第11話
「森なのは変わらないですけど、25階層まではそれなりに人が足を踏み入れる感じの森だったのに対して26階層からは人が滅多に足を踏み入れない、森の深部のような感じですね。歩くだけでも体力を消費しますし、視界も今まで以上に悪いです」
26階層を少し歩いたサリスさんが感想を述べる。
25階層までは下に降りる階段までけもの道のようなものがあったので地面もそこまででこぼこしてないし、森の中と考えるならだいぶ歩きやすい環境だった。
魔物と戦闘するためにけもの道を外れて森の中に入っても、そこら中に木の根っこが生えてたり蔦が生い茂ってたりする訳でもなかったので若干歩きにくいかな?程度だった。
だけど、26階層からはけもの道のような歩きやすい道は存在していなくて、フィールド自体に高低差もあって、山道のない山を登っているような感覚だ。
一階層辺りの広さも1.5倍ぐらいになっている。
なのでただ歩くだけでも26階層以降は体力をそれなりに消費してしまう。
それに加えて26階層からは出てくる魔物が全て変わる。と言っても森に出てきそうな魔物というジャンル自体は変わらないので、全然関係ない魔物が出てきたりはしない。
ただ、不意打ちで大きなダメージを与えるのを狙ってくる魔物が増える。
こういった魔物は魔力感知から逃れるために、魔力制御の応用で魔力が外に漏れないようしていることがほとんどなので、魔力感知に反応がないからと言って油断は禁物。
魔力感知を習得してすぐの場合は特に。
今までは分からなかった離れた魔物の位置もわかるようになるから油断しちゃうんだよね。
現に1匹魔物が近づいて来てるけど気づいて無いし。
まぁ、魔力探知覚えたてで気づけって言うのも難しいだろうけど。
「みんな一旦ストップ」
一旦止まらせてから、木の枝が重なっているところに氷の槍を飛ばす。
どさり、と木の枝から下に頭が無くなった蛇が落ちてくる。
「これってホールドスネークですよね。魔力感知に反応が無かったのにこんな近くに…」
全員魔物がこんな近くにいた事が信じられないみたいだ。
「ホールドスネークは気配を消して敵に近づいて巻きついて絞め殺す魔物だからね。練度の低い魔力感知だと察知出来ないことも有るんだ。当然これはホールドスネーク以外の気配を消して隙を狙ってくる魔物全般に言えることだから、魔力感知は便利だけど過信しすぎちゃダメだよ」
俺も魔力感知を躱されたこともあるし、アペプとか。帝国の魔道具とか、悪いことにしか使ってなかったけど帝国の魔道具技術は高かった。その技術を平和的に利用出来ればもっと違った未来があったかもね。
「対策って無いんですか?」
「魔力感知の練度をあげれば気づけるようになったり、後は自分の魔力を拡散させて地形を身につければトレントみたいな擬態する魔物以外は感知できるよ」
後者の技術は霧をだしてやっていたのを、わざわざ魔力で作り出した霧を使わなくても魔力を拡散させれば良いんじゃない?と最近気づいて出来るようになった技術だ。
工程がひとつ減るから発動までの時間も短くなったし、視界も悪くならないのでいい事づくめだ。
そう説明している間にホールドスネークがドロップに変化した。今回は皮だ。蛇革だしそれなりに需要が有るのかな?使うかわかんないけど、貰っておこう。アラクネ達に渡したら何か作ってくれるかもしれないし。
「ダンジョン実習の満点評価が25階層だった理由がよく分かりました。別のダンジョンなんじゃ無いかってぐらい難易度が変わってます」
26階層からはガチで殺しに来てるからね多分。
「それで、どうする?先に進む?それとも諦める?今は近くに魔物がいないし、少し話し合って決めて。でも、あんまり離れすぎないでね?」
トレントとかそこら辺の蔦に擬態してる魔物もいるからと一応注意をした。
いまさっきホールドスネークの件があったんだからちょっとお花摘みにと1人で離れたりはしないとは思うけど念の為ね。
「話自体は俺も聞いてたけど、どうすることに決まったのか聞こうか」
声が聞こえない所まで離れる訳にはいかないので、サリスさん達の話し合いは全部聞こえてるからどうなったのか知ってるけど、確認の意味も込めて説明してもらう。
「はい、27階層は目指さずに26階層で気配を消したり擬態する魔物の対処を練習したいと思います」
これ以上自分たちの力だけで進むのは危ないし、かと言ってここで引き返すのも勿体ない。なら、俺に護衛をして貰いながら、ホールドスネークやトレント達を見破れるように練習すれば良いじゃない。と言う事だった。
「それじゃあ最初にコツを教えたりはするけど、後は相手が近づいて来てほんとに危ないって時だけ助けるようにしよう」
「わかりました。よろしくお願いします」
最初は全然わからなくて不意打ちされてばかりだったけど、やっぱり実戦形式と言うのは上達が早くて、最終的には半径20mぐらいまで近づけば感知出来るようになっていた。
読んでいただきありがとうございます。
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