第4話

「あれはドラゴンか?」


氷の洋梨を採集した後は特に何も新しい発見はなく順調に下へ進む階段がある場所までやってきた。

順調過ぎてうさぎの魔物にも遭遇しなかった。マンモスとか狼とかフクロウとかほかの魔物には何回か遭遇したんだけど、うさぎの魔物だけは遭遇しなかった。

遭遇しなかったものは仕方が無いので今度もう一度狩りに来るとして、今は目の前の全身氷で出来たドラゴンを倒さないといけない。


「ドラゴンと言うか、ドラゴンの姿をした氷の精霊って感じだな」


正直相手をするなら氷で出来たドラゴンが良かった。

氷で出来たドラゴンなら首を落とせば死ぬだろうけど。

ドラゴンの姿をした氷の精霊が相手だと首を切り落としたぐらいじゃ死なない。

一撃で消滅させるか、魔力が尽きるまで攻撃し続けないとドラゴンの姿をした氷の精霊は倒せないだろう。


「ドラゴンでは無く、ドラゴンの姿をした精霊か。厄介だな」


「フィアの権能で消滅させちゃう?」


フィアの権能なら一瞬で消滅させられるので、これが1番早い方法だろう。


「だが、それだと何も素材が取れなくないか?」


確かに、でも時間をかけずに倒すには結局、氷のドラゴンを相手の回復より早く溶かしきらなきゃいけないし、素材って手に入るのかな?でも、なにか素材が取れるなら欲しいし、別の方法を考えるか。


「ん〜これなら行けるかな?フィア30秒ぐらい時間稼いどいてくれる?」


「そのぐらいお安い御用だ」


そう言ってフィアは氷の精霊と戦闘を始めた。

さてと、無詠唱魔法なら適性が無くても出来ると言っても俺の考えている魔法を再現出来るかな?

フィアに30秒ぐらい稼いでくれれば俺が倒すって言っちゃったし、成功させるしかないけど。


まず手のひらに拳大の火球を作り出す。

更に風属性の魔法で酸素を作り出して火球の火力を底上げさせる。

赤かった火球の色が白に変わる。

ここまでは成功。

後は当たった後に想像通り言ってくれれば。


「フィア!」


フィアに声をかけてから雪

氷の精霊に向かって火球を飛ばす。

氷の精霊は火球を避けようとしたけど、フィアが重力魔法で動きを封じた為クリーンヒットした。

火球は氷の精霊に当たった瞬間雪の精霊全体に燃え広がる。氷の精霊は暴れ回って火を消そうとしてるけど中々消えない。

水属性の魔法を使うより時間がかかるし魔力の消費も多くなるけど、これなら成功かな?


氷の精霊はどんどん溶けていって最終的には氷ではなく水になってしまった。


「これは倒したって事でいいのかな?」


なぜ悩んでるかと言うと、溶けて水になったのはいいんだけど、その水が地面に染み込んだりしないで、綺麗に残っているからだ。氷の精霊は水の精霊の中で特に氷を操るのが得意な精霊ってだけで、水を操ることも普通に出来る。

つまり氷の精霊がまだ生きているから水が綺麗に残ってるんじゃないかと警戒しているわけだ。


「と言っても近づいても攻撃してこないし、もしかしたらこの水が素材ということなんじゃないか?」


成程。確かにその可能性もある。

収納魔法からコップを取り出して水を汲んで飲んでみる。


「味は普通?と言うか水の味なんて俺には分からん。でも魔力が回復して疲れが取れた感じがするから。この水が素材ってことだと思う」


軟水か硬水か判断すらつかない人間に水の味なんて分かるわけがなかった。

でも、魔力回復効果や疲労回復効果があることはわかったので全部持ち帰る。

他にも素材があったりしないかと少し探してみたけど何も見つからなかった。


「まだ氷の時点で切り落としておけば、何らかの効果がある氷が手に入ったかもしれないな」


言われてみれば確かに、うさぎの魔物もだしこの階層はまた来ないと行けないな。


下の階層に進むための階段を下っていると下からムワッっとした空気が上がってくる。

極端に暑いわけじゃないけど熱帯雨林みたいな階層かも知れない。


「あ〜こんな感じか。アマゾン川を筏下りみたいな感じか」


7階層は川幅が広くて流れが緩やかな川が流れていて30人ぐらいが乗れそうな大きな筏が係留してあった。


船じゃなくて筏だけどジャングルクルーズみたいで少しテンションが上がる。


「にしても、この階層は自分たちのペースで進めないってことか。それはちょっと厄介だよな」


筏を使わないで進むことも出来ると思うけど、筏で進まないと下に進む階段が現れないとか普通にありそうな気がするし。


「それに大きいと言っても筏の上で戦うのは普段より難易度が上がる。筏も守らなきゃならないだろうし」


あっそっか。筏に攻撃が当たって壊れたりしたら大変だもんな。大きい方が戦いやすいって思ってたけど、大きければ大きいほど、守る範囲が広がるから大変かも。

と言っても引き返すという選択肢は存在しないので筏に乗って川下りを始めた。


「確かにこれは暑い時に食べるなら最高の果物だな」


筏での川下りは予想以上に魔物の襲撃が無く暇だったのでフィアと一緒に氷の洋梨を食べていた。


ジャングルの中には結構な数の魔物がいるみたいなんだけど、川の真ん中を筏で進んでるから、魔物が襲ってこない。もしかしたら筏を使わないでも進むことはできるけど、難易度は数段跳ね上がるということだろうか。

今回はもう筏に乗ってるしこのまま筏で進むとしよう。






読んでいただきありがとうございます。

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