第2話

「ほんとここのダンジョンは色々特殊なんだな」


入口で渡されたカードを眺めながらダンジョンの階段を降りる。


カードには大きくB1と書いて書いてあってその下にコウ・アポストロスと名前が記入されている。

これはこのダンジョン限定でどこまで潜ったか書き記されるカードらしい。

それだけじゃなくて、このカードに書いてある階層までダンジョンの入口から自由に転移できるらしい。


これは魔道具じゃなくて、このダンジョンのギミックなので他のダンジョンにはこの機能はついてない。


更にこのダンジョンの魔物は倒すと消えて素材の1部をランダムでドロップする。

なので他のダンジョンに比べて一体毎の素材の量は少なくなってしまうけど、その分魔物の量が多いらしい。

なので生徒が一度に大勢入ってもある程度魔物と戦闘ができると言う事でダンジョン実習は毎回このダンジョンを利用するらしい。

ちなみにこのダンジョンは難易度も比較的高くなくて、階層までの転移を誰でも使える事もあって最下層まで攻略されていて地図も流通している。


「今日は何階層まで降りる予定?」


「ダンジョンどころか魔物の相手をするのが初めてなので、下の階を目指すよりまずは慣れる事を優先したいので、今日は3階層程度を予定しています」


その場のノリでダンジョンに行く俺よりしっかり考えてて優秀な子達だ。

ダンジョン実習は5日間あってその間にどれだけ下に潜れるかによって点数が変わるらしいから、とにかく早く下の階層にたどり着くって感じになるのかと思ってた。


「分かりました。じゃあ、後は後ろからついて行きますので、皆さんの意思で進んでください」


このダンジョンは全エリアが森林になっている。なので出てくる魔物は森に生息してる魔物がメインだ。

階層が浅いうちは出てこないけど、深くなるに連れてトレントみたいな木に擬態して不意打ちをしてくる魔物や木の上を器用に動いてこちらを攻撃してくる猿みたいな魔物も出てくる。この猿う○こを投げてくるらしいので、絶対に被弾しないように注意をしなきゃいけない。

後は魔物じゃないけど触ると幻覚作用のある胞子を撒き散らすキノコなど危ない植物も生えてるらしいのでそこも注意が必要だ。

生徒たちの監督兼護衛をするのにダンジョンについて何も知らないのはまずいので、冒険者ギルドにお金を払ってこのダンジョンの情報を教えて貰って覚えたから多分大丈夫だろう。キノコはさっぱり見分けがつかない種類もあったのでそれに関してはスルーする方向で行こうと思う。

学生たちは階段がある方と逆方向に進んで行く、どうやらここで魔物との戦闘をして確認するみたいだ。


この班以外にこっちに来てる班はほとんど居ないから魔物も直ぐに見つかるだろう。

逆に言うとこの子達みたいに慎重な子達が他にもいるってことだ。


「ウサギだ!」


角の生えたウサギがブゥブゥいいながら後ろ足で地面をダンダン蹴って威嚇している。

魔力感知はまだ覚えてないのか。

あれを過信しすぎると痛い目あうけど、あると便利だし、移動中にちょっと教えてあげるか。


中々魔力の操作は上手だし、それなりの速さで無詠唱魔法を発動させてる。

同じぐらいの威力を詠唱魔法で出すなら倍ぐらいの時間は掛かるんじゃないかな?

ウサギの魔物は何発かは魔法を避けたけど1発被弾して動きが鈍った所を集中放火されて倒れて消えていった。

今回のドロップは角だったみたいだ。


槍の素材になるから当たりでは有るけど、一階層の魔物なのでそこまでお金にはならないかな。

その後も何度か魔物と戦うと言う事だったのでそれに従い後ろからついて行く。

魔物の発生率が高いので適当に歩いてても10分に一体は魔物に遭遇するけど、やっぱり魔力感知があった方が便利だ。

なので、学生たちにコツを説明しながら森の中を歩く。

皆、魔力操作の練習をして自分の魔力をちゃんと感じることが出来ているので、簡単に覚えられると思ってたんだけど以外に苦戦してる。

ちょっと怖い思いするかもしれないけど、俺が外に漏れないように調整してる魔力を解放してって他人の魔力を感じる感覚を掴んでもらうか。

魔力が大きいほど感じるのは簡単だし。


「みんながきっかけを掴む為に俺の魔力を感じられるようにしてみるね。びっくりすると思うから覚悟はしておいてね」


かと言って全力を出す必要は無いので徐々に放出する魔力量をあげていく。

全員が俺の魔力を感じられたのを確認したら直ぐに引っ込めた。


「ちょっと強引だったけど、これで他人の魔力を感じる感覚は掴めたと思う。と言っても今はそれどころじゃないだろうから、ちょっと休憩しようか」


俺の魔力のせいで若干過呼吸気味になっている学生たちを椅子に座らせて休憩させる。


「甘い物でも食べて休憩してて。俺はちょっとこっちに気づいて近づいてくる魔物を倒してくる」


俺がいつも食べるお菓子セットを渡して、こっちに向かってきてる魔物のところに向かう。


「やっぱり一階層目で唯一気をつけた方が良いって書いてあったクマの魔物だったね」


と言ってもツキノワグマサイズなのでクマの魔物としては対して強くない。

注意って言うのも浅い階層メインで稼いでる初心者冒険者に向けてだからね。

クマの魔物に氷の槍を撃ち込む。

氷の槍はクマの頭部を消し飛ばした。

ドロップは熊肉みたいだ。

熊肉を収納魔法にしまって、学生たちのところに帰った。





読んでいただきありがとうございます。

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