第8話
「さぁ決闘が始まりました。2人は魔法学校の生徒当然魔法使いです。お互い後ろに下がり呪文の詠唱を…しない!?一体どういう事だ!」
さも、何が起きてるか分からないって感じで実況してるけど、魔法学校の先生なんだから理解出来てるでしょ?
街の人達にわかりやすいように実況するためにそう言ってるんだろうけど。
最初に魔法で攻撃したのはサリスさんではなく、相手の学生の方だ。
無詠唱魔法だけど。火の矢を1本飛ばすだけだ。
サリスさんはそれを簡単に避ける。
正直あれだったら、わざわざ無詠唱魔法を使う必要ないと思うんだよね。
詠唱魔法でだって(火よ敵を穿て【ファイアーアロー】)で発動するんだし。
むしろ今の段階じゃ詠唱した方が早い迄あるな。
まぁ、まだ無詠唱魔法を使えるようになったばっかりだろうし、ある程度慣れれば火の矢の数を増やしたり、詠唱するより早く火の矢を作れるようになるだろうけど。
「なんと!!詠唱してないのにファイアーアローが発動しました!魔法は詠唱して発動するものじゃないんですか解説のテル先生」
「今のは無詠唱魔法と言う詠唱を行わず魔法を発動させる。今までは、優れた魔法使いの中でも極々1部の人が使える技術です。ですが、我らが魔法学校で今年から無詠唱魔法学と言う講義ができまして、精霊王であるコウ様と奥様で在られるマルタ様がカリキュラムをくみ授業をされる事で、無詠唱魔法を使える学生が育っているのです。これは魔法界の歴史を変える素晴らしい事です」
中盤以降今すぐにはいらない解説な気もするけど、魔法学校はすごいぞっていう宣伝も兼ねてるんだろうか。
「テル先生が熱く語ってくれましたが。いち学生が無詠唱魔法を使うという事はそれだけすごいことだ!という事でしょう。それに今回の決闘。魔法使いなのに両者詠唱をしないと言うことは、まだ攻撃をしていない生徒も無詠唱魔法が使えると言うことでしょう。一体どんな魔法を見せてくれるのか!!」
今の解説と実況で会場のボルテージが1段階上がった。
相手が2発目のファイアーアローを撃つか、サリスさんが魔法を発動させるか微妙なところだったが、タッチの差でサリスさんの魔法の発動の方が早かった。
サリスさんが魔法を発動させると、ジャボン玉のような物がフィールド上にばら撒かれた。
タッチの差で発動したファイアーアローがシャボン玉のひとつに当たると凍りついて割れてしまう。
「ファイアーアローが泡に当たったと思ったら凍りついた!?」
「触れたものを凍らせる泡を魔法で作り出したという事ですね。フィールド全体にばらまかれているので、動きも大幅に制限されます。こんな魔法、詠唱魔法には存在しないので無詠唱魔法で作り出したオリジナルの魔法でしょう」
そう、サリスさんが使ったのは触れたものを凍らせるシャボン玉を作り出す魔法。
言い変えるとフローティングマインを作る魔法。
相手の移動の阻害をできて、一定の攻撃力もある。見た目は可愛いけど結構えげつない魔法だ。
しかも、結構な時間シャボン玉はフローティングマインとして残り続けるのに魔力を消費するのは魔法を発動させた最初だけなので燃費も悪くない。
弱点としてはシャボン玉が割れない程度のそよ風がふくとそのまま飛んでっちゃうとか。
離れたところから遠距離武器で対処されちゃうと無力。
だけど今回はその心配もないだろう。
決闘だから決められたフィールドから出ることは出来ないから極端に距離をとることも出来ないし、相手には無詠唱魔法を使ってジャボン玉が割れない程度のそよ風をふかせると言う考えにたどり着かなそうだし。
逆にサリスさんがそよ風をふかせて、シャボン玉を相手の生徒近くに移動させてる。
相手はシャボン玉をどうすることも出来ず、体に当たってパン!!と言う音をだしてシャボン玉が割れて体に氷がまとわりついている。
本来だったら氷がまとわりつくレベルじゃなくて凍らせることもできるけど、それをやると部位欠損を引き起こすことになるから、今回は威力を調整してあの程度の効果になってる。
シャボン玉はどんどん当たって割れていくので身体中に氷がまとわりついてどんどん動けなくなって、最終的には身動きが取れなくなってしまった。
「これは勝負ありです!!それにしてもすごい魔法でしたね。見た目は全く攻撃力の無さそうな魔法だっただけに驚きが倍増と言った感じです」
「そうですね。移動の阻害、攻撃、それに見た目で大したことないだろうと思わせる初見殺し的な側面まで用意されてる非常に完成度の高い魔法だと思います」
教師陣からもすごい高評価だ。観客席からも大きな拍手が贈られている。
サリスさんが氷を溶かして、動けるようになった相手と握手してお互いを称えあっている。
もはや決闘と言うよりプロレスの方が近い気がする。
生徒同士の問題も解決できるし、金も集まって、学校の評判も上がるから教師陣からしたら最適解なのかもしれないけど。
読んでいただきありがとうございます。
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