。フィアの手には拳大の粉砕前の乾燥させた胡椒のようなものがのっていた。


だいぶでかいけど胡椒でいいのかな?あれ。







読んでいただきありがとうございます。






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