第13話
「…これはベヒーモスですか」
ボス部屋の中には頭に大きな角を2本生やした四足歩行の獣が待ち構えていた。
鬣が逆立ち鼓膜が破れるんじゃないかという音量の雄叫びをあげる。
いつも通りなら喧しい!と顔面に1発入れて黙らせるんだけど、それをやると倒しちゃいそうなので今回は自重する。
と言ってもそのまま何もしないのも癪なので流水の短剣に魔力を流し蛇腹剣モードで角を1本切り落とした。
最奥のボスなら俺の攻撃でもHP全部削りきらないで耐えてくれるかな?って思ったけどダメだった。
ベヒーモスは角に神経が通ってるタイプじゃ無いようで角を切ったところでダメージは無さそうだ。
だが、ベヒーモスからしたら角は攻撃に使う重要な部位。
それを切り落とされて相当怒っているようだ。
俺しか見ていない。
まぁ、さっきの雄叫びで俺以外、全員硬直してしまってるので寧ろ好都合だ。
皆に攻撃が行かないようベヒーモスの後ろに転移して2本目の角も切り落とす。
蛇腹剣、面白いな。味方が密集してる時は当てちゃいそうで怖いけど。
鞭で練習すればもっと上手く扱えるようになるかな?今度フェムトに相談しよう。
2本とも角を切り落とされたベヒーモスは怒り心頭完全に俺の事しか見えていないようだ。
ベヒーモスが前足を持ち上げ勢いよくスタンピングする。
それだけで部屋の地面全体に亀裂が入る。
硬直から回復するまでベヒーモスと遊んでようかなって思っててけど、これは無理そうだ。皆、攻撃の余波だけで死んじゃいそう。
「どんな攻撃をしてくるのか少し気になるけど、それは今度の楽しみし取っておくことにしよう」
ベヒーモスがちょうどこちらに向かって突進してきたので、流水の短剣の刀身を真っ直ぐ伸ばす。
流水の短剣はベヒーモスの頭蓋骨をあっさり貫通してベヒーモスの串刺しが完成した。
数秒ビクビクしてたけど、すぐに動かなくなる。
中央に魔法陣が出てきた。
ベヒーモスの討伐完了。
後はあの魔法陣がどこにつながっているかが問題だな。
ここがほんとに最奥なら転移先はお宝部屋。
まだ下が存在する場合は61階層目に転移することになる。
これより下の階層がある場合は一旦地上に帰還かな。敵はもっと強くなるだろうし、ハルくん達が先に進むのは無理だろう。
せめてベヒーモスの雄叫びを受けても硬直しないぐらいになって貰わないと。
まだみんな元の状態に戻らないのでベヒーモスの解体をしながら時間を潰すことにした。
解体なんて自分じゃ出来なかったけど、リバイアサン達に教えて貰って多少は出来るようになっている。
ただ、素人に毛が生えた程度の腕しかないので血抜きや内蔵を取り出したりぐらいに留めておくことにした。
それ以上はプロに任せた方が綺麗に解体してくれるだろう。
血や内蔵は捨てようかと思ったけど、ベヒーモスクラスなら活用法があるかもしれないと思ったので、凍らせて収納魔法に閉まっておいた。
「ベヒーモスの肉はどんな味がするんだろうな。…イノシシっぽく見えなくも無いし牡丹肉っぽい感じなのか?」
イノシシっぽく見えなくもないと言うのはかなり贔屓目に見ての意見なので、まったく違った味かもしれない。
フォルムはイノシシに見えなくもないけど、額から角生えてるし、牙は出て無かったから、やっぱりイノシシとは別物かも知れない。それにしても大分筋肉質だな、脂肪がほとんどない。
牛すじみたいに煮込んで柔らかくする料理がいいかも。ただ焼いたりだけとかだと食べにくいかも知れないな。
「…正直、自分が何でまだ生きてるのか不思議になるぐらいの恐怖を感じました。それも雄叫びを聞いただけで…。ベヒーモスは御伽噺に出てくるような伝説の魔物ですがここまでの魔物とは思いませんでした。それに死してなをこの存在感。相手はもう動かないと分かっていても、足が震えてしまいます」
まだ体が震えてるカルアさんが途中まで解体されたベヒーモスを見ながらそう言った。
ベヒーモスに対してだけじゃなくて、ベヒーモスを赤子の手をひねるように倒した俺への畏怖も混じってそうだけど。
「他の人も動けるようになったみたいですね。初めてあのクラスの魔物にあって気絶しなかっただけ立派だと思いますよ」
それこそ、今まで出てきた魔物とは格が違いすぎる。失禁したり、気絶しなかっただけ良かったと思うしかない。後は慣れるしかない。
でも、このベヒーモスは幼体だと思うんだよね。
違う世界では有るけど、ベヒーモスって言うとシズとかバハムートと同列の魔物と考えて問題ないと思うんだけど、それに比べるとはっきり分かるレベルで弱い。
あっちの世界のダンジョンで劣化バハムートが出てきたことがあったし、幼体じゃ無くてステータスを劣化させたベヒーモスかも知れないな。
これは言わないでおこう。
「とりあえず、この魔法陣だ。これでダンジョンクリアなら最後のお宝を貰って地上で一休み出来る」
しっかりとした場所で休みたいのはみんな同じなので急いで魔法陣の上に集まる。
みんな産まれたての子鹿みたいに足をプルプルさせながら集まってくるのはちょっと面白かった。
転移した先は窓やドアがない部屋で真ん中に宝箱が1個置いてあるのとヘラジカのような
存在が結晶に閉じ込められて佇んでいた。
読んでいただきありがとうございます。
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