第6話

「せっかく無詠唱魔法が使えるのに詠唱魔法の真似事をしていちゃ意味が無いってマルタ先生が口癖のように言っていましたけど、今日初めてその意味をちゃんと理解できた気がします」


それ、マルタがティアナさんに魔法を教えて貰ってる時にずっと言われてたやつそのまんまだね。

俺もその通りだと思うしいいと思うけどね。

せっかくしっかりとしたイメージが出来れば色んな魔法が使えるようになるんだから。

使い慣れてるのは詠唱魔法だろうからイメージしやすいってのはわからなくもないけどね。


「無詠唱魔法は、ただ詠唱魔法より早く魔法が使えるようになるだけじゃなくて、詠唱魔法にない魔法の使い方が出来るっていうのを忘れちゃ行けないよ」


対処法が有れば猿の魔物はただの雑魚。

他の魔物も今までの階層に出てきた魔物しか出てこないのでどんどん下の階層へ進む。

途中で結構な数の魔法学校の学生達を抜かして行った。

例の猿の魔物がほかの魔物と一緒にで初めたせいで上手く対処できない班が多いみたいだ。

俺たちみたいに単体で出てくる間に攻略法を考えたりしてないのが原因だろう。

無詠唱魔法の授業が始まった魔法学校の生徒でも使えるようになった学生が全体の1割。

その中でも実戦で使えるレベルの無詠唱魔法が使える学生は20数名程度だそうだ。

それでも王国認定魔導師レベルじゃないと無詠唱魔法は使えなかった今までを考えるとすごいことだとは思う。


なのでこの班程有利な戦法と言うのは難しいかもしれないけど、所詮ここは低難易度のダンジョン。

しかも階層もまだ浅い場所だ。

魔物的には雑魚の部類だ。

実際スピードを封じるだけで完封出来る魔物だし。

この程度で苦戦してたら大成は出来ないのでみんな頑張って欲しい。


ある意味魔法ゴリ押しじゃ勝てない敵との訓練ってのも考えて実習先をこのダンジョンにしてるのかもな。

このダンジョンは他のダンジョンにない便利機能てんこ盛りなのも理由なんだろうけど。

このダンジョンは低難易度ダンジョンの中では難易度高めのダンジョンだ。安全面を考えるならもっと難易度の低いダンジョンはある筈だから。


こことは別のダンジョンに死んでもレベルの半分と持ち物が消失するだけで生き返れるダンジョンも有るって軽く聞いた。

そのダンジョンは最初は超優しい難易度だけど下に行けば行くほど難易度が跳ね上がって行くらしい。

現在の一番深く潜った冒険者曰く、人外魔境、人間のクリア出来る難易度では無いらしい。まぁ俺と交流のある国に有るダンジョンでは無いので潜りに行くつもりは無いけど。


この班のダンジョン攻略は最初に猿の魔物に苦戦した以外特に苦戦することなく25階層まで到着した。

時間的にはまだ余裕は有るけど、25階層まで到着すればダンジョン実習の評価は満点を貰えるという事で、今日はここで終了になった。

ダンジョン実習2日目で課題をクリアしてしまった訳だけど残りの日程はどうするんだろう?街の観光でもするの?と聞いてみたところ、25階層以降に挑戦して一定の階層まで到達すると単位を幾つか貰えるらしい。

と言っても25階層以降は難易度が少し上昇するので、25階層まで護衛として参加した教員や冒険者の許可が必要らしい。

彼らの実力的に問題ないと思うのでもし挑戦するなら許可を出すよと言っておいた。

勿論、俺も今まで通り護衛としてついて行くことと一緒に。


25階層以降は本来実習では行く必要ない階層なので、もし挑戦する場合自己責任。

護衛が欲しいなら自分たちで冒険者ギルドに行って護衛の依頼をしなくては行けない。


なのに俺がそのままついて行ってあげると言ったもんだから、全員行く気満々だ。

正直、この班がダンジョンに挑戦してくれないと俺もダンジョン実習が終わるまで暇になってしまうので、挑戦してくれた方が助かる。


「もう25階層まで到達したんですね。今回最速ですよ。もしかしたら調べて見ないと分からないですけど、ダンジョン実習初めて以来の最速記録かもしれませんよ」


「コウ先生が的確にアドバイスをしてくれたからこの結果を出せたんです」


「なるほど。流石、水の精霊王様ですね。教えるにもお上手だなんて」


生徒達と教師陣にすごいヨイショされて悪い気はしない。

いつもは人外だ化け物だって怖がられることが多いからな。特に人間相手だと。


「とはいえマルタがしっかり授業をして生徒達が無詠唱魔法が使えるようになったと言う前提が有るので出来たことですけどね。それを実戦で使いつつ、実戦で使いやすいようアドバイスをして上げただけです」


的に向かって魔法を撃つだけじゃ分からないことは多いからね。


「マルタ様の授業も確かに素晴らしいものです。無詠唱魔法使いと呼べるレベルの生徒はまだ20名程度しかいませんが、無詠唱魔法を使える生徒は既に100人単位で在校しています。来年度からは魔法歴史学の教科書にマルタ様のお名前が載ることになるでしょう」


…もしかして俺が予定どうり授業をしてたら歴史の教科書に俺の名前が載ることになってたってことか?

マルタに授業を代わってもらうことになってよかったと思うコウだった。







読んでいただきありがとうございます。

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