第9話

「お疲れ様。新魔法の制御もバッチリだったね」


「ありがとうございます、コウ先生。でも、決闘よりその後の勧誘合戦の方が疲れました。コウ先生がいるのが分かってるので強引な勧誘はされませんでしたけど」


決闘が終わった後戦った2人は貴族やら商人やらに何度も声をかけられてたからな。

試合より時間かかってたし。

サリスさんが平民だからと言って無理やり勧誘しようとする連中はいなかった。

これは自分で言うのも自意識過剰みたいで嫌だけど、俺がこの場にいるからと言うのが理由だろう。

今日ぐらいは泊まってる宿まで送ってあげた方が良いかもしれない。

帰り道で接触して無理やり勧誘しようと考えてる貴族やら商人がいるだろうし。


でも、魔法学校側も何も考えてないはずないから必要ないかな?

馬車とか用意されてるかもしれない。

そう思ってマルタに確認してみたら、コウさんが同行するのが1番の対策なので何も用意してません。

サリスさん達の班は俺に丸投げで対戦相手だった子の班の保護にリソースを割くつもりだそうだ。


「理解は出来るけど、馬車ぐらい用意してくれたって良いのに。だからと言って転移で宿まで帰ったりすると驚かれて、また騒ぎになりそうだし…仕方ない久しぶりにあの方法を使うか」


久しぶりに大鷲の氷像を作り出して背中に乗って街の入口まで飛んで移動することにした。

この方法を使わなくても飛べるようになってから使ってなかったけど、たまにはこれでゆっくり飛ぶのもありだね。


貴族用の門から街の中に入ってそこからすぐに宿のエントランスまで転移で移動する。

街の外から突然転移して戻るのはここの代官と知り合いじゃないし、遠慮してたけど。

街の中に入ってからなら別に良いだろう。


「転移魔法ってほんとに凄いですね。転移魔法を使えるようになる魔道具とかあれば良いのに」


「高難易度ダンジョンの最奥付近の宝箱からでた魔道具とかなら有るかもよ?」


「やっぱり存在したとしてもそのぐらいのレア度ですよね」


まぁ、1回転移を経験してしまうと転移魔法が欲しくなるのは凄くわかる。

俺は精霊のハーフになったことで割と簡単に使えるようになったけど。

とは言っても転移魔法が簡単に使えるような世界だと、それはそれで怖いと思う。

軍事目的で使用されたり、暗殺に利用されたり。


「そのぐらいのレア度の方が俺はいいと思うけどね。悪用する人が絶対出てくるし」


「確かに悪用し放題ですよね。転移魔法って。そう考えると、存在しない方が良いかもしれませんね。転移魔法が使える魔道具なんて」


実はアイが魔道具を作るのにハマって、転移する場所を登録するマーカーとマーカーに登録しておけば任意でマーカーのある所に転移出来る指輪を作り出しちゃったから、実は存在するんだよね。転移魔法が使える魔道具。


アイは日本にいる時システムエンジニアだったんだけど魔道具を作る時にいちばん重要な魔法陣の作成がプログラミングに似ていると思ったらしく、フェムトに魔道具の作り方を指導して貰った結果、とてつもない才能でどんどん魔道具作りの腕をあげて、いつの間にか転移魔法が使える魔道具を生み出してしまった。


最初は壊してなかった事にしようと思ってたんだけど、転移が使えないフィア達に必死に止められて結局は身内だけで使うという事になった。

どこで手に入れたのかの言い訳は「俺が高難易度のダンジョンの宝箱集めをしてたら出てきた」と説明しているらしい。

それだけでみんな納得するし、もし使わない宝箱の魔道具が有れば売ってくれないか?と聞かれるらしい。

転移魔法が使える魔道具を制作したと言うより信ぴょう性がよっぽど高いって事だろうけど、最近コウだから仕方ないみたいな扱いになってきた気がする。


転移魔法が使える魔道具については今後、世界に普及させるつもりがない訳では無いけど、悪用されないように調整したり各国のトップに根回しをしてからだろうから当分先の話になるだろう。

そもそも今のままじゃ1回の転移で消費する魔力量が多すぎて、一般人じゃ絶対使えない品物だし。

地球で言う乾電池みたいなものに魔力を貯めておいて使用することは出来るけど、一般人じゃその電池を満タンにするのに何日かかることか。


「どうしたんですか?急に黙ってしまって。もしかして、転移魔法が使える魔道具を既に手に入れてたりするんですか?」


中々鋭い。いや、このタイミングで黙れば誰だってわかるか。


「あるには有るよ?魔力消費が多すぎて普通の人間じゃ使えないだろうけど、それよりせっかくサリスさんが決闘に勝利した事だし、祝勝会でもひらかない?勿論、食事は全部こっちで用意するよ。広い宿だから部屋も頼めば貸してくれるでしょう。だからさっきの話は忘れて」


「承知しました!祝勝会楽しみにしています。一旦着替えてきてまたこのロビーに集合で良いですか?」


「それで良いよ。俺はその間に宿の人に確認しておくから」


サリスさんと同じ班の子たちは急いで自分達の部屋に帰って行った。

宿の人に場所を借りれないか聞かなきゃ行けないからそんなに急がなくても良いんだけどな〜。

待たせてしまうにも悪いので俺も直ぐに宿の人を探しに向かった。






読んでいただきありがとうございます。









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