第5話

「水中に魔物はいるんだけど、襲ってくる気配が無いんだよね。こっちの隙を伺ってるのか。それとも何かトリガーがあるのか。岸にいる魔物はあんなにやる気なのに」


筏の上から岸を見るとチンパンジー、ゴリラ、ナマケモノ、オニオオハシなどなど沢山の魔物がこちらを威嚇している。

オニオオハシは飛んで攻撃しに来れば良いのに。


陸で暮らしてる魔物は川を恐れてる?


おかげで楽ができてるんだし文句は言わないけど。


「あっ!バランス崩して川に落ちた」


キーキーと鳴きながらこちらを威嚇していたチンパンジーがバランスを崩して川に落ちた。

その瞬間川の中にある魔物の反応が一斉にチンパンジーに向かって動き出した。


チンパンジーは陸に上がろうと必死に暴れてるけど、川の水がどんどん赤く染ってものの数秒でチンパンジーは水中に消えていった。


「川に近づこうとしないのはこれが理由か」


川に入ったら川の中にいる魔物にいっせいに襲われると。

ピラニアみたいな魔物だったな。少し見えた感じからすると。

ピラニアってどちらかと言うと臆病な性格の魚なんだけどなぁ。

血の匂いに敏感だったりするとかも聞くし有り得なくはないか。ピラニアに襲われる事件も実際に有るわけだし。

でも、地球のピラニアより絶対凶暴だと思う。


「あれ?こっちに近づいて来てる気がするんだけど」


どうやら、1度スイッチが入ると凶暴化するらしい。

筏の水中に沈んでる部分を氷で補強する。

直ぐに金属どうしが思いっきりぶつかったような音が聞こえて、筏が大きく揺れる。

水中から筏に体当たりしてくる魔物がいるみたいだ。


「当たり前だけどピラニア以外にも魔物はいるみたいだ」


ピラニアみたいな魔物は水中から飛んできて鋭い歯をガチガチさせながら噛み付こうとしてきている。

ピラニアのサイズは大きくて10cmぐらいだし、さっきみたいに筏を揺らすのは無理だろう。

と言うかピラニアの数が多すぎて鬱陶しい。

飛んで来た端から凍らせてるけど、全然減らないんだけど。どんだけいるんだよ。

その代わり一体ごとの強さはたいしたことなさそうだけど。数と噛む力だけに特化させた魔物って感じ。


「これはきりがないな。コウちょっと試したいことが有るから、私が倒していいか?」


「もちろん」


許可を出すとフィアが自分の手の上にバチバチと放電している電気の塊を作り出した。

もしかして雷魔法?そう言えば、雷魔法って風属性の魔法に適性を持ってる人が使える魔法だって説明されたな確か。


雷魔法は詠唱魔法が存在しないで無詠唱魔法のみ使える魔法。風属性の魔法に適性を持っていて無詠唱魔法を使えたとしても使える人は全く居ないって話だったね確か。


俺がこの世界に来るまで無詠唱魔法が使える人なんて世界全体で見ても3桁行かなかったらしいし、ほぼ幻の魔法なはずだな雷魔法は。


フィアってそう言えば風属性魔法と重力魔法

の適性もちだったな。重力魔法の使い方をフェムトにレクチャーされてからは、風属性の魔法を全く使って無かったし忘れてた。



フィアが電気の塊を水中に投げ込むと、水中にいたピラニア型の魔物は水中にプカーと浮かんでくる。

でも水中にいるはずのピラニア以外の魔物は浮いてこないのでまだ健在なのだろう。


「威力を下げすぎたか」


そう言ってフィアがもう一度雷魔法で攻撃する。今度は水面に直接雷が落ちた。

数秒待つと大型の魔物が何匹か水面に浮かんできた。ヨーロッパオオナマズやピラルクのような魔物だった。

ピラルクは知らないけど、ナマズはフライにして食べれるはず。コンビニ弁当の白身魚のフライはナマズが使われてるって聞いたことがある。本当かは知らないけど。

どこでかだったかは忘れたけど。小さい頃にナマズの唐揚げを食べた記憶が蘇ってきた。

唐揚げにするのもありだな。

ちゃんと回収しておこう。ピラニアも食べられるはずだから、いくらか回収しておこう。


「いつの間に雷魔法を使えるようになったの?」


流石のフィアでも雷魔法は使えなかったはずだけど?


「使えたら便利だろうとずっと練習自体はしていたんだけど、中々使えるようにならなくて諦めかけてたんだけど。地球に行った時に買っておいた科学の本を読んで雷や電気について勉強したら使えるようになった。だから雷魔法が使えるようになったのは最近だ。まだ威力調整も微妙だし、使えるとは言えないかもしれないが」


この世界からしたら雷という自然現象自体の理解は有るけど、どう言う原理で雷が起きているのかその知識は存在しない。

だから、想像が難しくて雷魔法が使えなかったけど。

地球上においては科学によって、どう言う原理で雷が発生するのか解明させている。

その原理をフィアが勉強した結構。

雷魔法も使えるようになったわけか。

科学の本ってある意味、魔導書だよね。

薄々思ってたけど。


「魔法学校に科学の本を渡したら凄い事になりそうだね。無詠唱魔法が使える人も増えてるわけだし」


「流石に危なすぎるから無しだな。科学は異世界人の秘伝としておいた方が良いだろう」


確かに科学の知識を大勢に教えるのは少し危ないか、危険な情報も多いし。

危ない使い方するつもりがなくてもやらかす可能もゼロじゃない。

フィアの言った通り科学は異世界人の秘伝としておいた方が良さそうだ。






読んでいただきありがとうございます。


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