第12話

「27班ダンジョンから帰還しました」


昨日までよりは遅いけどこの時間までにはダンジョンから出てないと減点と言う時間よりは少し早いそんな感じの時間にダンジョンから出てきた為、生徒達の帰還報告を受ける場所がいつもと違って賑わっていた為報告まで少し時間がかかった。


「確認しました。26階層以降は難易度が上がりますから、全員怪我がなさそうで安心しました」


「正直、難易度が上がると分かっているつもりだったんですけど、想像以上でした。

コウ先生が一緒に来てくれなかったら無事に帰ってこれたかどうか…」


「このダンジョン自体、正面から戦うと強い魔物よりも搦手を使ってくる魔物が多いですからね。特に26階層以降はそれが顕著です。コウ様、学校の生徒を守っていただきありがとうございます。搦手を使ってくる関係上格上の冒険者でもやられてしまう事も少なくないですから。護衛がコウ様でなかった場合、全員無事帰ってこれたかわかりませんでしたから」


不意打ちとかされると、実力的には格上でもあっさり殺されることは割とある話だからな。


「俺は護衛としてついて行ったんですから当然のことをしたまでです」


「私達も、護衛としてついてきてくださった方がコウ先生でほんとに良かったと思っています。道中に色々なことを教えてくださいましたし。今日も気配を消したり擬態してる魔物を感知する方法を教えて貰えました」


「…お前たちほんとに羨ましい。精霊王様直々の授業だなんて…俺だって教わりたい」


細かい制御だったら俺なんかより凄い人は沢山居るんだけどね。

人って言ったけど、幻獣種だったり神獣だったりするから、人間が授業を受けるのは無理か。

ティアナさんとか細かい制御に関しては、神獣以上だし、教え方も上手だから今でも見てもらってるし。

ティアナさんも教えること自体は嫌いじゃないみたいだけど、わざわざ人に授業をするかと言われたらしないだろう。


俺の気が向けば今回みたいに臨時教師をすることは有るかもしれませんねと適当に流してその場を後にする。

報告のために後ろに並んでる生徒もまだいっぱい居たし、流石にまだ終わらないのかって視線も増えてきてたから。

そそくさと退散した。


「ダンジョン実習は帰るまでが実習ってやつか…」


ダンジョン実習が終わった次の日。当然、王都に帰ることになるわけだけど、ここから王都まで馬車で帰ると6~7日程度はかかる。

臨時教師の俺は現地解散でも何も言われないけど、マルタは正式な教師だから生徒たちと一緒に馬車を使って王都まで帰らなきゃ行けない。

そんな中1人で先に帰るのはあれだったので俺も馬車に揺られて王都に帰ることにした。


やること無くて凄い暇だし、ガタガタ揺れるからおしりが痛い。


「マルタはどうしてこんなに揺れてる馬車の中で本を読んでても酔わないの?」


「慣れです。本ぐらい酔わないで読めるようにならなくちゃ馬車での移動なんて暇でしょうがないですから」


個人的には慣れでどうにかなるもんじゃないと思うんだけど。


「移動中やる事無いわけですし。ハジメさんのところに行って来たらどうですか?」


魔法学校の生徒を雇わない?って早めに聞いておいた方が良いしそうするか。


「それじゃあそうする」


「でも、ちゃんとこっちに帰ってきてくださいね。島に帰っちゃダメですよ」


「わかってるよ。じゃあちょっと行ってくるね」


ハジメくんは最近 、領民も移住して来たこともあって基本、自分の領地にいるはずだからそこに転移すれば会えるはずだ。


「こないだ来た時は木の柵だったけど、土壁に変わってる。じゃあ、あそこが入口か、結構人が入って来てるんだな。貴族の間者とかいっぱいいそう」


異世界に召喚されたせいで半年ぶりのハジメくんの領地だけどだいぶ大きくなってる。

町の中に入って少しフラフラしてみると、

数百人規模ぐらいだったのに2000人規模ぐらいはありそうな感じだ。

と言ってもほとんどが冒険者っぽい感じで住み着いてるって感じの人はそこまで多くない。

施設を見る感じ、宿屋が多い感じもするし。

魔物蔓延る未開拓領域だから仕方ないのかもしれないけど。領主が勇者だからと言っていつ魔物に襲われてもおかしくない場所に移住したいって言う人はどうしても少なくなるか。

冒険者の次に多いのが商人だ。

開拓中だから物を持ってくれば持ってくるだけ高値で売れるし。帰りは未開拓領域で討伐された魔物の素材を積んで帰ればほかの街で高く売れる。

だからこぞって商人が訪れるらしい。

貴族から金もらって情報収集も兼ねてる商人もいるだろうけど。


「魔物の素材が沢山取れるから屋台も魔物の肉を使ったものが多いな」


せっかくだし何か買って食べてみようと思っていホーンシープのマトンが串焼きで売っていたのでそれを買った。

羊の独特の匂いが苦手と言う人も多いけど、モンゴル料理で羊肉のマトンを食べた時は大丈夫だったし大丈夫だろう。


「思ったより柔らかいし、ハーブも肉にぴったりな調合だ。屋台じゃなくて店を持てるレベルじゃない?」


「まぁな、特にハーブの配合に関してはそれなりの自信があるぞ。領主様にも店をやらないか?って誘われたりもしてるんだが、俺は屋台が気に入っててな。冒険者をやっててそれなりに蓄えもあるから、必死になって稼ぐ必要もねぇし」


確かに屋台には屋台の良さがあるよね。

おっちゃんが屋台やってなかったら俺はこれを食べれなかった訳だし。お土産用に追加でいくつか買った後おっちゃんにお礼を言って領主の館に向かった。





読んでいただきありがとうございます。

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