第14話
「これが大精霊か、でもこれはちょっと予想外。魔王がよっぽどの自信かなのか、バカなのか。それとも訳あり魔王様なのか…」
「えっ?どう言う事ですか?」
「だって大精霊が封印されてるって言うから、よっぽど強力な封印が施されてると思ってたのに、封印なんてされてないんだもん」
「水晶の中に閉じ込められてるじゃないですか!」
「あれは地の精霊石。魔力が足りなくなって休眠してる間、襲われても平気なように自分から中に篭ってるだけだよ」
精神生命体である、純粋な精霊は魔力がゼロになると消滅してしまう。
なので、極限まで魔力を消費してしまうと魔力の消費を極限まで抑えて回復させるために、休眠状態になる。ただし休眠状態は完全な無防備状態でも有るので攻撃されたら簡単に倒されてしまう。
それを防ぐために自ら作り出した精霊石の中で休眠状態に入るらしい。
魔力の回復ってそんなに時間かかるものだっけ?と質問したら精霊は通常ほかの種族より
魔力回復量が多いけど、自身の魔力が極端に少なくなると魔力回復量が滅茶苦茶減る特性を持ってるらしい。
休眠状態に陥るレベルで魔力を消費してしまった場合、動けるようになるまで回復するのに数ヶ月から年単位で時間がかかるらしい。
俺は純粋な精霊じゃ無いからここまで酷くなかったけど、確かに一回魔力を使い切った時数日寝て1回も目を覚まさなかったことあったなと教えて貰った時に思った。
「正直、俺たちが何もしなくても大精霊の魔力がある程度元に戻れば普通に復活するよ?多分早くて2ヶ月後、遅くても1年後には復活するんじゃないかな?この感じなら」
「魔王は大精霊様をわざわざ封印する必要すら感じない強さを持っているということですか」
「勇者以外の攻撃でHPが減らないならそう思っててもおかしくないよね。まぁせっかくここまで来たし、無理やり起こして本人から直接話を聞いてみるか」
地の大精霊が中に入っている精霊石に手を触れて強引に魔力を流し込む。相手が水の精霊なら強引にやらなくても良いんだけどね。
強引に魔力を流し込んでる分効率が悪いので中々、地の大精霊が目覚めるまでの魔力が貯まらない。
途中でフェムトが作った魔力回復ポーションを何度か飲みながら魔力も流し込み続けていると精霊石にヒビが入り始めた。
「誰だ。違う属性の魔力で無理やり私を起こした奴は」
休眠状態から回復した雄のヘラジカのような姿をした地の大精霊が威厳たっぷりにそう言った。
「初めまして、別の世界で水の精霊王って言う大精霊と同じようなことをしてるものです。無理やり起こすのも悪いかな?って思ったんですけど、一大事だし無理やり起こさせてもらいました」
「ひぃ、起こしていただきありがとうございます。私に出来ることが御座いましたらなんでも協力させて頂きますので、どうか命だけは」
挨拶しただけなんだけど。まるで俺が脅したような反応だ。
「別にこれまで通り仕事してくれれば良いけど…。そうだ!人間に加護とか与えられないの?」
「勿論、人間に加護を与えることは可能ですが…上位存在である貴方様に加護を与えるのは不可能です」
「俺は別にできたとしても要らないから大丈夫。後ろにいる人達全員に加護を与えて欲しいわけ」
レベル上げで強くなるのは当たり前だけど、神とか精霊、龍から加護とか貰うのも強くなる方法の定番だからね。
「無闇矢鱈に加護を付与するのはちょっと…」
「なんでも協力してくれるんだよね?」
「はい!今すぐ加護を付与させて頂きます」
理解が早くて助かる。後ろで鬼だ…悪魔だ…と呟いてる人達、君たちが手っ取り早く強くなるために、俺がお願いして上げてるんだからちょっと静かにしてなさい。
「それに、1人は魔王を倒すために異世界から呼び出された人だから、この人たちに加護を与えた後に神から怒られたりしないと思うよ」
「女神様が言っておられた、勇者のシステムが完成しているのですね!それなら確かに加護を与えても何も文句を言われないでしょう」
地の大精霊が光り初めその光が俺以外の人に吸収されていく。
それが収まるとみんなステータス画面を確認し始めた。
全員加護をしっかり貰えたようだ。
「私の役割はこれで終わりでしょうか?
そろそろ大地に力を取り戻すため地の精霊に活力を与えに行きたいのですが」
「最後に一つだけ質問させて。今の勇者の実力で魔王って倒せる?」
俺の質問を聞いた地の大精霊が勇者であるハルくんをじっと見つめる。
「今の力では厳しいでしょう。ですが魔王は自ら侵略をしてくることはありません。なので我々の張った結界の外にいて人族に対して猛威を奮っている魔族を倒すのが良いかと」
魔王自ら侵略してくることはないか…。
そこまでゲームっぽい感じになってるの?
勇者以外HPを削れないんだから1人で世界征服余裕だもんな普通なら。
もしくは魔王なりの美学が有るとか?
自分一人の力で世界征服しても美しくない的な。
「そして我々より上位者である、水の精霊王様にひとつお願いが有るのです。結界内にいる可哀想な魔族達を救うことは出来ないでしょうか?」
なんか思ってたのと違う展開だぞこれは。
読んでいただきありがとうございます。
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